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弱肉強食の開発会社クリスピーズの片岡陽平氏にお話を伺いました。
――今回ビットサミットに参加された経緯をお教えください。
是非参加してくれないかとJames Mielke氏からお声がけをいただきました。そのやり取りをしているときに、基調講演についても依頼がありました。
――コンシューマー寄りのデベロッパーというイメージもありますが?
Mielke氏が『TOKYO JUNGLE』を高く評価し、海外のメディアでも多く記事を書いたりしてくれていました。私が作っている作品にはインディースピリットが込められているとされ、インディー代表として基調講演にも招かれた次第です。正直言って、いいのかな?と思う部分もあったのですが、インディーは新しいものにチャレンジする精神性が一番大事ですし、その点に大いに共感しました。
――ビットサミットで印象に残ったものはありますか?
友達とかメディアとかと交流している時間が長く、展示物はほとんど見ることができませんでした。
――『TOKYO JUNGLE』はリリースまでに結構時間がかかりました。
2010年のTGSから紆余曲折がありました。最初は横スクロールアクションで、これでした(上掲写真左下)。SCEさんへのプレゼン用の段階のムービーですね。2010年TGSではすでに3Dになっていました。
――2Dから3Dに変更された経緯は?
2つ理由があります。PSNでのリリースを予定した2Dで創った段階で大きな反響を呼んだのでそれに応える必要が出たということ。もう1つが、ゲームのコンセプト上繰り返しプレイすることになるので、2Dだと飽きないバランスにするのが難しかったからです。
――3Dにしてからどれくらい開発に時間がかかりましたか?
開発期間は2年9ヶ月くらいで、2D半分・3D半分でした。一回リソースをほとんど捨てる形になり見切りをつけて作り直しました。『トーキョージャングル1』を創ってから、事実上の『トーキョージャングル2』を創ったようなものです。
――メインストーリーの展開についてはどの段階で構想されていましたか?
初期の段階です。講演で述べたとおり、新しいだけでは売れません。ユーザーへ面白いと思ってもらえるフックを作ることは、プロデューサーやプロモーションの仕事であると同時に、開発の人間も志さなければなりません。メディアに掲載されたときにユーザーが惹き込まれる要素をどれだけ創れるか、です。例えば、「アゲメス」「サゲメス」のワード、プレイ可能な動物が50種など、といった部分。普通にアクションゲームを創ったことがあれば、50種類もいるとゲームバランスが破綻しかねません。ですが、そうしたところこそがユーザーの望んでいるところだと考えたので、妥協せずに調整しました。
――今開発されているタイトルもやはり謎のゲームですか?
謎のゲームです。ジャンルはアクション。『TOKYO JUNGLE 2』ではありません。
――本日はありがとうございました。
記者の個人的に『TOKYO JUNGLE』は非常に思い入れが強いゲームです。独特の触り心地を持つ、既成の価値観に挑戦状を叩きつけるような仕上がりでした。深遠なるゲーム性を紐解いていくタイプの作品でなかったにもかかわらず、長時間なぜかプレイしてはゲームオーバーになり、ちょっと間をおいてまたプレイしてしまったりしていました。「楽しいゲーム」の軸は人それぞれですが、『TOKYO JUNGLE』は確実に新機軸を構築したタイトルです。ちなみにサウンドも秀逸だったのですが今のところサントラは発売されていない模様、残念です。
インディーゲームとインディーデベロッパー、そしてインディーズ魂のなんたるか。基調講演とあわせ、当インタビューから1つの形が見えてきます。
※諸般の事情で記事の一部を削除しました。ご了承ください。