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昨日、恐らく最も“Steam Box”としてユーザーの間で知られていたXi3社開発の新型PC“Piston”に関し、Valveが「昨年Xi3社と実験的に仕事を始めたが、現時点では彼らのプロダクトに関わってはいない」と発言。さらに開発会社のXi3社も「Pistonを“オフィシャルなSteam Box”と言った事はない」と説明しており、これによってPistonはValveがほぼ関わっていない非公式なSteam Boxと両社より宣告された状況となっています。
“アンオフィシャルなSteam Box”という奇妙な表現で語られたPistonですが、そもそもSteam Boxとは一体何を指す言葉なのか。ここでは過去のニュースを振り返り、今一度Valveの新ハードSteam Boxの正体を探ってみたいと思います。
−そもそもSteam Boxとは1つのゲームハードを指す言葉なのか |
『Half-Life』などのゲーム開発スタジオであり、デジタル配信サービスSteamでも有名なValveが、ゲームハード“Steam Box”を開発している……そんな噂が流れ始めたのは昨年3月のこと。それから月日が流れ同年12月、Valveの最高責任者Gabe Newell氏が海外サイトKotakuに対し自社開発ハードの存在をついに認め、続けて今年1月の家電展示会CESにてValve出資のXi3社製品“Piston”が発表されました。
兼ねての噂からついにValve出資のハードウェアPistonが発表され、世界中でこれがSteam Boxの正体であると大々的に伝えられましたが、そもそも2012年の時点から現在まで一貫して、Newell氏はSteam Boxがオープンな開発環境により複数の企業が製作可能なPCパッケージ群であることを示唆してきました。
つまり過去の発言から考えれば、Steam Boxとは言わばPC業界におけるAndroidに近い存在なのです。Androidはグーグル社のプラットフォームであるものの、オープンな開発環境により他の企業もAndroid製品を開発し販売することが出来ます。Steam Boxも同様に、Big PictureモードやSteamに対応したカスタムUIなど一定の基盤を持ちつつも、Valve以外の会社も作ることができるオープンなプラットフォームとなっていくことが予測されます。現時点では公式なプレスリリースなどで正式な発表はされていないものの、Steam BoxとはAndroidのように一連のハードウェア製品を指す総称であることが明らかとなっており、1つのゲームハードのみ、つまり今回問題となったPistonだけを指す言葉として扱うのは適切では無いでしょう。
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−ValveのSteam BoxとXi3のSteam Box |
今回、Xi3社はPistonを公式なSteam Boxと言ったことは無いと述べ、“PistonはアンオフィシャルなSteam Box“との曖昧な立ち位置を示しましたが、Xi3もValveもなぜかPistonがSteam Boxでは無いと断言するには至っていません。本家Valveが作るSteam Box、Pistonのような他企業が作るSteam Boxが存在していることは以前より語られてきたところ。つまりXi3社のPistonは確かにValveが出資協力し書類や経緯上はSteam Boxプロジェクトの産物であるものの、他社が作ったものでValveとは関係の無いValve非公式Steam Boxだということが今回の宣言で改めて強調されたのです。
なぜこのような宣告をわざわざすることになってしまったのか。ここからは筆者の推測を多分に含みますが、Xi3社のPistonがイコールSteam Boxだというイメージは、既に一般ユーザーに強く張り付いていました。さらに先日の予約開始と共に、PistonがValveが推進するLinuxでは無くWindows OSを標準搭載することや、約1,000ドルと非常に高価な価格設定であることが判明。オープンな開発環境の弊害として、明らかにXi3社のPistonはValveがこれまでに語ってきたSteam Boxとは違う存在になりつつありました。Valveがこれから展開していくSteam Boxブランドのイメージを損なわないため、今回「我々はXi3社に関わっていない」といような発言に及んだことは十分考えられるシナリオです。
実際に最新のXi3社の公式声明では、Xi3が家電展示会CESにてPistonを発表した際、Valveとの関係をこれ以上言及しないようGabe Newell氏個人より要求されたことが明らかにされています。Xi3はこの公式声明の最後にて「Steam Boxに関してどうするかはValve次第だ。つまりGabe、君次第というわけだ。ボールは君のコート(court)にある」と意味深な発言も残しています。
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ではゲーマー達にとって本命となるであろうSteam Box製品は何なのか。気になるValve自身が開発するSteam Boxは、1月のCESにて既にコードネーム“Bigfoot“としてGabe Newell氏の口よりその存在が語られています。OSはLinuxを標準搭載、GPUとCPUは専用のものが用意され、更に生体認証に着目した機能(例えば心拍数を計算するコントローラー)が検証されている模様ですが、まだまだその正体は謎に包まれているといったところ。Pistonだけを見てSteam Boxのイメージを決めつけることはまだ時期尚早であると言えそうです。
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