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第1作目発売から15周年を迎えた『グランツーリスモ』シリーズ。日産自動車とのコラボで誕生した「GTアカデミー」は、GTをプレイするゲーマーから未来のレーサーを発掘しようという、バーチャルなグランツーリスモから誕生した現実世界のプロジェクトです。
「GTアカデミー」の責任者、日産自動車のグローバルモータースポーツディレクターDarren Cox氏に、2008年から始まったGTアカデミーについて振り返ってもらい、これからGTアカデミーで目指すところを聞きました。
―――GTアカデミーのゲームを使ってレーサーを養成する発想はいつ思いつきましたか?
ソニーUKとGT4、日産とのプロモーションで、優勝者が新車がもらえるイベントがありました。その中で、実際にゲーマーの方に運転してもらう機会もありましたが、何人かのゲーマーの運転が上手く、「上手いゲーマーがレーサーになれるのではないか?」というアイデアが思い浮かびました。それは、GTアカデミーによって確信に変わりましたね。
―――今のゲームは、どれだけ現実に近いのでしょうか?
今、F1に参戦するチームがレースをシミュレーションできるソフトに凄く投資しているのですが、これは、グランツーリスモをステアリングでプレイするのと同じようなものなのです。F1の世界では珍しくないので、今このグランツーリスモを通じてプロのレーサーを目指すということは、ビックリすることではないと思います。
―――GTアカデミーを実施する上で、一番心配したことは?
一番心配したことが安全に関すること。安全でなければこのプロジェクトも継続的に行なうことが出来ないのです。レーサーになる前のトレーニングも、何千kmもの走行距離をやってきて本当のトレーニングができるようになってきています。安全面を気にするソニーや日産の法務の人たちに対しても、自信を持ってこのプログラムを進めていきたいと思っています。
―――GTとのパートナーシップで今後目指したいところは?
今年のルマン24時間耐久レースには2人のレーサーが出場しますが、これを3人にすることを目指したい。そして、いつの日かルマンだけではなく、F1にデビューするレーサーが誕生することもあると思います。
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―――一般のレーサーが持たない、ゲーマーが持つ特別なスキルはありますか?
一般的なレーサーよりも、ゲーマーの方が柔軟性を持っているように感じます。ゲーマーのほうが吸収力や頭の回転も速く、また、勉強熱心で対応力といった面でも、一般的なレーサーはカートや一つの車種を得意としますが、(GTアカデミーの)ルーカス選手なんかは、たくさんのクルマを運転してそれを乗りこなしてしまいます。
―――グランツーリスモが誕生して15年が経ちました。レーシングゲームを楽しむユーザー層に変化はありますか?
ユーザーの年齢層が上がりましたね。それまでのレーシングゲームは13歳くらい20歳までの人達が楽しむものだったのですが、今では、20歳から40歳までといった年齢層の人達も楽しんでいます。こちらからも一つ質問で“日本でもGTアカデミーをやって欲しいですか?”
―――ぜひ、日本でもやって欲しいですね。
“山内さんにお願いして、いつの日か日本でもやりたいですね”。ゲーマーではない普通の人がレーサーを目指すには、8歳や9歳といった若い頃からレーシングカートをやって凄い投資をするなど、スポンサーに恵まれなければレーサーにはなれません。今、プレイステーションを買ってグランツーリスモで速くなるという、別の選択肢が用意できたと思っています。
―――ありがとうございました。