まず品田氏が現在のモバイルゲームの市場について説明しました。グリーによる独自調査のグラフによると、2013年現在のスマートフォンプラットフォームの市場規模は100億ドルを超え、2016年までに200億ドルを超える成長が見込めるそうです。このデータを念頭に置きつつ、品田氏は海外と日本で市場や戦略に違いはあるかという点について、3名の登壇者に質問しました。
セガの里見氏は「カジュアルゲームに関しては大きな違いはない」としながらも、コアなゲームになると、好まれる傾向が異なると指摘。日本のゲームはマンガやアニメに由来しており、若い主人公の人気がありますが、欧米ではタフなおじさんキャラが人気です。そういった趣味嗜好の違いは、現地の社員やパートナーと組んで掴んでいく必要があると説明しています。
ポケラボの前田氏は、海外と日本ではモバイルゲームの歴史が異なっている点を強調しました。日本国内では、フィーチャーフォン時代にGREEやMobageがマーケットを開拓して、ユーザーにソーシャルゲームが浸透しました。しかしながら、海外にはそういった歴史がないため、ソーシャルゲームに対する「リテラシー」が浅いといいます。具体的には、「強化」や「合成」といった現在のカードバトル型のソーシャルゲームでは当たり前のシステムもしっかり説明しないと海外のユーザーは脱落してしまいます。
次にグリーの荒木氏は、3つのポイントを指摘。1つ目はプラットフォームのシェアの違いであり、iOSが普及しているアメリカや日本とAndroidが圧倒的な中国ではかなりマーケットが異なります。次に先ほども指摘された文化的嗜好の差であり、好まれるキャラクターや表現には国によって特徴があるそうです。最後にゲームデザインに関しても、国ごとの特徴をつかむ必要があるといいます。
ここで司会の品田氏からグリーに対して、本当に北米での事業展開がうまくいっているのかという厳しい質問が投げかけられました。各国スタジオの閉鎖など、グリーに関しては海外展開の不調を報じる報道が多いようですが、荒木氏によれば、現在の北米事業は好調だそうです。2011年にスタートした後、中止したプロジェクトは10以上あるものの、その失敗は上記で挙げた3つのポイントを学ぶきっかけになったそうです。北米で好まれるキャラクター、ビジュアル、ストーリーなどを吸収するとともに、日本のソーシャルゲームで培ったゲームデザインとマネタイズのノウハウを活かし、月間売上15億程度にまで成長していると、荒木氏は説明しています。
次に話題はローカライズに移りました。各社ともローカライズに関しては、現地のスタッフの意見を重視するという立場は同じです。しかしながら、その中でもグリーは趣味嗜好の判断に関しても、属人性を廃して、リサーチやデータを重視するという傾向が強いと荒木氏は説明しています。もちろん、最終的な決定は人間が行いますが、開発コストが高まっているスマートフォンゲームでは、いかに大失敗しないかが重要だといいます。そのため、マーケットでトップランキングに入らないタイトルに関しては、早期に撤退することも辞さないそうです。
対照的にセガの里見氏は、「合理的なものと非合理的なものを混ぜていきたい」と述べています。マーケティングによる判断では、現在の動向は追えますが、新しいものを生み出せません。そのため、時には非合理だと思われるタイトルにも挑戦することの重要性が指摘されました。実際に成功したタイトルの多くは、情熱的なクリエイターに押される形でしぶしぶ企画が通ったものが多いとも述べています。
さらに話題は「パズドラに勝つ方法はありますか?」といったざっくばらんとしたものに及びました。グリーの荒木氏は、カジュアルなパズルゲームとRPGを組み合わせることで新しいジャンルを作った点を評価しながらも、スマートフォンの普及率が高まっているため、今後のヒット作がパズドラを超える可能性は大いにありうると指摘。
一方、ポケラボの前田氏は一本のタイトルでパズドラを超えるのではなく、複数のアプリで追い越すことが目標だと語っています。複数のアプリを1つのメディアとして有機的につなげ、ユーザーを回遊させることでより大きな収益を見込めるということです。同様のことをセガの里見氏はポートフォリオ戦略として説明。実際にセガはゲーム会社各社のアプリを連携する仕組みを準備しており、スマートフォンゲームにおけるユーザーの回遊の重要性を高く見積もっています。
最後の質問は、日本がスマートフォンゲーム市場を席巻できるかといったもの。この質問に対しては、3名の登壇者すべてが「イエス」と応えました。特にグリーの荒木氏は、席巻できるかどうかではなく、現在、実際に席巻していると説明。アプリの売上ランキングを見る限り、国産のスマートフォンゲームはグローバルな市場で成功を収めており、今後の課題は現状のシェアを維持できるかどうかであると指摘しています。またポケラボの前田氏はフィーチャーフォン時代にモバイルコンテンツ大国だった日本は、まだまだスマートフォンでも世界で対等に勝負ができると主張。セガの里見氏も現状のスマートフォンゲーム市場を家庭用ゲーム機が登場した昔の日本のゲーム産業と比較した上、国産のアプリが活躍するチャンスが大いにあると説明しています。
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