E3にて公開されたティーザートレイラー
Ubisoftの子会社Massive Entertainmentが開発を手がける『The Division』。そのゲームディレクターであるRyan Barnard氏が海外サイトのインタビューにて、オンライン上での人々の交流について語っている。本作はPS4/Xbox One向けにリリースが予定されているオープンワールドのオンラインRPGタイトル。これまで公開された情報は限られているが、E3での発表以来グラフィックや世界観などを中心に、国内外から高い注目を浴びている。
インターネットを通じて不特定多数の人と交流できる現代において、インターネット環境というものが切っても切れない存在になったTVゲーム。元々インタラクティブ性に富んだコンテンツのひとつであったが、ネット環境が密接な関係となったことにより、DLCやパッチの配信だけでなく、他のエンターテインメントと比べるとより人と人とが交わることができる特殊なコンテンツにも変化してきた。はっきりと相手を知ることはなかなか出来ないが、チャットなどを基に交流することは可能。ゲームというひとつの“きっかけ”が、普段生活していたら全くと言っていいほど交流する機会がないような人と関係を築くこともあり、それは楽しくもあり、恐ろしくもある。
「ゲームは今、オンラインコミュニティを失っている」とBarnard氏は見ている。「オンラインプレイヤーは、ゲームを遊んでいる最中に12歳の少年に怒鳴られる、といったような今やありがちであり異様でもある状況の中、会話を繰り広げることを恐れている」と氏は語っており「我々は改めてオンラインコミュニティを作り直したいと考えている」と、作品の展望を語っている。
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Barnard氏はオンライン上のゲーム情報の共有のされ方についても触れており、「ゲームの攻略方法をYouTubeやGoogle、そしてそのゲーム自体が作中に教えてしまうといった状況は、プレイヤー同士のインタラクティブ性を失わせる」と話している。確かにネット上や丁寧なチュートリアルには様々な情報が存在し、しばしばそれらの情報に頼ってプレイし、作品の完結を迎えてしまうプレイヤーがいる。そこには人と人との交流はなく、個人と情報だけが存在し、その情報に基にあたかも詳細に書かれた仕様書に沿ってゲームを進めているかのようなユーザーが、敢えて情報を取得せずに楽しんでいるユーザーに対し、情報を持っていないことについて罵声を浴びせる、といった状況も少なくないのではないだろうか。
氏は「個人的には、発売前には極力少ない情報を解禁していきたいし、それによってユーザーはただ遊んで、良い時間を過ごして、自分たち自身でゲーム内の世界を開拓していってほしい」といった想いを募らせている。『The Division』については事前の情報としてオンラインのシステムを公式サイトで簡単に解説、自身と同じようなスタイルのプレイヤーを集めることができる機能を紹介している。氏にとっては、これらの情報だけで充分だと思っており、純粋にゲームを楽しんでほしい、といった思いがあるのだろう。
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Game*Sparkの読者の皆様はどう思うだろうか。ゲームとインターネットが密接になってきた時代ながら、世界的に見ても今なおネット環境を持たずにゲームを楽しむユーザーがいるのも事実。そこには現代のゲームプレイヤーとは異なる価値観を持っているユーザーがいるのかもしれない。そういったユーザーが、発展してゆくオンライン環境に飛び込んでも同じように純粋にゲーム内を探索し、驚きや発見を経験し、達成感を味わうことができるようになるのだろうか。そもそも現代において、それがゲームというコンテンツの正しい楽しみ方なのかも分からない。しかしながら筆者自身は、純粋に作品としてゲームを楽しみ、オンラインコミュニティで様々な人と交流を持ちながら、オンラインプレイにおいても自分なりの楽しみ方を見出すことが正解だと信じている。