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待望の『バットマン:アーカム』シリーズの最新作、『バットマン:アーカム・ビギンズ』、PS Vita用『バットマン:アーカム・ビギンズ ブラックゲート』の日本語版の発売が目前に迫ってきた。
今やゲーム業界では無視することができない注目作として国内外で話題となっているものの、「アメコミヒーローのアクションゲーム」ということでこれまで気にしなかったゲームファンの方々にすれば、むしろ「なぜ、『バットマン:アーカム・ビギンズ』がこんなに騒がれているのか?」と思ってしまうかもしれない。
そこで今回は、『バットマン:アーカム・ビギンズ』の発売前に、前作にあたる『バットマン アーカム・アサイラム』、『バットマン:アーカム・シティ』の2作について振り返えってみたい。
■画期的なシステム構築とストーリーが融合した『バットマン アーカム・アサイラム』
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シリーズの起点となったのは、2010年に発売された『バットマン アーカム・アサイラム』。アーカム・アサイラムとは、バットマンの活躍するゴッサム・シティに存在する精神病院の名前であるが、その真実は精神を病んでいる凶悪犯罪者を収監し、脱走を防ぐための設備が整った刑務所とも言える施設の名称だ。
バットマンによって収監されたジョーカーは、アーカム・アサイラムの中で暴動を起こし、捕らえられていたヴィラン(悪役)たちを解放。アーカム・アサイラムの強固な施設を利用し、職員たちを人質に取って立てこもる。ジョーカーの要求に応じて、バットマンは彼に怨みを持つヴィランや犯罪者が待ち受けるアーカム・アサイラムに単身乗り込んでいく。
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『バットマン:アーカム』シリーズのポイントは、『バットマン アーカム・アサイラム』における舞台設定とバットマンというキャラクターの設定が合致することで出来上がったシステムにあるだろう。
ブルース・ウェインは両親が銃で殺されたことをきっかけにバットマンとなった。彼は「絶対に銃は使わない」と心に誓っており、その結果大勢の敵を相手にしても体術で対抗せざるを得ない。また、銃で武装した多数の敵や、人質をとった相手に対して正面から戦いを挑むことは絶対的に不利であるため、隠れながら敵を排除しなければならない。バットマンのこの2つの制約に縛られながら戦うという部分をクローズアップし、連続でコンボ決められるフリーフローコンバットとガジェットを駆使したステルスアクションが採用されている。
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また、最新鋭の捜査機材を使って、わずかな証拠から敵の行動を読み取る「捜査モード」の3つのシステムが、精緻に構築されたアーカム・アサイラム内部でのアドベンチャー要素と融合することで、ゲームとして高い評価を獲得した。
ストーリー面でも、アーカム・アサイラムに収監されていたという形で、バットマンに登場する人気ヴィランも多数登場。さらに、同名のDCコミックスから発売されているグラフィックノベル『バットマン:アーカム・アサイラム』(小学館集英社プロダクションより翻訳版が発売中)の物語から影響を受けているのか、ジョーカーがバットマンを狂気の世界に引き込もうとするストーリー展開の深みが加わっており、アメコミ原作ファンも含めて高い支持を得た作品となったのだ。
■オープンワールド化でやり込み度がアップした第2作目
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前作が「施設内」が舞台だったのに対し、続編にあたる『バットマン:アーカム・シティ』は、文字通り「街」全体が舞台となっている。アーカム・アサイラムのある地域は、街全体が犯罪者を収監する地域として隔離されている。
前作の5倍に広がった刑務所街を舞台に、街で暗躍するジョーカーの野望を阻止するのが目的だ。前作の基本システムは押さえつつ、ゲームとしてはもうひとつ変更が加えられている。それは、キャット・ウーマンモードの追加。バットマンの活躍の裏では、キャット・ウーマンも別に行動をしており、二人の物語が融合することで物語に深みを与える。また、特定の状況では任意にバットマンとキャット・ウーマンのキャラクターをチェンジさせて操るシチュエーションも楽しめる。
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また、舞台がオープンワールド的になったからこその、メインミッションのスケール感、サイドミッションの充実度もアップ。そして、キャット・ウーマン以外にも、ロビンや、コミック『ナイトフォール』では2代目バットマンとなったアズラエルの登場、前作では未登場だったヴィランとの戦いなども付加され、アメコミゲームとしての深みも増しているのがポイントと言えるだろう。
■プレイするなら最新作から? 高評価の旧作から?
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『バットマン アーカム・アサイラム』は「今までで最も高い評価を得たスーパーヒーローゲーム」としてギネス・ワールド・レコーズに登録。『バットマン:アーカム・シティ』は、世界各国で複数のゲーム賞を受賞。同時期に展開していたクリストファー・ノーラン監督による新たなバットマンの映画『ダークナイト』シリーズのヒットもあり、バットマンの知名度がさまざまな層に一気に広がることにつながった。
その後、ワーナーからはバットマンをはじめとするDCコミックスのヒーローたちの戦いが描かれた対戦格闘ゲーム『インジャスティス:神々(ヒーロー)の激突』もリリース。単独で活躍する『バットマン:アーカム』シリーズとはまた違った、スーパーパワーを持たないながらも他のスーパーヒーローの中で一目置かれる存在のバットマンの姿が描かれている。
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そして、大人気シリーズの最新作にして、物語としては前2作の前日譚が描かれる『バットマン:アーカム・ビギンズ』。物語の起点であり、時系列的にも前2作以前のエピソードが描かれるという意味では、本作から遊び初めても問題はない。
だが、ゲームとしての進化を楽しむという意味では、やはり『バットマン アーカム・アサイラム』、『バットマン:アーカム・シティ』を体験してからプレイすべき作品と言える。より精緻になったグラフィックと2作を経ることで磨き込まれたゲームシステムは、発売順にプレイすることでこそ体感できるはずだ。現在、過去2作を1本で楽しめる『バットマン:アーカム・ツインパック』が発売中なので、最新作をプレイする前に最高峰のスーパーヒーローゲームを味わって欲しい。