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2012年度の総収益が200億円を突破するなど、最も成功したインディーデベロッパーとして名を馳せているスタジオMojangとその開発者Markus"Notch"Persson氏。出世作となった『Minecraft』がまだアルファ版であった時代に、Valve Softwareから雇用の誘いを断った過去にPersson氏が触れ、その内情を語りました。
これはPersson氏とMojangの軌跡を記した今年11月発売の書籍「Minecraft: The Unlikely Tale of Markus 'Notch' Persson and the Game that Changed Everything」にて記された一節。2010年8月の初め、『Minecraft』がブームの火種を見せ始めるもまだ生活を守るため月給制の仕事に就いていたPersson氏は、電話でValveからアルファ版『Minecraft』の成功を祝福され、さらにスウェーデンからワシントン州にあるValveのオフィスへコーヒーを飲みに来ないかと誘われたそうです。
Valveはコーヒータイムの誘いだけを伝えたものの、Persson氏は直感で『Minecraft』の買い取りや自身の雇用に関する話が出るかもしれないと推測。当時は同年秋にも仲間たちとMojangの本格始動を控えていたPersson氏ですが、Valveを見学しGabe Newell氏に出会えるかもしれないという夢のようなプランに対し、即座に「わかりました、でもファーストクラスのチケットが欲しいです!」と返答します。
2010年の9月初週にValveへと向かうことになったPersson氏。その間にも『Minecraft』のブームの火種は一気に燃え広がり、24時間で2万3,000本、3秒毎に1本のソフトが売れる大流行へと発展しました。ゲームに支払われた資金がPayPalへと一気に流入し86万ドルにも到達したため、犯罪行為への関与を疑われたPersson氏のアカウントがロックされたという逸話も残されています。
当時アメリカへ行く際にブログで『Minecraft』プレイヤーに会わないかと告知したPersson氏。ベルビューの小さな公園にはコスプレイヤー含む50人以上のファンが集まった
アメリカに到着し高級ホテルで宿泊、Valveのオフィスへと赴いたPersson氏は、Mod版から『Team Fortress』の開発に参加しているRobin Walker氏、そしてGame Newell氏と念願の対面を果たし握手を交わしました。
しばらくスタジオを見学した後、会議室へ入ったPersson氏は人事部の男性社員からValveの企業理念を聞かされ、また同氏も自身のことや『Minecraft』のプランについて語ります。そしてプログラミングに関する質問をされた後、才能あるプログラマーではあるものの集団の中で働くのには向いていないと評価され「我々はそれを手助けすることが出来る」と伝えられた同氏は、ついにValveで我々と共に働かないかと勧誘されました。
自身のスタジオを構えるのか、あるいはValveで働くのか。人生において最も困難な決断の1つだったとPersson氏は本に記しています。実際にValve本社へ向かう前、共に開発チームを立ち上げた親友Jakob Porser氏に雇用したいと言われたらどう答えるとSkypeで聞かれたPersson氏は、「俺は彼らが何を求めているのか知りたいんだ」と歯切れの悪い答えを残し、24時間以内に戻ると約束していました。
「どういうわけか、Valveと共に働くよりも、多分『Minecraft』がValveを作り出す自分のチャンスになるだろうと感じたんだ」と語るMarkus"Notch"Persson氏は、この後Porser氏らと共にMojangを設立。現在では『Minecraft』は全プラットフォーム上で3,300万本以上を売り上げており、PS4やXbox Oneといった次世代機でも登場する予定となっています。