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インディーゲームが続々とPlayStationへ―インディー特化型パブリッシャー座談会

12月16日、SCEのSSJ品川ビルではPlayStationプラットフォームにインディーゲームを配信するパブリッシャーによる座談会が開催されました。今回はその模様をリポートします。

家庭用ゲーム PS4
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12月16日、SCEのSSJ品川ビルではPlayStationプラットフォームにインディーゲームを配信するパブリッシャーによる座談会が開催されました。既に報じられたとおり、SCEJAでは同人ゲームのPlayStationでの配信プロジェクト"Play,Doujin!"が開始。その一環として、12月18日には東方ProjectのPS Vita向けテーマが配信されました。
またインディーゲーム配信サイトPLAYISMを運営するアクティブゲーミングメディアもPlayStationプラットフォーム向けでのパブリッシングを展開。12月24日に『Machinarium』と『TorqueL』が配信されます。

さらにゲームエンジンを提供するUnityもUnity Games Japanとしてインディーゲームのパブリッシングを行っています。既に『Stick It to the Man!』、『Never Alone』といったタイトルがPS4でリリース。今後も国内外のタイトルをPSプラットフォームで配信していく予定です。

次々とPlayStationからインディーゲームがリリースされつつある昨今。本座談会ではこれらのタイトルをリリースするパブリッシャーが一堂に会しました。SCEJAの伊東章成氏が司会をつとめ、Unity Games Japanからは大前広樹氏、アクティブゲーミングメディアからは水谷俊次氏、"Play,Doujin!"プロジェクトでパブリッシャーをつとめるメディアスケープからは江崎望氏と小山田文雄氏の2名が参加しました。今回はその模様をリポートします。

開発からパブリッシングまでサポートするUnity


Unity Games Japanの大前広樹氏。

伊東:
昨年から我々は「PS LOVE INDIE」というキャッチフレーズで活動してきました。海外ではインディーゲームが活気づいてきましたが、日本でも何かやりたいと思っていたのです。現在はPCやスマートフォンといった比較的容易にタイトルを出せる環境は既にそろっています。しかしながら、コンシューマ機でインディーの方がリリースするのはまだまだ難しい。そのため、インディーとプラットフォーマーをつなぐパブリッシャーが求められていると思うのです。

もちろんインディーとは何かという点を疑問に持たれる方もいますが、我々としては自由、独創的、独立性というマインドさえあればインディーだと考えています。これからはインディーゲームがコンシューマ機で活躍するために、より多くのパブリッシャーが登場すると思います。今回の登壇者はまさにパブリッシャーとしてインディー開発者をサポートしてる方々です。ではまずUnity Games Japanの大前広樹さんからよろしくお願いします。

大前:
Unityは本来ゲームエンジンの会社ですが、個人、インディー、大会社と問わず、たくさんの方に使っていただいています。そもそも誰もがゲームを作れるようにしたいというのがポリシーであり、その目標は実現しつつあります。では、次に何か必要なことはないかと考えたのが、ゲームを作って成功できるようにしたいというミッションです。個人やインディーの人たちが、コンシューマ機のマーケットに入っていくのはとても難しい。それを解決するのがひとつの取り組みです。もうひとつは2013年の東京ゲームショウで開催したイベントで感じたことですが、もっと多くのユーザーに独創的なインディーゲームを届けたいということです。そこでパブッリッシャーとしての役割を始めたわけです。

伊東:
Unity Games Japanでは、既にスマートフォン以外にPS4でもタイトルを配信しています。先日リリースされた『Never Alone』は独創的なタイトルとして話題を集めています。


先日リリースされた話題作『Never Alone』。

大前:
『Never Alone』はアラスカの先住民たちの民話を元にしたゲームです。実際に先住民の協力のもと、民話を収集して作られました。ゲーム内のナレーションも現地の人が行っています。吹雪の中を進んでいくゲームですが、ゲームとして素晴らしいだけではなく、アラスカの文化のドキュメンタリーが見れる点も面白いです。

ローカライズは架け橋ゲームズさんにお願いして、全世界同時配信に近い形で頑張ってもらいました。雰囲気的にも冬にリリースできて良かったです。僕の世代はアクの強いゲームで育った人が多いのですが、そういったタイトルは市場からどんどんなくなっています。なので、もっと個性的なゲームを遊びやすいようにしていきたいです。

Doujinを世界に展開するメディアスケープ


左からメディアスケープの江崎氏と小山田氏。

伊東:
2社目のパブリッシャーは日本のインディーとしてしばしば話題になる同人ゲームを展開していく方々です。我々は同人ゲームを世界に向けて展開していこうと思っていましたので、以前から東方Projectの作者ZUNさんにお話をいろいろとうかがっていました。しかしながら、ZUNさん自身は既に名の世界に知れたクリエイターであり、パブリッシャーをつけてリリースするわけにもいきません。そこで9月のプレスカンファレンスで発表した「ZUN×PlayStation」では、東方Projectの二次創作同人ゲームの3タイトルのリリースが決定しました。その経緯でパブリッシャーをつとめるメディアスケープとつながったのです。ではメディアスケープの江崎望さんと小山田文雄さんお願いします。

江崎:
私どもは本日から東方Projectやゲームに限らず、広く同人のコンテンツをPlayStationで展開していく「Play,Doujin!」というプロジェクトを開始しました。まずは東方ProjectのPS Vita向けカスタムテーマを2種類配信しています。

小山田:
東方Projectという大きな枠組であれば、イラストや音楽も広く扱っていけると思います。他にも参加を検討しているサークルさんもいるので、同人らしいノリと勢いで積極的に参加してほしいです。そのために伊東さんにはいろいろと協力していただいています。


12月18日から配信開始した同人サークルCUBETYPEのカスタムテーマ。

江崎:
もともとSCEは「PS LOVE INDIE」という形で積極的にインディーを支援していただいました。しかしながら、法人でないと参加できないということもあったので、自分たちがパブリッシャーとしての窓口になれないかと考えて進めてきました。

伊東:
こちら側も同人サークルの方とコンタクトを取るのは難しかったですね。

小山田:
これまで既に同人ゲームを海外でリリースしてきた人はいました。しかしながら、なぜ日本ではそういった形でリリースできないのか、いつも疑問に思っていたのです。幸い伊東さんとコネクションができたので、自分たちが窓口になって同人の方々の作品をリリースしていこうということになりました。もちろんメディアスケープが「Play,Doujin!」の代表というわけではないです。ひとつのパブリッシャーとして同人サークルとSCEの間をつなぎ、サポートしていきたいと思っています。

伊東:
「Play,Doujin!」がアルファベットなのは海外展開も意識しているからです。今後は日本の同人ゲームを海外で販売していくことになります。

独創的なインディーをPlayStationにも展開!PLAYISM


アクティブゲーミングメディアでPLAYISMを担当する水谷俊次氏。

伊東:
最後のPLAYISMの水谷さんとは2年前からコンタクトをとっていました。既にPS Mobileでいくつかタイトルをリリースしていただきました。

水谷:
PLAYSIMは今年で3年目になります。もともと伊東さんとやりとりすることになったきっかけは、『TorqueL』の開発者なんもさんがPS Vitaでもリリースしたいと相談されたことです。なんもさんは直接、SCEに相談したそうですが、残念ながら断られたそうです。そこで伊東さんと私どもが相談してPPLAYSIMが間に入ればリリースできるということになりました。そこで今後もこういう形でインディーゲームをPSプラットフォームに広げていこうと。

伊東:
もちろんPCとPlayStationが競合するという側面もあります。デベロッパーとしては最初はスピードがあるPCでリリースしたいでしょう。その速度がインディーの良さだと思いますし、それは無視することができません。

水谷:
我々としてはインディーゲームの可能性を広げていくのが目的です。クリエイターさんはコンシューマやSteamでリリースしたいと考えますが、その時の障壁をとっぱらうのが我々の役目です。ローカライズという業務も言語の壁をとっぱらうのが目的なのです。結果としては、今はPC以外のプラットフォームでも世界にインディーゲームを届ける体制ができていました。


PS4とPS Vitaから配信が決まっている『TorqueL』。

伊東:
我々としては海外の良いタイトルを国内に紹介するきっかけだと思っています。とはいっても、PCとPlayStationでは違った面もあるので、パブリッシングのルールブックをより個人でも使いやすい方向に改正しています。また予算などは出せないのですが、開発機材はいくつかの開発者の方に提供しています。

水谷:
その点は本当に助かっています。インディーの方は移植の話があっても、他社にコードを渡したくない方も多い。こだわりが強くすべて自分でやりたい人もいます。そのため、我々はパブリッシャーとして作るものには一切口を出しません。好きなものを作ってもらい、それがどこで展開できるのかを考えます。海外タイトルもどんどんパブリッシングしていきたいので、ユーザーの方にはコンシューマ機でプレイしたい海外インディーゲームをぜひとも教えて下さい。

国内外のインディーの現状と今後の課題



伊東:
最後に国内と海外でのインディーの現状の比較と、どうしたらより国内のインディーが盛り上がるのかについて皆さんにお話をうかがいたいと思います。日本ではインディーとして独立して一本でやっていこうという開発者はまだまだ少なく、受託の開発者が多いと思います。もちろんそれは良き日本の体制ですが、結果として開発者が独立するメリットも薄く、コンシューマからスマートフォンに流れることにもなっています。

大前:
言ってしまえば、リストラがたくさんあれば、独立する人は増えます(笑)。実際に北米にインディー開発者が増えたのは大企業のレイオフがあったからで、結果として経験豊富な開発者がインディーになりました。日本のゲーム産業ではそこまでの変化はまだ起きていません。実際に大手パブリッシャーの経営はうまくいっており、コンシューマからスマートフォンにスムーズに移行しました。現場の開発者も柔軟でスマートフォンでも多くのヒットを飛ばしました。そのため、大規模なレイオフはまだ発生しておらず、個々人のゲーム開発者も独立する志向は少ないです。しかし、必ずしも北米や欧州のような環境がベストというわけではなく、日本には日本のあり方があると思います。

確かに今の日本の構造だと海外進出は難しいでしょう。しかしながら、そこはコンテンツの力でなんとか進出してほしいです。ニコニコ自作ゲームフェスなどはそのいい例です。というのは日本の産業構造は、ゲームそのものよりもヒットコンテンツを求めているんです。まずは低リスクでヒットコンテンツを量産して、いろんなメディアで展開する。そして書籍化や映画化で回収する。こういったコンテンツ産業の構造は日本の強みではないかと思います。同人ゲームの『ひぐらしのなく頃に』などもアニメ化、小説化、漫画化、コンシューマ移植、映画化と展開してきました。こういったコンテンツ産業の展開は日本ではよく整備されています。

伊東:
他方、海外のようなクラウドファンディングの制度はまだまだ国内では難しいですね。いずれにせよ、開発者が売上をあげて、次回作を作れる環境を作っていくことは必要です。

江崎:
日本の同人サークルは本業が別にある人が多いですね。海外は会社を辞めて始めた方が多いようですが、その点では日本の同人サークルは生活に余裕がある人が多い。ただコミックマーケットの締切に追われて忙しいということはあります。

小山田:
インディー開発者には締切は基本的にありませんが、同人サークルは年に2回、何かしらの締切があります。

江崎:
結局のところ同人ゲームは即売会中心で回っているという点が最大の違いですね。これからはコンシューマでリリースしていくことと、即売会をどう折り合いをつけるべきなのかが課題です。コミックマーケットでPlayStationのソフトを売るというわけにもいきませんので。

大前:
ただ海外のコミコンなどの同人的なイベントにも行ってみたいですね。ZUNさんは今年のはじめに海外のイベントに言ったそうですが、かなりの歓待を受けたそうです。それもあって海外展開に関しては考え方が変わってきたそうです。だから国内の同人やインディーの方もPAXなどのイベントに参加すると、自然に海外のインディーシーンに馴染めるかもしれません。
《Shin Imai》
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