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今回から始まった連載記事「Game Traveler」では、ゲームに縁のある場所を取材してその魅力をお伝えしていこうと思うのですが、第一回目となる今回は、東京都新宿区に店を構えるゲームバー「Ninety.」にお邪魔してきました。
店内の様子やメニューなどを取材したほか、代表を務める林 直哉氏と店長の井上 隆史氏にNinety.を立ち上げた経緯や、お店の魅力などを存分に語ってもらっています。ゲームバーに興味のあるかたは、ぜひ目を通してほしいと思います。
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店内に入ると、バカでかいゲームボーイが歓迎してくれます。
店内に入ってまず感じたのは、温かみを感じる店内の雰囲気。お客さんは楽しそうにカードゲームに興じているし、店内にはレトロゲームやハード、一昔まえのおもちゃが飾られており、まるで童心に返ったような感覚になります。
店長の井上氏もとてもフレンドリーでした。ずっと以前から友達だったような新規感を感じるほど。スタッフの人柄も、Ninety.の大きな魅力なのではないでしょうか。
そしてゲーマー的には、レアなゲーム機が置いてあるのも見逃せません。筆者的には、「レーザーアクティブ」や「ATARI JAGUAR」、「バーチャルボーイ」、「Q」といった超マニアックなゲーム機が普通に置いてあるのが気になりました。スタッフの私物なのかもしれないですが、こんなの普通持ってないって!
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カウンターにはお酒とゲームがズラリ。
またカウンターには、何やら赤いファミコンカセットを積み上げて作ったタワーが威風堂々と鎮座。よくよく見ると、名作野球ゲームとして名高い『燃えプロ』ではありませんか。話を聞くとこの燃えプロタワー、Ninety.の名物になっているとのこと。Ninety.のポイントカードが5つ貯まると『燃えプロ』のカセットが1つもらえるのですが、なんともミステリアスなサービスですね。まあ、Ninety.ならなんとなく納得できてしまうのですが。
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レアな名作、珍作が並ぶショーケース。ゲームはコレクターは必見かも?
そして忘れてはいけないのが、Ninety.自慢のフード&ドリンク。筆者はカルアミルク、同行した編集者は生ビールで乾杯したのですが、飲食店を第一義としてあるNinety.だけあって、その味は普通のバーと比べてもまったく引けを劣らないと感じました。フード系も、サラダ、唐揚げ、うどん、チャーハン、雑炊、丼ものなど、非常にバラエティに富んだラインナップ。
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幻のゲームキューブ互換機「Q」も鎮座。DVDが再生できるゲームキューブって言えば分かりやすいかも
記事松尾のインタビューで代表の林氏が述べていますが、メニューには特に力を入れているというのも頷ける話です。ゲームと料理、その両方で満足させる魅力がNinety.には確実にあると思いますので、興味のある方はぜひ一度、時間を見つけて足を運んでみてください。
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アタリが発売した最後のゲームマシン、「ATARI JAGUAR」。パッケージの獣がこちらを睨んでおります……
- ■ゲームカフェ・バー「Ninety.」
●住所:東京都新宿区荒木町16-16-2 ベルウッドビル2F
●電話:080-1210-6132
●営業時間:
・平日:17:00~24:00
・日/祝:13:00~22:00
●公式Blog:http://interhits.co.jp/blog/
◆Ninety.は気軽に集まれる友達の家みたいな存在でありたい
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井上 隆史(左)と林 直哉氏(右)
ここからは、Ninety.の代表を務める林氏と店長の井上氏のインタビューをお届します。二人のNinety.に対する思いが伝わってくる熱い内容になっているので、ぜひ読んでみて下さい。
――本日はよろしくお願いします。まずはゲームカフェ・バーNinety.を立ち上げることになった経緯を教えて下さい。
林氏:僕はもともと人材コンサルティングの仕事をやっていたんですけど、かなり大変だったんですね。どうせ大変なことをやるのならば、自分の好きな仕事をやりたいと思うようになっていきました。で、知り合いと一緒に事業を立ち上げようということになったときに、一人が飲食店、そしてもう1人がバーをやりたいと言ってきたんです。で、僕はゲームが好きだったので、ゲームに関係のある仕事をやりたかった。
――ん? 何かが繋がりそうですね。
林氏:そう! 3つ合わせたらどんなことができるんだろうと考えた結果、ゲームバーをやろうと。もちろん立ち上げの前は色々なコンセプトバーを勉強しました。
――立ち上げから約5年とのことですが、ここまで長く続くって想定していましたか?
林氏:始めた当初は必死だったので、そこまで考える余裕はなかったですね。死ぬ思いでやっていましたから。
――Ninety.さんで、特にこだわっているという部分はありますか?
林氏:料理と飲み物です(キッパリ)。うちは飲食店なんで、「ゲームがあるからお客さんが来ている」って絶対に言われたくないんですよ。メニューも、コンセプトバーの中では多い方だと思いますし、バラエティに富んでいるのではないかと思っています。メニューは年に3回変えているので、季節ならではのメニューも楽しんでもらえますよ。基本的には手作りなので、普通の飲食店と比べても負けないようにしていきたいですね。
――さっき食べましたが、料理は凄く美味しかったです。
林氏:ありがとうございます。その言葉が一番嬉しいですよ!
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四半期ごとにリニューアルされるメニュー。筆者はカルアミルクを注文したのですが、非常に美味でした。
――お客さんも、皆さん笑顔でとても楽しそうですよね。凄くアットホームというか。
林 直哉氏:僕はみんなでやるゲームが好きなんです。だからNinety.でも、みんなでゲームを遊べる空間が作りたいと思っていました。業界の流れも一応チェックはしているのですが、業界の知識を増やすよりは、単純に「みんなでゲームして遊ぼうぜ!」っていう思いのほうが強いですね。
――お店の経営をしていく中で、印象に残っている出来事はありますか?
林氏:東日本大震災の時に、家に帰れなかった方たちをうちで受け入れたりということもやっていました。そういうところで、認めてもらえたりもしましたね。
それと震災のあと、節電の流れがありましたよね。ビデオゲームがあまりできない時、うちは初期からボードゲームを扱っていたので、ボードゲーム好きのお客さんと仲良くなったりもしました。
――話を伺っていると、皆さん、林さんの人間性に惹かれてお店にきている部分も大きいと思います。
林氏:ありがとうございます。もっと言って下さい(笑)。
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店内は非常にアットホームな雰囲気。お客さん同士でカードゲームを楽しそうにプレイしていた様子が印象的でした。
――ちなみに、お2人はどんなゲームがお好きなんですか?
林氏:基本的にはなんでもやります。100人いたら100人好きなゲームが違いますよね。僕は、その全員と戦っていかなければいけないわけですよ(笑)。
――全員とですか! それは大変そうだなぁ。
林氏:いやあ、だってゲームの根幹は戦いでしょう。
―― ……分かるような気がします。では、中学、高校といった青春時代はどのようなゲームをプレイされていたんですか?
林氏:『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』や『プロ野球ファミリースタジアム』にはめちゃくちゃハマってました。僕は最初のころファミコンを買ってもらえなかったので、ゲームに対する興味がもの凄くあったんですよ。ファミコンを買ってもらえたのは、だいぶ後になってからなんです。それまでは友達の家にいって遊ぶことが多かったですから。
―― ファミコンが買ってもらえなかったとか、友達の家に集まって遊ぶとかは、子供の頃のエピソードとしては定番のあるあるかもしれませんね。
林氏:でしょ!? なので、ファミコンへの想いは人一倍ありますよ。
―― 井上さんはどうです?
井上氏:僕はニンテンドー64が大好きだったので、『マリオカート64』はかなりやってましたね。あと『ゴールデンアイ 007』や『ディディーコングレーシング』もハマりました。ストーリーモードをずっと1人でやってたんですよ。
―― ニンテンドウ64のゲームは完成度の高いものが多かったですよね。ちなみに店長の井上さんから見て、Ninety.の魅力はどういったところだと思いますか?
井上氏:1人で来て頂いても複数で来て頂いても、何かしらの面白さを提供できるということですかね。僕はまだ23歳なので、スーパーファミコンくらいのハードが「新しい楽しさ」として写ってるんです。ですので、僕のように若い世代の方が来店されたら、新しい楽しさを発見できるんじゃないかと思います。店内には昔のゲームがいっぱいありますし、燃えプロタワーを見て、「なんじゃこのタワーは。頭悪いな」って思うと思いますよ(笑)。
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物凄いインパクトの「燃えプロタワー」。ポイントカードのポイントが貯まると「燃えろ!!プロ野球」が一本もらえるという謎のサービスも
林氏:あるお客さんが、Ninety.はコロコロ(コミック)だって言ってくれたんですよ。それが凄く嬉しくて! やっぱりうちは、みんなが楽しんでくれるということを重視してやってきましたから、コロコロを目指していきたいという想いは強くありますね。「つるピカハゲ丸」や「おぼっちゃまくん」なんですよ、うちは。
―― コロコロっていうのは素晴らしい例えですね。コロコロって読んでいると自然に笑みがこぼれますし、まさにNinety.だと思いますよ。
林氏:昨今だと、友達の家に集まってゲームをやるのはなかなか難しいですよね。昔に比べると、ハードルが高くなっている気がするんですよ。昔だったら、友達の友達の家に集まってゲームをやるとか日常茶飯事でしたけど。
―― 確かにありましたよね。友達の友達ってだけで、実際はどんな人かよく分からないのに、ゲーム好きってだけで友達になっちゃう。
林氏:うん、やっぱり時代性もあると思うんですよ。僕が願っているのは、ゲームがエンターテイメントとして、もっともっと一般に広がってくれたらいいなということですね。
―― 分かりました。それでは最後に、この読者のかたへメッセージをお願いします。
林氏:願わくば、うちのお店が、みんなが集まる友達の家みたいになってくれたら嬉しいです。料理の味には自信がありますし、みんなでワイワイ盛り上がれる空間というのも、うちの特徴の1つです。
興味のある方はぜひ一度足を運んでみてください。よろしくお願いします!
―― ありがとうございました。
記事提供元: インサイド