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Slightly Mad Studiosが開発、バンダイナムコゲームスが販売を行っている、2015年5月6日に発売されたレーシングシミュレーション『Project CARS』。World Mass Developmentでのファンディングをベースとした新しい開発方式を取り入れ、幾度もの発売延期を重ね、美麗なグラフィックとリアルな操作感を特徴とした本作のプレイレポートをお届けします。ゲームの概要については以前の特集をご覧ください。
■キャリアモードを中心としたゲームシステム
本作の特徴は何と言ってもレーシングカートからGT、プロトタイプ、フォーミュラまで幅広く収録されている車種とカテゴリです。これにより、プレイヤーは自身のキャリアをスタートする位置を決めることができます。125ccのシフターカートから1つずつカテゴリーを駆け上がって行くことも、いきなりFormula A(F1相当)やLMP1からスタートすることもでき、現実と同じように、活躍すれば別のカテゴリへのスポット参戦の招待や、上位カテゴリからのチーム移籍のオファーが来ます。しかし、どのカテゴリでも同じチームに残留し、次シーズンを戦うことも可能です。
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プレイヤー作成直後のTier選択画面。最初から任意のカテゴリーに参戦が可能
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Formula Aのチーム Silver Sparkとの契約書。もはや契約書というよりは単なるお誘いである
キャリアモードのメイン画面にはレース結果を伝えるニュースとTwitterを模したSNSがあります。ニュースには他のカテゴリの結果なども出てきますが、自身のポールポジションや勝利を伝えてくれるニュース、そしてSNSで歓喜するファンのコメントを見るのはなかなか気分が良いものです。バリエーションが少ないのか、序盤の時点で既に同じ文章が何回か見えてしまうのは多少気になるところ。
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上部のINBOXにはレースごとにチーム代表からお褒めの言葉や、他チームから招待のメッセージが届く
このキャリアモードをさらに押し上げ、サポートしてくれるのが豊富な実績システムです。スポット参戦のオファーや各カテゴリ・レースでの勝利など様々な条件が実績として用意されており、全てを解除するのにはかなり時間がかかります。それに加え、特定の実績解除を条件としたものなど、ゲームをかなり進めなければ何があるのかすら不明なものなど、数多くのやりこみ要素があります。
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カートからスタートして10シーズン以内にLMP1のチャンピオンを獲得するなど、厳しい条件が並ぶ
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各カテゴリで勝利すると1つずつ埋まっていくACCOLADES
この他にも、フリープラクティスやクイックレース、オンラインなどのシステムも搭載されており、キャリアモードに限らず様々なプレイスタイルで遊ぶことが可能です。
■リアルなのはグラフィックだけではない
本作の最大の魅力とも言えるのが、リアリティ溢れるグラフィック表現でした。プレイをしていると、コース脇の景色やアスファルト、光の反射が自然で、夕暮れ時のレースでは西に向いた際に、現実と同様に路面やオブジェクトに光が反射し、実際に眩しさを覚えるかのような印象を受けます。
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夕方のニュルブルクリンク北コースは絶景
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雨降りの夜の視界は雨粒でほぼなくなってしまう。この時点で時速280km
カメラ視点も複数から選択でき、、コクピットやボンネット、サイドやリアなど定番の視点は全て網羅しています。さらにヘルメットを装着した純粋なドライバー視点も用意されており、コクピット視点と比較するとヘルメットの分だけ視界が狭まり、エンジン音がこもります。圧倒的にドライバビリティは落ちますが、リアルさを追求するには欠かせない要素だと感じました。
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Formula Aのコクピット視点。ミラーは見やすい位置に付いている
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ヘルメット視点にすることで、被写界深度(DOF)がかかり、コーナーでは出口に首を振るようになる
フォースフィードバック(FFB)はデフォルトでは全体的にかなり弱めに設定されていますが、FFBの効きをオプションと各車のセッティングで100にするだけで、ステアリングにはかなりの負荷がかかり反動が大きくなります。実車はそこまでステアリングが軽いわけではありませんが、設定項目はかなり豊富なため、感触にこだわりたい人は突き詰めて調整する価値が充分にあります。
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SilverStoneでBMW Z4 GT3の1コーナーのせめぎあい
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Ford Mk.IV(いわゆるFord GT)で走るモナコのヘアピン。ヒストリックカーも乗り放題
また、レーシングシミュレーションとして重視しておきたい、タイヤのグリップが抜ける瞬間も掴みやすくなっています。気になるステアリングロックはソフトウェア側で自動設定されるため、ステアリングコントローラ側の設定だけきっちりしておけば、自動でゲーム内と実際のステアリングの切れ角が一致するようになり、車を乗り換える度に再設定する手間がありません。
シート位置の調整も前後と高さに加え、視線の上下もホットキーで可能です。HUDの種類とラップ比較もホットキーで変更でき、テレメトリーやタイヤの負荷、温度などを表示できるHUDも搭載されています。とは言え、あまりレース中には見ている余裕がないため、後から見直せるようになれば良いのですが。
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タイヤ、Gフォース、ブレーキ温度、サスペンションなど欲しい情報はほとんど手に入る
■延期してもなお数多く残るバグ、調整に甘さが残るAI
本作は幾度もの延期を重ねましたが、「Steamにゲーム終了が通知されないバグ」があり、Steamをタスクマネージャから強制終了しないと、Steamを終了することも、『Project CARS』を起動することも不可能になる現象が確認されています。
また、レース中もFPSが高いにも関わらずプチフリーズを発症、車種ごとのセッティングを保存するとリストが崩壊するなど、致命的な部分を含め大量のバグが残存しています。少なくとも『Project CARS』を楽しむ上で、しばらくはこのようなバグとは付き合っていかないとならないことは、念頭に置かなければなりません。
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セッティングを保存した結果がリスト崩壊。下の方のリストを選ぶのにはかなり面倒
さらにプレイヤーにとって問題になるのが、ブルーフラッグの概念がないこと。ブルーフラッグは周回遅れの車に対して出され、なるべく早く抜かさせなければいけないルールになっています。しかし、本作ではフラッグを有効にしていても、ブルーフラッグそのものが存在しないのか、AIはレーシングラインを死守してプレイヤーを抜かせようとは全くしてくれません。まるで同じ周回を走っているようにブロックを平然としてきます。
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なんとしてもレーシングラインを死守したい周回遅れのAI。ここについても監修をして欲しかった
場合によっては強引にコース外に押し出さなければ抜けない場合もあり、あまりにリアルとはかけ離れています。もちろんお約束のように周回遅れのAIがプレイヤーに激しく追突することも。
■サイドバイサイドは楽しめる、バグと付き合えるなら買い
本作は致命的とも言えるバグや仕様はいくつかありますが、レーシングシミュレーション、そしてレーサーとしての生活を楽しむという観点から見れば非常に出来が良いタイトルです。AIもレベルをきっちりと調整すれば、サイドバイサイドのアツいバトルを続けることも可能ですし、キャリアモードだけでなく、オンラインでゆったりとニュルブルクリンク北コースを走るような走行会にも参加できます。
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Mitsubishi Lancer Evo Xで鈴鹿サーキットを流すことも可能
レーサーが監修ということで大きな期待はありましたが、監修の成果が見える部分と見えない部分があるということと、改善されると期待したいバグに対して納得ができるかどうかが、購入を決断するかどうかの分かれ目になるでしょう。
『Project CARS』は、PC向けにSteamで4,980円(税込)で販売中です。PS4/Xbox One/Wii U版の国内での発売については未定です。