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前作『Assassin's Creed Unity』オンラインモードでは「女性プレイアブルキャラクター」をカットし、ゲーム開発者を巻き込むほどの騒動にもなっていた『アサクリ』シリーズ。最新作『Assassin's Creed Syndicate(アサシン クリード シンジケート)』では兄妹アサシンをプレイアブルキャラクターとして登場させたほか、“Female to Male”に当るトランスジェンダーのキャラクターを生み出しながら、多様性に対する強いアプローチを示していました。現代社会同様、“性”の認識について議論が深まるゲーム業界。今回の「海外ゲーマーの声」では、新作『アサクリ』登場人物にまつわるレビュー映像に加え、その反応を受けて投稿された海外フォーラムスレッドをご紹介します。
Assassin's Creed Syndicate Review - Feminist Frequency
フェミニズム的観点からゲーム文化を紹介する海外YouTubeチャンネル「Feminist Frequency」は、これまでのゲームに登場する「女性キャラクター」とは異なる表現で生まれ出た女性アサシン“Evie”を軸としたレビューを公開。“Evie”が身に纏うのは「露出度の高いコスチューム」ではなく、その描写もひとりの「主人公」として認められるものだったとのこと。あくまで「現実的な描写」ではない旨も強調していましたが、性的興奮を誘うためではない女性描写にはある程度の評価を与えていたようでした。
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しかしながら、レビュー内で見られた「白人キャラクターが多過ぎるのは失敗だった」「本作は人種差別問題にも同様のアプローチが出来たはず」との主張に対し、海外フォーラムNeoGAFユーザーからは「1800年代のロンドンを舞台にした今作で人種問題について問いかけるのは間違ってる」との反論が説かれていました。また、海外メディアGameSpotで「トランスジェンダーキャラ」の存在が報じられた際にも、「トランスジェンダー自体は気にならないし全く問題ないと思ってる。けど、こういうタイプの“流行を追う”ような動きにはつくづくうんざりする」との声が寄せられており、更には「LGBTコミュニティーなどに認めてもらいたいがために、自慢してるようなもの」と言った指摘も届いていました。
クリエイティブディレクターMarc-Alexis cote氏は海外メディアインタビューに際して「多様性の推奨」を目的とする旨を語っていましたが、この動きをプロモーション的に感じたユーザーの間では反感が高まっていたようです。しかしながら、「トランスジェンダー」や「女性主人公」と言ったキャラクター設定そのものに対するネガティブなコメントは目立っておらず、Marc-Alexis cote氏が語るところの「多様性」は一定数のゲーマー達の間で既に認められているように感じられます。
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『DA:I』登場のゲイ魔道士“ドリアン”。その他、「エルフ」のみを恋愛対象とするキャラも登場
任天堂の『ファイアーエムブレムif』など「性の多様性」を意識したゲーム作品が増える昨今。BioWare開発/Electronic Arts販売の『Dragon Age: Inquisition』ではハイファンタジー作品に見られる「種族同士の対立」に性嗜好が結びつくロマンス表現も為されていましたが、「ゲーム性」と「社会的多様性」を意識的に両立させる企業/開発チームの姿勢には、より適格かつセンシティブな判断力が求められていくかもしれません。