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世界最大のPCゲーム『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』のプロリーグの一つ、北アメリカのチャンピオンシップシリーズ「NA LCS」。秋に開かれる『LoL』世界大会の切符をかけたプレイオフに参加するためには、まずはこの「サマースプリット」でベスト6の成績を残さなければなりません。6月3日から5日にかけて開催された「Week 1」では、全10チームがそれぞれ2試合ずつのマッチで激突。従来の「2日間/BO1」という試合形式を「3日間/BO3」へと変更したことも影響し、まさに「世界へ進むための第1歩」とも呼べるこの戦いはさらに熱くなっていました。
メンバー変更やゲームパッチ修正は多かったものの、北米リーグの中でも世界的に愛されているTeam SoloMidはまごうことなき優勝候補として新たな姿を表し、前シーズンのチャンプであるCounter Logic Gamingを決定的に打破。これまでの弱点が改善されたように見えました。この試合では、2016シーズン開始に加入したYellOwStaR選手の代わりに、ルーキー・Biofrost選手がTSMのユニフォームでデビュー。初登場ながらも不安定なプレイをまったく見せず、ベテランADC・Doublelift選手と完璧に歩調を合わせました。予てから「アメリカ最強のADC」とも言われる彼は、サポートプレイヤーの交代をものともせず、その称号に恥じないプレイを見せています。
5日のTeam SoloMid対Team Liquid戦の後、Game*SparkはDoublelift選手にインタビューを実施。今回は韓国でのブートキャンプ、新サポートBiofrostとの相性、パッチ、そしてダイナミックキューについてお話を伺いました。
――「Week1」最初のBO3を2-0で勝利した気分は?
Yiliang "Doublelift" Peng選手(以下、Doublelift): いい気分だ。韓国ではひどい目にあったからさ。ブートキャンプ自体が悪かったわけじゃないけど、スクリムでは負けてばかりいた。負けっぱなしの20 日間で、気を落とされちゃった。最後のところで少しはしっかりできたけど。「俺たち、雑魚だなー」って気付かされたし、何か“柱”になるようなものを見つけるべきだと思った。プレイヤーのことではなくて、ゲームプレーの理念のようなもの。俺たちのあり方、TSMのあり方ってやつを。何に決めたのは明かせないが、その後アメリカに帰ったらみんなをぼこぼこにできるようになった。CLG戦にはかなりの自信を持って挑めたし、2-0で勝てたらTLを下せて当然だと思った。
――韓国にいた間、Biofrost選手をスタメンに入れようと決めたのはいつでしたか。
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Doublelift: 韓国に着いたらスケジュールや翻訳などでいろいろあって、他にトライアウトできる選手がいなかったんだ。だから5日間ずっと彼とプレイしていて、試合にも勝っていた。彼は明らかにルーキーという感じで、マクロ的にキャリーされるタイプだったけど、個人技的にも渡り合えた。そのあとは他の選手と練習を回していろいろ試したんだけど、なかなか勝てなかった。勝った試合でも、別にトライアウト自体が良かったわけじゃないし、プレイやショットコールの上手さで勝利したわけではなかったんだよね。4人でトライアウトをキャリーしただけ!って感じ。でも、ルーキーのBiofrostにはそう感じなかった。韓国で10~15日間練習したあと、Biofrostを選ぼうと決めた。それから、積極的に彼を育てる方向に切り替えたんだ。
――彼のスタイルや経験は前シーズンのYellOwStar選手とは全く異なりますが、どんな基準でトライアウトを行いましたか。
Doublelift: もちろんアグレッシブでハンドスキルの高い選手を探していたけど、チームを意識しながらプレイできることを重要視していたよ。仕掛けるときはチーム全体を考えた上で行動すること。「Double、あれをやるぞ」とかより、「Double、Sven、Bjergsen、やるぞ。Hauntzer、テレポートできる?」みたいに。Biofrost選手はまさにそんな感じ。。みんなに気に入られたい、みんなと一緒にプレイしたいという気持ちが伝わってきた。個人技よりも、チームと一緒にプレイするように、一生懸命だった。他の4人は強い選手ばっかりなので、その中に入れるような、チームをまとめてくれる選手を育てたい。ルーキーなら尚の事簡単。
――ということは、前任のYellOwStaR選手はその反対にあるプレイヤーとも言えますか?自分のスタイルやゲームプレイが強すぎて、相性が良くなかったりもしましたか。
Doublelift: 最初はショットコールの全てをYellOwStaR選手に任せてたんだ。彼一人用RTSゲームのユニットになって、命令に従うという感じで。でも彼のコールは手堅くなかったと思う。HuniとReignoverはすごく強くて賢いプレイヤーで、自分たちでImmortalsを一流のチームに仕上げた。自分たちで判断して、プレイを実行するコンビ。YellOwStaRのショットコールはマクロ的で、「トップサイドに集中しよう」という感じ。YellOwStaRが数年前にFnaticでサポートを担当してたころ、たぶんHuniとReignoverは「オッケー、じゃあ俺らはトップでこうしよう」という流れで彼をフォローしていたんだと思う。でも、そのスタイルは俺たちと相性がよくなかった。そして個人技やシナジーの面でもあまりよくなかった。確かにすごくユニークだし、強くて経験が豊富なプレイヤーだけど、TSMではうまくいってなかった。それでショットコールを俺とBjergsenに譲った。今も二人で99%のコールをしている。そんなこんなで居場所がなくなったと感じて、ヨーロッパに帰りたいと思ったんだろう。
――Bjergsen選手と一緒に、どんな指揮を執っていらっしゃいますか。
Doublelift: Bjergsen選手は、次にするべきことを一人ひとりに確認している。コールが出たら、「ボットの人達、今のコール聞いた?じゃ、このプレイはどうする?」という風にみんなをまとめる。俺のほうは瞬間的なショットコールと序盤のゲームメイク担当。集団戦に勝ったら、バロンに行くかタワーに行くか、どんなローテーションにするかを決める。「今すぐ、この5秒内にタワーを折る!折らないと引く!」と積極的に言えるのは俺だけだからね。Bjergsenはチームをまとめるのがマジで上手で、俺は瞬発的にショットコールしつつ、どうやって勝ちを取りに行くかを決断するんだ。
――少なくとも今は、TSMがNAの中で一番統率が取れているチームという印象を受けますが、Doublelift選手も同じようなお考えですか。
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Doublelift: その通り、俺たちはマジで強いよ。スクリムじゃみんなをぼこぼこにしてやれたから、Immortals戦は本当に楽しみ。前シーズンは練習試合で負けっぱなしだったから今はスッキリしてる。それに、IMTは俺らのスクリム相手だったCloud 9にも勝ってる。数ヶ月ぶりに相見えるのが楽しみだ。
――Doublelift選手が韓国にいた間、ゲーム自体がミッドシーズンパッチやメイジアップデートによって大きく変わりました。TSMの戦術も、アップデート同様に大きく変える必要がありましたか。
Doublelift: Bjergsen選手はもうルルやコーキ以外の、好きなチャンピオンを自由にプレイできる。今までのミッドはチャンピオンの選択肢ががあまりなかった。ルル、コーキ、時々リサンドラ。。今はもっと楽しくプレイしていると思う。そういうのはモチベーションや試合全体への取り組み方に強く影響するんだよな。俺のほうは、新しくなったドラゴンを意識しつつボットレーンに集中したゲームメイクをしてるよ。レーンスワップより、とりあえず通常の2v2戦に勝てる状態にならなければならない。2v2でぼこられたら、ドラゴンを失ってゲームに負けちゃうからね。
――ファーストピックでADCを選ぶ重要度が再び高まってきましたね!
Doublelift: ルシアンを最初にピックしちゃうか、そうでなければルシアンを抑えて「妖夢の霊剣」のパワースパイクに耐える重要度がだいぶ大きい。。ナーフされちゃうのは残念だと思うけどな。これじゃまたファームだけのレーン戦への逆戻りだ。
――つまり、ケイトリンやエズリアルみたいなチャンプの動き方ですね。
Doublelift: そう。あまり楽しくなくて、腕比べにも感じないな。最近は、Bjergsenが彼のチャンピオンプールを生かせてるし、俺とBiofrostがアグレッシブにプレイできて良い感じだ。トップは……やっぱりHauntzerは常に1v1に勝っているよな。本当に頼れる存在だ。
――ルシアンの「ピアシングライト(Q)」の射程がナーフされますが、彼はもうお先真っ暗でしょうか?
Doublelift: ひどいチャンプになっちゃうよな。たぶん次のパッチでは、トゥイッチやヴェインが結構強くなる。サイドレーンのプレイするが重要になった。以前はグループアップしてポークするのが基本だったが、今はサイドレーンを通して川のコントロールを獲得すれば、ドラゴンを取れる。トゥイッチやヴェイン、今のルシアンのようにサイドレーンに圧力をかけられるチャンプがいるとき、そのプレッシャーに合わせられないとボットのタワーやドラゴンを奪われちゃう。まあ、ルシアンはこのナーフで終わりだろうよ。。
――最後の質問になりますが、Doublelift選手はダイナミックキュー機能に対してかなり否定的なスタンスを見せていますね。北米のプロたちはもう北米サーバーではなく、トーナメントサーバーでプロリーグを行っているわけですが、その「トーナメントサーバーは映像配信できない」という規則がご収入に影響されていると仰いました。それに加えて、一般サーバーから隔てられた場所での練習となると、やはりLCSに向けた練習にも響きますか。
Doublelift: 練習なら、むしろ今のほうが効果的だと思う。マッチメイキングを待たずに、好きなロールで、0ピングで練習できる。けど、コミュニティーにとってはひどいことだね。もう好きなプロとはマッチしなくなった。今までなら、高ランク選手はたまにプロや有名のアマチュアに当たったりもして、サーバー全体のレベルが引っ張られてきた。でも今はその手のファンタジーが完全になくなった。これは最悪だな、俺だって昔はソロキューのプレイヤーだったんだよ。プロとマッチングしちゃったときにはと、「マジかよすっげー!」みたいな感じに、めちゃくちゃモチベーションが上がった。「プロにぼこられる側」から「プロをぼこる側」になったら、「俺、もしかしたらプロとしてやっていけるかもしれない!」と思えた。彼らと1v1できれば俺だってプロになれる。そういう楽しみを奪われるのはすごく残念なことだ。俺とBjergsenの収入が8割もなくなったこともどうかしてる。まともに練習できるようにこのシステムにしたみたいだけど、いいことはないね。
――最後に、ファンや読者に向けたメッセージをお願いします。
Doublelift: これって日本のサイト、日本人のコミュニティーが読む記事だよな?応援ありがとう。実はめっちゃアニメ見てるからさ。スポンサーと日本のファン、そして世界のファンには感謝してるよ。
――どうもありがとうございました。