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先日から京都で開催された「BitSummit 4th」1日目のステージに、都市の地下鉄網をマネージメントする『Mini Metro』を開発したDinosaur Polo Clubの1人であるPeter Curry氏が登壇しました。
Curry氏は自身が開発した『Mini Metro』が総計25万本というセールスを記録したことに対して、「なぜこれほどまでに商業的に成功したのか?」という理由を自己分析。その中で完成した、ゲームを評価するためのあるモデルを提案しました。このモデルは"企画・伝わりやすさ・プレイヤー体験"という3つの軸で構成され、軸ごとの左右にそれぞれを評価するための度合いが設定されています。
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例えば、企画の軸では「革新」に近づくほど、そのゲームはより目新しいシステムを採用していることになり、逆に「ジャンル」に近づくと既存のジャンルと似通ったものとなります。大手開発会社のシリーズタイトルをこのモデルに当てはめると、どの軸もほぼ左側に寄ることが大半であると述べ、ジャンルは既存のもので、伝わりやすく、プレイヤー体験も過去に似たものが提供されます。しかし、そのようなメジャータイトルはゲーム全体の"出来映え”が非常に高いクォリティであることをCurry氏は付け加えます。
"出来映え"を高めるのは非常に難しい工程で、インディー開発者はその部分で勝負しなくてはならない状況を避けるべきだと主張。もちろん、経験と才能が豊富である小規模スタジオが出来映えで勝負をすることはありますが、ほとんどの開発チームにとっては困難なので、小規模開発においては最大で唯一の利点「リスクを取れること」を最大限活かすべきだと述べます。
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しかし、むやみにリスクを取り、革新的すぎる企画や徹底的にユニークなプレイ体験を提供すると、ユーザーにゲームを全く理解してもらえない危険が生まれてしまいます。Curry氏はそのバランスを上手く取るために、先ほどのモデルでタイトルを評価してみてほしいと言います。
そこで、実際に『Mini Metro』の成功をモデルに合わせて考えてみると、輸送シミュレーションという既存のジャンルの中で、いくつかの企画上のアイデアが上手く作用したとCurry氏は語ります。企業の資金をマネージメントするのではなく、抽象的なリソースをいくつか管理し、1プレイを比較的短時間に、そして都市の様子を抽象的な路線図として表現。これらのアイデアにより、企画軸は既存のジャンルからそれほど離れず、プレイヤー体験軸はユニークなものに、そして路線図によって従来のシミュレーションより伝わりやすさ軸が容易になったのではないかと分析します。
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最後にCurry氏はインディー開発において「リスクを取らないことがリスキー」であることを強調。もちろん、既存のジャンルやシステムを踏襲すれば、既存のユーザー層を獲得でき、マーケティングのリスクが減るという明確な利点があります。しかし、Curry氏はリスクを恐れず尖ったアイデアや企画に提案することによって、ありふれた作品に留まってしまうという最大のリスクを減らせることを信じていると講演を締めくくりました。