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2Dプラットフォーマー新時代を切り開く『Inside』をレビュー、陰鬱なディストピアを駆け抜けろ

本記事では、注目度高なPlaydeadの新作『Inside』をレビュー。濃厚なナラティブアプローチをおなじみのジャンル「2Dプラットフォーマー」で贅沢に味わうことができる本作を、旧作『LIMBO』と比較しながら紹介していきます。

連載・特集 ゲームレビュー

オープンワールド超大作ゲームやチームベースFPS/MOBAを遊ぶ現代のゲーマーでも、誰しもが通った経験があるであろうゲームジャンル「2Dプラットフォーマー」。日本国内では『スーパーマリオ』に代表されるアクションゲームを指すものとして知られていますが、『LIMBO』や『Braid』『FEZ』などに見られるような海外インディーシーンにおけるエッジーな盛り上がりもGame*Spark読者にとっては見逃せないところでしょう。この記事では、そんな2Dプラットフォーマーの中でも注目度高なPlaydeadの新作『Inside』をレビュー。ネタバレは可能な限り避けつつ、『LIMBO』との比較を交えながらその魅力をご紹介します。


『Inside』で使用する操作キーは「左右の移動」「ジャンプ」「アクション(掴む/押す)」のみ。操作面に関しては『LIMBO』と完全に同一でとてつもなくシンプルなものです。にもかかわらず、『Inside』ではステージの「奥/手前」のレイヤー感を以って、陰鬱なディストピアを自由自在に駆け回る感覚を与えてくれます。この点に注目すれば、『Inside』は『LIMBO』から明らかな進化を遂げていると言えるでしょう。


「奥行き」を感じられるレイヤー自体はさして新鮮味のある演出ではありませんが、「基本リニアなステージを自分の意志で歩き回る」という感覚は、プレイアブルキャラクターの少年に没入するための大きなきっかけになります。平面的なビジュアルの『LIMBO』よりも自由度の高さを感じさせる世界で「何者かに追われる」「何者かから隠れる」といったストレッサーを突き付けられるうちに、プレイヤーは『Inside』の主人公に入り込み、容易に「ディストピアを駆ける少年」になり切れるはずです。


軽快なアクションを楽しむ2Dアクションとの大きな違いは『LIMBO』でもそこかしこに表出していましたが、『Inside』におけるナラティブな試みは更に濃厚なものに変貌しています。単刀直入に言ってしまえば『Inside』のシナリオ導入は『LIMBO』同様に何がなんだか分からないもの。「何がなんだか分からないけど、この社会から逃げないといけない」、そして「ともかく左から右に移動しなければならない」という原則的なゲームルールの中で物語を読む『Inside』では、そもそも舞台がどんなディストピアであるのか、一度に詳しく説明されることはありません。

トレイラー映像でも見られるような「ゾンビのような大人」や「それらを管理する組織」の所作から物語を察したり、アクションパズルをクリアして徐々にシナリオを認識していく、という感覚こそが『Inside』の最大のキモ。数年前からインディーシーンで流行化した「ナラティブ」なアプローチにおいてはオーソドックスな部類になると思われますが、そういった意味では「“ナラティブ”が何を指すのか分からないが興味はある」という方にオススメかもしれません。


シンプル操作でシナリオを体感していく、そんな本作は間違いなく集中力を要するゲームと言えます。「ゾンビのような大人」とプレイヤーが操作する「子ども」が意味するコントラスト、パズルギミックや演出から感じられるディストピア的世界の背景。簡素なアクションと比べて「読ませる演出」はあまりにも膨大で、筆者の感覚で言えばそんじょそこらのシミュレーションゲームよりも「手を動かさずに考える時間」が長かったかもしれません。


もちろん攻略に頭を悩ませて単純に「手が動かなかった時間」もありましたが、『LIMBO』と比べれば理不尽なギミックも少なくなり、難易度も全体的に下がっているようにも見受けられました。キャラ死亡時のグロテスクな描写も単なる「インパクト重視」に留まらず、「子どもが死ぬ」という重みを毎度突きつけてくるようで、陰鬱な世界観の重要なパーツになっています。この手法自体は『LIMBO』と大差ありませんが、「大人がいる社会」での出来事と思うと痛々しさは遥かに増します。ちなみに、パズルそのものは『LIMBO』と同レベル程度の難しさ。『LIMBO』経験者ならむしろ「また箱を運んで踏み台にするのかよ!」と懐かしく思えるかもしれません。


物語を読ませる演出、「レイヤー感」で高められた没入度、中盤から怒涛の勢いで広がる世界。『Inside』を構成するこれらの要素は、海外ゲームにのめり込んできたハードコアゲーマーから「最近Steamを導入したばかり」といったゲーマーまでをも魅了する確かな力を持っています。コア層からライト層の双方でヒットした『LIMBO』を越える完成度でインディーゲームシーンに新たなスタンダードを築き上げたPlaydeadは、『Inside』で再び成功を収めたと言えるでしょう。濃厚なナラティブアプローチをおなじみのジャンル「2Dプラットフォーマー」で贅沢に味わうことができる本作は、間違いなく2016年のマストプレイなインディーゲームです。
《subimago》
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  • スパくんのお友達 2016-07-26 5:46:14
    記事の質が低いのは今に始まったことではない
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-25 4:53:31
    俺の小論文みたい
    2 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-24 2:29:39
    普通に良いレビュー記事だと思うんだけどネガティブなコメント多くて困惑
    7 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-24 1:04:53
    >>5
    アクションゲームとして見れば難易度は低くサクサク進む反面、クリアまでの時間という意味でのボリュームは少なく、2000円は高く感じてしまう。操作性は良好。それくらいしか言えないよ。
    ただ考察するのが好きな人からすれば破格の内容。正解は与えられてないし、拾える情報は膨大。
    何かを言おうとするとネタバレに繋がってしまうから、煮え切らない記事になってしまうのは仕方ないと思う。
    興味が沸いたら前情報なしで触ってみてほしい。
    15 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-23 23:59:31
    こっちに引き付けて~みたいな同じ発想で解く仕掛けが多かったな…
    2 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-23 22:29:04
    モノクロからカラーになったからか死にパターンはLIMBOより少なくて、グロ表現大分減ってると思う。
    色んな死に方試してキャッキャ出来た前作より、ちょっと優等生になった感じ

    でも後半含めれば、個人的には大変キモ可愛いくて存分にキャッキャ出来て良かった。
    4 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-23 17:13:07
    このゲームの良さはね、何が言いたいのかさっぱり分からないけど、「何が言いたかったんだ・・・?」って一人考えずにはいられないほど、アートや演出が圧倒的なところよ。
    美術館とか行って「何だこれ?」って思いながらでも見入っちゃう絵とかあるやん?あんな感じ。
    6 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-23 12:54:05
    解説しろって声があるけど
    これは本当に、一切の前情報なしでプレイすべき作品
    やればわかるしなんなら記事にするのも良くない
    20 Good
    返信
  • ルー 2016-07-23 7:27:29
    雰囲気重視な即死謎解きジャンプゲー って感じかな
    しかし雰囲気は雰囲気であって 特に意味はないもよう
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-07-23 5:27:04
    雰囲気が良いってことしか伝わってないし、そんなのトレーラー見ればわかるよ……
    9 Good
    返信

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