Osmotic Studiosが開発、Surprise Attackが販売を行う、アドベンチャー/シミュレーションタイトル『Orwell』。全5エピソードで構成された本作は、架空のオンライン監視システム「Orwell」を中心に、テロを防ぐというストーリーを体験できるもの。取った行動により登場人物やストーリーが変わり、エンディングも自身の手で選べるマルチエンディング方式となっている本作の、極力ネタバレを避けたプレイレポをお届けします。
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まず、本作は音声・ダイアログともに英語のみとなっており、日本語化Modなども存在しません。この時点で挫折を感じる方が多いとは思いますが、リアルタイムで対応する必要があるイベントがなく(正確には実績解除に限り1箇所必要)、ゆっくりと時間をかけて考えることができます。そのため、わからない単語を検索して意味を調べて、きっちりと日本語に直してから考える時間を取ることができます。
本作のストーリーを理解するにあたり重要なのは、「Orwell」は、プレイヤーが担当する調査員(Investigator)とアドバイザーがタッグを組み、テロなどの犯罪を防止するというシステムということ。それぞれが完全分業となっているのが特徴です。
- ■調査員(Investigator)
・アドバイザーから許可された人物に限り、ウェブサイトやSNS、電話などを元に、犯罪となる証拠をOrwellにアップロードすることができる。ただし、調査対象のSNSアカウントや電話番号は自身で発見する必要がある。
・調査結果から得られた内容をOrwellにアップロードすることも、見過ごすこともできる。また、矛盾した内容は自身で判断し、選択する必要がある。
■アドバイザー
・調査員に対して、調査する人物の指定と許可を必要に応じて行う。
・調査員からアップロードされた結果に対してコメントや指示を行うことはできるが、調査員の行動を指定することはできない。
■共通
・調査員とアドバイザーはお互いに会話をすることができない。
・Orwellにアップロードされた情報は、矛盾や間違いがあっても後から訂正することはできない。
◆調査員のアカウントを作成する
まず、プレイヤーのアカウント(セーブデータ)を作成します。名前と画像を選び、現実世界のメールマガジンは必要であれば登録し、Orwellの規約に同意します。おめでとう!これで調査員としての第1歩は完了です!
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おめでとう、あなたはOrwellのテストフェーズに選ばれました、という怪しい文言
◆1回目の爆破テロ
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顔認識で犯罪歴が自動でピックアップされる監視社会の闇
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Freedom Plazaでの爆破テロ、駆け出す人々
監視カメラの映像をフィーチャーしたムービーが流れ、通りがかる人の顔が顔認識ソフトでリアルタイムに解析され…そして爆破テロが街の中心部で発生します。その後、PC画面のようなOrwellの画面に切り替わり、相棒でもあるアドバイザーのSymesから、一方的な自己紹介と、協力してテロの防衛に務めるなどの少しだけ長いお話があります…が、基本的にアドバイザーの話は、斜め読みでも読まなくても大丈夫です。
本来、画面右上の機能はエピソードに応じて解放されますが、本稿では一気にご紹介。
- ■Reader
いわゆるWebブラウザ。これで犯罪者の記録やウェブサイトなどを読み、必要な情報を探します。
■Listener
通話、SMS、Eメールを監視するソフトウェア。通話は単語が1つずつ話しているように表示され、SMSは入力中を示す”...”が表示され、長さに応じて表示までの時間も異なるなど、こだわりの演出。ちなみに、この間Readerなどを使っていても通話やチャットは勝手に進みます。
■Insider
他人のPCやスマートフォンを覗けるソフトウェア。ハッキングのイメージが強いコンソールなどは一切なく、リモートデスクトップで操作しているイメージです。ここからドキュメントや写真、電話帳などから情報を得ます。
まずは練習がてら、新聞のThe National Beholderを読みます。右側に☆がついている場合は、更新されたか未訪問のリンクがあることを示します。読んだあとは、Bonton Police Databaseから、現場に居合わせ、過去に逮捕歴のあるCassandra Watergateの名前や写真をOrwellにアップロードします。
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右上にはツール、左上には日付が表示される。左上のOrwellアイコンか日付をクリックで情報を表示可能
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◆色分けされたハイライト、不必要なものはDisable
アップロードできる情報は青いハイライトが引かれ、黄色いハイライトが引かれたものは、矛盾する文章があることを示すもの。データをアップロードする前であれば、必要ないと思う情報はDisableで無効にでき、また無効を取り消すことも可能です。矛盾がある文章を含むドキュメントが解放されると、右下のShow Conflictをクリックすることで該当部分に飛ぶことができます。
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情報そのものの概要と、情報によっては他の人との関連性などもまとめて表示されるのが便利
このように楽しみながら適当にOrwellに情報をアップロードしていると、序盤の数分で調査対象のSMSアカウントや家族構成、関係する人物だけでなく、矛盾している情報からどちらを選ぶかというシチュエーションまで体験することができます。さらに、タイムラインからは人間関係のもつれなども見え、どこか生々しさを感じることも。
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チャットのtypoもリアルに再現。自分でもついやってしまう自覚があるからこそのリアルさ
◆The Thought
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The Thoughtのブログ。左下はプロフィールと切り替えで相関図が表示可能。各人物のプロフィール写真は、登録したものであれば好きなものに変更できる
そして本作の中心となる、ディベートグループ兼活動団体「The Thought」の登場。スローガンは"The Thoughts Are Free(考えることは自由)"で、実在するドイツ民謡" Die Gedanken sind frei"を英語に直したもの。主宰は後に明らかになるAbraham Goldfelsで、エピソード1ではブログの記事はほとんどが非公開にされています。
新しく登場するJuliet Kerringtonとのチャットで、Cassandraは警察官に暴行を働いたことが判明。アップロードすることで、Symesが逮捕の手続きを取ってくれます。さらに、チャット中に「ちょっと待って、誰か来た。すぐ戻るね。」と言いながら、逮捕されて戻ってこないという鉄板の流れ。そして逮捕直後に発生する、第2の爆破テロ…。テロを防止する目的にも関わらず防げなかった事に対し、プレイヤーに対して慰めながらも、ログアウトして休むことを勧めます。
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彼女はこのまま逮捕されてしまうのであった
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第2の爆破テロ。右上のアイコンがエピソード終了の合図
◆調査員の1日目、終了
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エピソードを終えるごとに、このように起こった事件と入手した情報が人物ごとに表示される
このログアウト機能が実にリアルとも言える設計。Orwellにログインして調査員として仕事をし、右上にアイコンが表示された以降にログアウトすることでエピソード1つが終わる、という仕組みになっています。1エピソードが大体1時間~1時間半程度で終わるものなので、1日1エピソードずつプレイしても違和感がありません。ちなみに、右上にアイコンが出ていない状態でログアウトや終了を行うと、そこまでの内容が自動的にセーブされます。
エピソード2以降、プレイヤーの選択によりストーリーが変わってくることや、内容が一気に深くなり大きな展開を常に迎え、多くの情報や矛盾を捌いていくことになります。また、嘘を見抜くのはもちろん、謎のハッカーの登場や、後遺症や病気から人物の行動を予測する必要が出てきたりと、プレイヤーの脳内でも様々なパターンでストーリーが展開されることは間違いありません。また、エピソード5では、予想もしないような多数の大きな決断を迫られることとなります。
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エピソード2の序盤。見えるだけでも5件あるが、この情報を推理しながら捌いていくのが病み付きになる
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筆者は一通りストーリーを体験しましたが、未だに正規ストーリーがどれかというのはわかりません。ただし、修正を含め後戻りが一切できないというのは、ジャンルは違えどもシステムが特徴的だった『Life Is Strange』の真反対を行くものと捉えました。
初プレイと2周目以降では、結果は同じだろうと踏んでいたところ、細かい部分のストーリー展開も含め、大筋は同じでも選択によって大きく異なる印象。周回プレイでありがちな、同じストーリーを繰り返し何回も読まされるという感覚は、ストーリーが大きく変わる中盤以降はありませんでした。アップロードする内容を少し変えるだけで、容疑者が逮捕されずにエンディングまで残っているだけでなく、途中で違うストーリーが挟まれるなど、何度も楽しめたと同時に、自分自身に他人の人生や国家の運命が委ねられているという、監視社会の恐ろしさを疑似体験したとも言えます。
頭を使うことや推理が好きな方、監視社会(とそれに対する反発)というキーワードに反応してしまう人にはもちろんおすすめですが、英語力が不安というのが先に来てしまう方は、先にデモ版を試してみるのも良いかもしれません。
『Orwell』は、Steamで通常版が980円、サウンドトラック付きの『Orwell Deluxe Bundle』は1,470円で販売中です。