【特集】Valve担当者を取材―Steamはどう進化し、この先どこへ向かっていくのか | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【特集】Valve担当者を取材―Steamはどう進化し、この先どこへ向かっていくのか

Steamは一体にどのような成長を遂げたのでしょうか?今回は、E3 2017にあわせて、ロサンゼルスに滞在中だったVavle、Steam担当のRicky Uy氏、並びにBusiness DevelopmentのDJ Powers氏を直撃。お話を伺いました。

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Game*Spark読者のような、洋ゲーやインディーゲーム愛好家にとってなくてはならないツールが、ゲーム配信プラットフォーム兼ゲームランチャーのSteamであることは間違いないでしょう。事実、本記事を読んでいる読者の中にも、10年以上前に『Half-Life 2』を誰よりも早くプレイしようと、英語と格闘しながらSteamをダウンロードした諸兄も多いのではないでしょうか?もちろん、筆者もそんな洋ゲーホビイストのひとりです。

また本誌の兄弟誌であるインサイドでは、その前身であるSlash Games時代から、継続的にSteamについて追い続けてきて、ちょうど10年前のValve取材記事も残されています。この当時、Steamはインディースタジオのプラットフォームというよりは、大作ゲームをエピソードごとに分けて手軽に販売したり、MODを共有するためのサービスという認識のようでした。これがわずか半年ちょっとの2008年4月にはSteam経由でリリースされた音ゲー『Audio Surf』が、実はたったひとりで作られていたということが話題になっており、本誌もそれを記事にしています。

考えてみれば、これが今のインディームーブメントの先駆けだったとも言えるでしょう。Valveの広報担当者であったDoug Lombardi氏は、その他の面白いゲームとして『Rag Doll Kung Fu』を挙げていましたが、同作開発の中心人物であったMark Healey氏がのちに『LittleBigPlanet』シリーズで知られるMedia Moleculeを創業することで、インディースタジオを表舞台に送り出すというSteamの位置づけが確立されました。

では、そんな時代からSteamは一体にどのような成長を遂げたのでしょうか? 今回は、E3 2017開催にあわせて、ロサンゼルスに滞在中だったValveのSteam担当、Ricky Uy氏、並びにBusiness DevelopmentのDJ Powers氏を直撃。たっぷりお話を伺いました。

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■2016年に4,000タイトルがリリースされたSteam。その7割はインディー

Ricky Uy氏(写真左)、DJ Powers氏(写真右)

――本日はよろしくお願いします。現在Steamで作品を展開しているインディーは何社くらいなのでしょう?

Ricky Uy氏(以下Uy氏): ……とにかく、たくさん!(笑)

DJ Powers氏(以下Powers氏): 別の言い方で言うと、現在Steamで配信されているゲームはおよそ13,000本です。

――膨大なラインナップですね。

Powers氏: そのうちの半分以上は、インディーデベロッパー、独立系の会社がリリースしているタイトルですね。2016年だけで4,000本以上のゲームがリリースされて、その70%がインディー系。あくまでも感覚値ですが。

――実験的作品と言えば、これまでSteam Greenlightが重要な役割を果たしてきましたよね。

Uy氏: Steam Greenlightではこれまでおよそ5,000タイトルが正規にリリースされてきたので、それ以上の作品が申請されてきたことになります。Greenlightの成果にはすごく満足していて、この時期の目的はしっかり達成できました。そのような流れの中で6月13日にSteam Directへと移行したのは自然な流れだと思っています。

――Steam Directの詳細発表後のユーザーやメディアの反応はどうですか?

Uy氏: 非常に前向きに捉えてもらっています。Steam Directについて最初に発表してからの懸案事項は、「一体、ゲームを申請するのにいくらかかるんだ?」ということでした。特にインディースタジオにとって、初めてのタイトルを出すときはそもそも資金が無い状態からはじまります。どのような状況にあっても彼らの可能性を削いでしまうことは避けたかった。凄いゲームを作ってリリースするということを。ただ、同時にゲーム作りに対して真剣でない人たちや、Steamのシステムそのものを搾取したいと思っている人たちが手軽にシステムに入り込んでしまうことは防ぐ必要がありました。結局、リクープ可能な100ドルで落ち着いた形です。つまり、彼らが1000ドル程の収益を得た段階で、これらの料金は戻ってくることになるのです。

Powers氏: Valveの目的はデベロッパーが作りあげたコンテンツを、出来るだけ早くたくさんのお客さんの手に届けるということです。むかしはどうだったかというと……これはDougが以前話したと思いますが……Valveにいる誰かと知り合いである必要があった。そこからゲーム案をValveに申請し、Valveのほうで判断したうえで、いくつかが選ばれるというプロセスだったのです。当時、Steamの規模自体が限られていたから、これしか方法がなかったというわけです。


――それはSteam Greenlightが始まる前のことですね。

Powers氏: それがSteam Greenlightでは、作品の良し悪しを判断する権利をコミュニティに移譲したのです。Valve側ではそのためのパイプラインを整備することに専念しました。Steam Directは、そういった支援体制の新たな進化の段階と言えるでしょう。今回からは、開発者側と顧客との壁が可能な限り低く設定されたということです。あらゆる障壁となる可能性を取り除いて、つまりは、官僚主義的な要素を完全に取り除いた「プラットフォーム」なのです。

――官僚主義を取り除くのはなぜ重要なのでしょうか?

Powers氏: 僕たちは、よりたくさんの「ゲーム」や「アイデア」をリリースすることが出来る体制を整えることは、よりたくさんの成功体験を可能にすると思っています。世界にはたくさんの「良いアイデア」で溢れている。でも、もしValveがどのゲームをリリースするか選んでしまうと、「ある特定の顧客にとって評価されうる作品」を提供するチャンスを逃してしまうことになる。我々はSteamユーザーに「すべての作品」を提供したいのです。だから、官僚主義のようにむしろ障壁を作ってしまうプロセス自体を解消しなくてはならない。デベロッパー側にとってより手軽にコンテンツを提供できる環境をつくりたいのです。それが多くの選択の可能性を顧客に提供することになります。

次ページ: すべてのインディーメーカーはSteamにあつまる!
《中村彰憲》
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  • スパくんのお友達 2022-07-02 4:23:52
    おま国と言ってるが国が良いイメージじゃないから売らんと言う事は無いぞ
    作成者はがんばって作ってるからねぇ、まあバグがある有料ゲームはアップデートで直せ。
    ちなみに購入者を困らせるバクだったら報告した方が良いしSteamのゲームコミュニティは内容ヤバいと思う
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 17:25:31
    とりあえず自演レビューを徹底的に潰していく姿勢には大いに好感がもてる
    3 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 13:03:16
    Steam一強はあまりよくないのは分かってるけど、使う側としてみたら管理が一元化できるので、Steamだけあればいいやって気持ちになるんだよなぁ
    色んなインディーゲームに出会う機会も生まれたし、いつの間にかSteam大好きになってしまった自分がちょっとイヤだw
    7 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 11:33:14
    自分で流通してないしgreenlightはやめるしでインディーって呼称も割とピンとこないな

    クライアント表記通りの大手販社の傘下にない独立系デベロッパ以上の肩書つける必要ないんじゃないか

    >>4
    タイトルが圧倒的だから利用しないわけにもいかないけどオフゲタイトルがポータルにが紐づけで一蓮托生って部分には完全に納得はしてないな
    GOGで買えるもんはなるだけGOGでってかたちにはしてるけど最近はMODもSTEAMでないとって感じになってきてるからな
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 7:36:50
    >>24
    世界と比べるとPCユーザーがニッチなのは間違いないけど、
    NierAutomataとかダクソ3とかR6S見る限りでは言語単位(Steam Spyとか)で見れば採算余裕のラインであるのも事実だよ

    和ゲーで言うとSteam上での売り上げが、Nierが全世界35万オーバーで日本語は7%(2.45万本)、ダクソ3が160万本オーバーで日本語2%(3.2万本)
    洋物FPSでいうとおま値気味のR6Sでも210万本中2.22%(4.6万本)
    R6Sはおま値の都合上Uplayストアで購入&Uplay登録のほうが安いのにSteamでこれだけの数捌いてる

    日本語=全部日本人とは言わないけど、大半は日本人だと考えるの当然妥当

    PS3/箱〇世代末期の箱〇のメジャーゲーの売り上げ初動4桁常連だったあたり考えれば、こんだけ売れるならPC対応にするメリットも日本語にするメリットもはある
    PS4/箱1世代はハードウェアの仕様上PCに持ってくる垣根は低いしな
    11 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 3:34:23
    俺の好きなStarboundがけなされているようでちょっと残念。
    全体的にはいい話だけど
    0 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 1:55:33
    >>23
    日本においてPCゲー市場は未だニッチなのでな
    ライセンス料とか追加で払ってまで売るべきなのかはよくわからん
    そりゃユーザーとして考えるなら売ってほしいけどな
    9 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 1:09:05
    日本語を抜いた日本産ゲームはたくさんあるけどストアにある以上はたとえ十年前の作品であっても売れ続ける可能性がある事をメーカーはちゃんと認識しているのだろうか

    ふと遊びたくなるような名作は間違いなくある。それを最新のPCで遊ぶ事の愉悦。アクセススピードがはやくなり様々なレスポンスが向上しフレームレートは向上する。

    日本のメーカーはもっと過去資産を有効に生かすという視点をもっても良いように思う
    21 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-22 0:19:10
    >>5
    記事を全部読む>5コメを読む>あれそんな記事あったか?>記事最後に小さく「※本文の内容を一部修正しました。」と書かれている>oh ok...
    17 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2017-06-21 23:25:13
    >>4
    あの頃はメインメモリが1GB~2GBの時代だから、
    余計な常駐ソフト起動させたくなかったんだよな・・・。
    BF2がクソ重くてみんな揃って、メモリ2GBに増設してた時代。
    8 Good
    返信

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