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2017年上半期は、Nintendo Switchのローンチにはじまり、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に対する高評価の嵐、PS4本体の全世界6040万台達成、『モンスターハンター:ワールド』の発表まで、ゲームファンが注目する多くの出来事がありました。そして7月には、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』と『スプラトゥーン2』という2大タイトルがいよいよ発売されます。
こうした目まぐるしいゲーム業界の動向を、ゲームバイヤーたちはどのように見ているのでしょうか? 編集部が過去にも取材した、ゲオのバイヤーである武藤崇史氏と海津祐樹氏に再び話を訊きました。
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■ニンテンドースイッチ発売から4ヶ月、現在の入荷状況は…
――Nintendo Switchの発売から4か月経ちましたが、改めてハードとしての印象はいかがですか?
武藤崇史氏(以下 武藤): 以前のインタビューでもお話したように、Nintendo Switchの品薄状態は、ゴールデンウィーク明けくらいには収まるかと思いましたが、そんなレベルではありませんでした。特に、これまでPS4を所有し、Wii/Wii Uは所有していないユーザーが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を目当てに、Nintendo Switchを購入している印象を受けます。さらに、既存のWii/Wii Uユーザーも『マリオカート8 デラックス』や『スプラトゥーン2』のためにNintendo Switchを購入している事もあり、いまだに品薄状態が続いているのではないかと考えています。
海津祐樹氏(以下 海津): Wii Uなど他のハードと比べても販売のペースが落ちなかったです。しばらくしてこの熱が落ち着くかなと思っていましたが、『スプラトゥーン2』や『マリオオデッセイ』、『モンスターハンターダブルクロス』などの注目タイトルの存在もあり、需要が高いまま推移しています。
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武藤崇史氏
――Nintendo Switchの現在の入荷状況はいかがですか?
武藤: 実際のところ、欲しい人の10人に1人くらいしか行き届いていないのが現状です。ゲオでは抽選販売を行っている店舗もあるのですが、お店に状況を聞くと、いまだに10倍以上の倍率が続いています。需要と供給に関してはバランスが全く取れていないです。この状況は、まだまだ続くのではないでしょうか。
海津: 中古の話ですと、Nintendo Switchを買い取った数が発売週からの同週比較でPS4の10分の1、Wii Uの5分の1くらいで非常少ないです。これから多くの注目タイトルがリリースされる事もあり、現状は中古に戻ってくる数が増えることはしばらくなさそうです。
――『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の買い取りの状況はいかがですか?
海津: 今やっと中古として販売できるようになった状況です。ただ、それでも通常の商品と違って3か月かかりました。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のゲームボリュームと今後配信予定のDLCを加味して、店頭に安定して並べられるほどの数や、お手頃な中古価格で提供できるようになるには、もう少し時間がかかると思います。
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海津祐樹氏
――任天堂の新規IPである『ARMS』の発売前の予想と売れ行きを教えてください。
武藤: 任天堂さんの『ARMS』に対する本気度はわかっていましたが、バイヤー目線では、『スプラトゥーン2』の1か月前に発売するのは心配ではありました。ただ、任天堂さんはしっかりと商品をパブリッシングするので、ゲオとしては安心して発注しました。そして、発注した数量は綺麗に消化し、関連の周辺機器も同時に売れました。ひとつのタイトルとして好調をキープしている状況です。
海津: 中古バイヤーとしては、『スプラトゥーン2』が発売された時、ゲームユーザーは、『ARMS』を所持しつつ、『スプラトゥーン2』を購入するのか、それとも『ARMS』を手放して『スプラトゥーン2』を買うのか、現状では情報が少なくてわからないので、今後どのような動きをするのか注目したいと思っています。
――やはり『スプラトゥーン2』の存在は大きいのでしょうか?
武藤: 若い世代の『スプラトゥーン2』に対する熱量は、少し上の世代の『ドラゴンクエスト』と同じくらいだと思っています。両作は、どちらも7月中に発売するので、7月はゲーム業界として大きく動く事になりそうですね。
海津: ゲオでは、オリジナル特典を付属した『スプラトゥーン2』の限定版の予約受付を7月まで行う予定だったのですが、予約数が多く結局6月中旬で締め切ってしまいました。それなりの数を用意したつもりでしたが、全然足りませんでした。
■『ドラクエXI』はPS4と3DS、どちらが人気?
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――『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が7月29日に発売されます。現状の予約状況やお客さんの反応はいかがですか?
武藤: PS4と3DSの二機種で発売されるので、どちらの商品をどのくらいの割合で発注すればいいのか読みづらかったですね。3DS版を多めに発注したのですが、初回の予約ではPS4版が多かったです。ただ、毎週のように、スクウェア・エニックスさんは『ドラクエXI』の情報を小出しにしているので、それによって予約状況の流れも変わってきています。例えば、3DS版のすれ違い通信要素の詳細が公開された後からは、3DS版の予約が増えました。現在のPS4版と3DS版の割合は、本体同梱版と合わせると5対5です。
海津: 『ドラクエ』は過去もゲーム機本体の売上をけん引した実績があるので、それにも期待しています。
――PS4版と3DS版を同時に予約する人もいるのでは?
武藤: 同時予約をするゲオの会員の比率は、全体の約1割程度で、初動からほとんど変化がない状況です。ただ、今後情報が公開されていくにつれて、PS4版と3DS版の差異がわかって、同時予約する方も増えるのではないかと思っています。
――過去の『ドラゴンクエスト』シリーズについて、何かエピソードなどはありますか?
武藤: 私は、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』の発売当時は、店舗の店長を務めていました。『ドラクエ』を販売する時は、普段より開店を早めるのですが、その日は、朝からお客さんが並んでいて、店舗はお祭りのような雰囲気に包まれていました。今回も開店を午前7時に早めて攻略本などの関連商品も同時に販売する予定です(※一部店舗では7時販売を実施できない店舗もございます)。
海津: 予約していただいているのに、さらに発売日に並んでいただけるゲームタイトルって、そんなにないですよ。やはり世の中を騒がす『ドラクエ』の発売は高揚感があります。
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――『モンスターハンターダブルクロス』の売上が150万本突破しましたが、発売前の予想はいかがでしたか?
武藤: 前作の『モンスターハンタークロス』は、シリーズと比較しても思った以上に長く売れました。今回の『モンスターハンターダブルクロス』もゲオとしては仕入れるだけ仕入れて大成功を収めており、長い期間にわたって売れています。
海津: 前作の『モンスターハンタークロス』と比較しても、中古の戻りが遅い状況で、結果中古価格の下げ幅が圧倒的に遅く、新品も売れ続けています。
――発売から半年以上経っても品薄が続くPlayStation VRの入荷の現状はいかがですか?
武藤: 2017年6月からPS VRの取り扱い店舗を32店舗から63店舗に広げました。消化に関しては地域差が出ています。PS VRを入荷すると、都心部はすぐに完売するのですが、地方では週末にかけて消化されている状況です。また、一部のゲームユーザーからは、PS VRのコンテンツ不足への声があがっているので、SIEさんには、本体の供給とともにコンテンツの強化もしていたただきたいと思っています。
海津: VR専用タイトルだけではなく、『バイオハザード7 レジデント イービル』などのVR対応タイトルが、PS VRの入荷のタイミングで毎回売れます。今後もVRだからこそ良いと感じるVR対応タイトルがリリースされて欲しいですね。
――PS4の上位機種であるPlayStation 4 Proの売れ行きはどうですか?
武藤: 正直なところ、初めに考えていた需要よりはるかに上でした。初動の売上も高く、入荷されたらすぐに消化されるという状況がしばらく続きました。4K画質でゲームをプレイしたいユーザーはもちろん、将来的に4Kモニターを買おうか検討しているユーザーにも需要があったのかと思っています。当社のPS4本体購入者のうち、15~20%がPS4 Proを購入しています。今は供給も安定しましたが、PS4 Proの本来の需要は、4K対応のゲームタイトルがこれから充実する事でさらに高まるのではないでしょうか。
海津: 中古のPS4 Proの供給もやっと安定していて、ゲームユーザーの環境やスタイルに合わせて、通常のPS4を買うか、PS4 Proを買うかという選択ができるようになりました。
――PS4 Proは、どのようなユーザー層が購入しているのでしょうか?
武藤: 性能が良くなるなどのメリットもあるので、PS4からPS4 Proに買い替えるユーザーが結構多いです。また、幅広い年齢層にも売れています。
■ゲームバイヤーがE3で最も注目したことは?
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――6月にE3 2017が開催されましたが、バイヤーとして注目したタイトルはありますか?
武藤: やはり注目したのが『モンスターハンター:ワールド』です。これは僕らも全く知らされてなかったので、驚きと共に期待感がすごく高まっています。世界的には超メジャーなシリーズではなかったと思ったのですが、カプコンさんによると世界に持っていく位置づけと聞きましたので、そこにも期待したいところです。SIEさんのタイトルだと、オープンワールドアクション『Marvel's Spider-Man』。ゲオとしてもレンタルなどとクロスメディアが出来るかなと思っています。そして、レベルファイブさんのRPG『二ノ国II レヴァナントキングダム』は、日本国内より海外での注目度が高いので、海外での評判によって日本でも売れて欲しいです。また、任天堂さんの『スーパーマリオ オデッセイ』の発売日にも注目しました。年末発売かと思ったら海外のホリデーシーズンに合わせて2017年10月27日に発売となり、Nintendo Switchの売上がますます伸びていくのではないでしょうか。
海津: ここ数年のPS4のタイトルに言えることなのですが、日本国内で広く認知されているものだけが売れるわけではありません。例えば、『ウィッチャー3 ワイルドハント』や『レインボーシックス シージ』、『ゴーストリコン ワイルドランズ』などのハイクオリティな海外タイトルは、日本国内でも売り上げが好調です。先ほどの『Marvel's Spider-Man』にもそれを期待したいです。
――PS4版が安定して売れ続けている『Grand Theft Auto V』について、何かエピソードなどはありますか?
武藤: 海津が『GTA V』の発表会を見に行った時に、「これは絶対今までのGTAシリーズよりも売れる」と言っていたのですが、実際にその通りでした。現在も新品中古ともに売れ続けています。さらに、PS4本体と一緒に購入するタイトルの選択肢として、『GTA V』が挙げ続けられているのも驚きです。
――そういえば、イギリスソフトウェアセールスチャート(6月24日終了週)で『Grand Theft Auto V』がトップになりました。
武藤: 我々からするとこれは不思議ではない現象だと見ています。それほど『GTA V』はクオリティもゲームボリュームも他のゲームと比べて抜きん出ています。
海津: アップデートやDLCが持続的に配信されている事も要因ではありますが、やはり『GTA V』には、それだけのポテンシャルがあると考えます。
――「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」が発表されましたが、バイヤーとして期待していることは何ですか?
武藤:「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」より、スーパーファミコンの方がよりユーザー層が広いと思います。昔ゲームで遊んでいたけれど、今はもう卒業した方、あるいはスマートフォンゲームで十分となっているユーザーに対して、もう一度コンシューマーゲームを触れて、興味を持ってもらうきっかけになって欲しいです。また、「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」は、需要に対して供給不足のまま一旦の生産終了となってしまったため、今回は初回から大幅な増産を期待しています。
――本日はたくさんのお話、ありがとうございました。
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(編集・撮影 by riot_兄 / テキスト by 真ゲマ)