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本記事では、『シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー アルティメット・エディション』宣伝のため「東京ゲームショウ 2017」に参加していた、同作開発WayForwardのディレクター、Matt Bozon氏夫妻に行ったインタビューをお届けいたします。
――まずは簡単に自己紹介をお願い致します。
Matt Bozon氏(以下Matt):私はMatt Bozon、WayForwardでディレクターを勤めていて、『シャンティ』シリーズのディレクターでもあります。
Erin Bozon氏(以下Erin):Erin Bozonです。『シャンティ』シリーズのキャラクターデザイナーです。また、Mattと共にゲーム開発にも関わっています。
――『シャンティ』のお母さんですね。
Erin:はい、彼女は私達の最初の子供です(笑)。
――『シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー』の概要について簡単に教えて頂ければと思います。
Matt:シャンティはスカットル・タウンの守護者のハーフ・ジーニーの女の子で、海賊リスキィ・ブーツを始めとした様々な悪役に立ち向かっていきます。最後にはそれらの戦いが大きな物語に収束するかたちです。今回の物語は、シャンティが悪役と戦う本編、海賊リスキィ・ブーツの物語、そしてシャンティの友人たちの活躍を描く物語の各DLC(筆注:アルティメット・エディションには全て収録)が物語の一部になっていて、全てつながっているかたちです。マトリョーシカのような構造だと思ってもらえば分かりやすいかもしれません。
――『シャンティ』は歴史の長いシリーズですが、本作から初めてプレイしても楽しめるでしょうか?
Matt:前作までの物語はトリロジーとして一旦完結しており、『シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー』は新章となっているので、新しいユーザーでも問題なく楽しめる、良い開始点になっています。
Erin:今回の物語はシリーズに入っていくのに良い作品で、ここから過去作をプレイするのもいいと思います。『シャンティ』のファンはコレクターが多いので、レアなゲームボーイカラー版の初代作品を所有している方も多いんです。
――『シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー』のどのような点が一押しでしょうか?
Matt:『シャンティ』の魅力はアニメーションのほうが比重が大きいと思うので、ここはErinに答えて頂きましょう。
Erin:今作で面白いところについて話しますと、シャンティはいつもジーニーの衣装を着ていますが、忍者や水着、スペーススーツなど、様々な可愛い衣装でプレイできるのです。2017年内完成予定のこの要素はKickstarterのストレッチゴールで実装されるもので、『アルティメット・エディション』には勿論収録されていますので、彼女の可愛いコスチュームを楽しめます。基本的な部分だと、シャンティの髪を使った攻撃や、変身のためのダンスなど可愛いアニメーションがファンから好評です。
Matt:BGMもゲームの魅力です。動物に変身すると違う特殊な効果音が流れたりもします。また、物語も魅力的に仕上がっています。
――アクションゲームとしてはどうでしょう?
Matt:『シャンティ』のアクションは、『ドラキュラ』や『ロックマン』や2D時代の『ゼルダ』など様々なレトロゲームに影響を受けています。
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――本作はKickstarterでのクラウドファンディングから考えても2013年から開発と、アクションゲームとしてはかなり長期開発の印象があります。開発中に苦労した点などを教えてください。
Matt:Kickstarterでは想定していたより遥かに資金が集まり、ゲームの規模が大幅に拡大してしたのです。実のところまだDLCも出揃っていないので鋭意開発中といった所です。
Erin:Mattはクオリティに厳しくて、早く出したくても完璧になるまで作り込んでいたので、それも時間がかかった理由です。
Matt:Kickstarterで支援してくれたユーザーたちは本当に素晴らしくて、きちんと本作の発売まで待っていてくれました。休まずに開発していたので、待った価値のあるゲームになっていたら嬉しいです。
――実は私もその一人です。
Matt・Erin:おお、ありがとう!(笑)。
――本作では過去作の「変身」要素が復活していますが、お二人のお気に入りの「変身」は何でしょうか?
Matt:“グローブフィッシュ”です。アレのデザインは面白いので誰でも楽しめると思います。他にもErinを始め、みんなに人気があるのは“猿”ですね。後、やはり変身の魅力もアニメーションの比重が大きいのですが、今回魅力的なのは“蜘蛛”と“人魚”だと思います。DLCだとリスキィには変身能力はありませんが、その分帽子などのアニメーションに力を入れています。
Erin:他にもアンロックできる、リスキィの可愛い水着姿なども魅力です。
Matt:すぐに発表になる、この先のDLCでのシャンティの友人たちのアニメーションにも期待してください。
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――本作のメインビジュアル担当は『海賊の呪い』から引き続き、日本のイラストレーターのKOU(矢部誠)さんですが、キャラデザインの雰囲気は等身高めだった『海賊の呪い』と異なり、比較的カートゥーン方向のデザインになっています。これには意図があったのでしょうか?
Matt:今回は前作と違うフレッシュな雰囲気にしたかったのです。実は2年前にTGSで『海賊の呪い』のプロモーションでKOUさんとお会いしたのですが、その際に『ハーフ・ジーニー ヒーロー』はこのようなデザインの方向性で行きたい、と話しました。「線の太いポップな感じで」と。その際に彼に「違うスタイルで大丈夫ですか?」と聞いたら快諾して頂けたので、そこから『ハーフ・ジーニー ヒーロー』のデザインが始まりました。
Erin:私は『ハーフ・ジーニー ヒーロー』のデザインがいちばん好きですね。
Matt:KOUさんのキャラクターデザインは本当に綺麗で、凄く良いと思います。
――シャンティのオリジナルキャラクターデザインはErinさんが担当されています。彼女を作る時に大変だったことなどはありましたでしょうか?
Erin:最初はそこまで大変ではありませんでした。「ハーフ・ジーニーのキャラ」というイメージが先にあって、そこから彼女がどんな攻撃方法を使うのかという話になったときに、「銃や刀でなくて、髪で戦うと面白いのでは」とMattが考えました。その後、私がダンスと動物が好きなので、その要素を入れた結果、彼女のダンスによる変身能力が生まれました。前は虎などを変身要素に入れたかったのですが、取り入れられず、今は猿や象などが主体になっています。私はシャンティのみの造形をメインに、Mattは彼女がどのような世界に住んでいるのかといった世界観や、その他のキャラクターなどを担当しています。
Matt:言ってみれば、私の世界観にErinのシャンティが綴じられている様な感じです。
Erin:Mattは本当に優秀なライターで、彼のユーモアと物語が『シャンティ』の世界を形作っています。
Matt:シャンティの変身についてですが、Erinが可愛らしい猿や象、私が人魚やハーピーなどの“モンスター娘”の姿を担当しています。
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――先日ボークスから、シャンティの『ハーフ・ジーニー ヒーロー』版のガレージキットが発売されています。海外ゲームのヒロインが、日本の商業メーカーのキット化というのはかなり珍しい印象ですが、どのような経緯で実現したのでしょうか?
Matt:私達は以前から彼女のフィギュアが作りたかったのですが、クオリティの良いものがほしかったので、アメリカより日本のメーカーに作ってほしかったのです。そんな時、アニメエキスポ(アメリカで行われる大規模なアニメ・ゲーム系イベント)でボークスの『ぷよぷよ』や『ディスガイア』のフィギュアを見て非常に良いと思ったので、オファーをしてみたら喜んで請けて頂けたのが切っ掛けです。
Erin:ボークスから上がってきた製品化前の3Dモデルがほぼ完璧で、殆ど修正する部分がなかったことにビックリしました。ポーズもバッチリだったのが嬉しかったです。
Matt:本当は日本のコアファンが『シャンティ』に何を求めているのか知りたいのです。
Erin:例えば、「リスキィ・ブーツやロッティトップスのフィギュアも欲しい!」とか、「『シャンティ』のアニメや漫画が欲しい!」とか。
Matt:私達は本当に日本のファンの声が聞きたいと思っています。
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――どういったところからファンの声を送れば良いでしょうか。
Matt:WayForwardは勿論、私個人のTwitterアカウントでも全然大丈夫です。とにかく声を掛けて欲しいなと。インターグローさん宛てでも構いません。Twitterにファンアートを上げている方もいますが、それを見ると1日幸せな気分で過ごせます。
――場所はどこでも良いから、とにかく声が聞きたいという感じですか。
Matt:はい。いつも私たちはSNSなどでファンの声を探しているので、もっと書いてくれればと思います。
Erin:私はコスプレが大好きなので、自分のキャラクターがコスプレされるのが夢でした。もっと色々なコスプレが見たいです。今までシャンティやロッティトップスなどをWebで見ました。他にも、もっと色々なものをアップロードしてくれると嬉しいです。
Matt:実は、私達WayForwardは同様に、YouTubeやTwitchでの配信を見るのが大好きです。ゲームがリリースされると、プログラマー達がモニターで、プレイヤーがどのようにゲームをプレイしているのかを確認しています。
――そうなると、フィギュアの次の展開などはまだ未定という感じですね。他にも例えばボークスだとドルフィードリーム(筆注:60cm大の球体関節人形)とか。
Matt:(シャンティの長い髪の毛を梳かすジェスチャーをしながら)ああ、ドルフィードリーム!先程も言った通り、私達はファンがどのようなものを欲しているのか知りたいのです。それこそ長い髪のドールとかね。
――他にもグッズの話題ですが、先日Udon社からシリーズのアートブックが発表となっています。これについては日本発売の予定などはありますでしょうか?
Matt:未定ですね。ただ可能性はあると思います。Udon社に確認して可能であるならば、ぜひやりたいと思っています。
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――『シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー アルティメット・エディション』が発表になったばかりのところに気が早い質問ですが、『シャンティ』の新作や、『シャンティ』キャラの登場する別のタイトルなどの予定は今後あるのでしょうか?
Matt:まだ詳細は発表できませんが、実は『シャンティ』キャラの他作品とのコラボが決定しています。正式発表は何ヶ月か後になると思いますが。『ブラスターマスター ゼロ』にもシャンティが登場していますが、ああいうコラボは、相手のゲームのクオリティ次第ですがまたやりたいです。
新作ですが、作るとしてもまずはKickstarterの残りのストレッチゴールを完成させてからですね。もし次作を作る場合は、WayForwardの社長の考えでは、『ハーフ・ジーニー ヒーロー』と同じスタイルか、3Dゲームになるのかなと思っています。社長はVRがすごく気に入っているので、もしかしたらVRタイトルになるかも知れません(笑)。
――最初の方で少し話題が出ましたが、ゲームボーイカラー版の初代『シャンティ』を日本でも何かの形で遊べるようにする計画などはありますでしょうか?(筆注:海外では3DSバーチャルコンソールにて再販されている)
Matt:残念ながら、今のところは予定はないですね。リメイクも検討はしたのですが、1からのコーディングという形になってしまうので時間も掛かってしまい、難しいところです。ですが、本当に日本でリリースしたい気持ちです。可能であればニンテンドースイッチのバーチャルコンソールで出せたら、とも思います。頑張ります。
Erin:日本でも初代『シャンティ』のファンが意外といて驚きます。結構レトロで難しいタイトルですけれども。
Matt:難しいゲームは良いゲーム、という時代でしたので。
――『ハーフ・ジーニー ヒーロー』は勿論遊びやすくなっているのでしょうか?
Matt:はい。レトロなファンからは「簡単すぎる」とも言われましたが、そのようなファンのために“ハードコアモード”を用意しています。このモードは、単に敵のダメージや数、HPが増えるだけでなく、ボスの行動パターンや敵の出現位置なども変わっていて、難しくて面白いものになっています。
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――最後に、日本の『シャンティ』ファン、これからファンになるだろうユーザーに向けてコメントをお願いします。
Matt:最初に言いたいのは、ありがとうございます。アメリカ人が作った、この日本のアニメ風のゲームをプレイしてくれて、興味を持って頂いたことに感謝しています。日本でゲームを出すのも夢でしたので、ここに居られることも最高に嬉しいです、重ねてありがとうございます。
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インタビュー外での発言ですが、実はErin氏の方は今回が初来日とのこと。TGS前にも日本観光をたっぷり楽しんでいたようです。また、『シャンティ』のアニメ化を行うなら、どの日本のスタジオが良いか、などといった話題でも盛り上がり、お二人とも日本のサブカルチャーへ深い造詣を見せていました。
そんなBozon氏夫妻が手がける『シャンティ:ハーフ・ジーニー ヒーロー アルティメット・エディション』は、2018年春にPS4/ニンテンドースイッチにて、全てのDLCを含んで発売予定です。