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1999年12月29日、セガが世に贈り出したドリームキャスト専用ソフト『シェンムー 一章 横須賀』。発売当時は、ゲームの開発費に数十億円が使われたとして世間の注目を集め、セガならびにドリームキャストの命運をかけたタイトルとして扱われていました。そのクオリティは、国内外のメディアはもちろん、ゲームユーザーからも高い評価を受けています。しかし、ドリームキャストの撤退によって、シリーズは2001年9月6日に発売された『シェンムー2』を最後に沈黙。後にスピンオフ作品がいくつか展開されますが、正式な続編はリリースされませんでした。
その後、10年以上の時を経て待望の最新作『シェンムー3』が同シリーズの生みの親である鈴木裕氏より発表。『シェンムー』が再び世界中から脚光を浴びる事になります。
そんなシリーズ第1作目『シェンムー 一章 横須賀』は、タイトル通り神奈川県横須賀市が舞台です。同市観光企画課では、『シェンムー』の人気再燃を機に「シェンムー 一章 横須賀 聖地巡礼ガイドマップ」を2017年12月3日より配布しています。それには、同作のプレイ経験がある人なら思わずニヤリとしてしまう内容が綴られているのです。
そんな『シェンムー』グッズとして高いクオリティを誇り、ファンなら思わず手に取りたくなる、このガイドマップが如何にして作られたのか、当編集部は横須賀市観光企画課にメールインタビューを敢行しました。
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――このガイドマップが作られた経緯を教えていただけますか?
当市観光企画課では、観光集客事業の一環として、アニメ、漫画、ゲームなどサブカルチャーコンテンツとのコラボをはじめとした取り組みを行っています。ゲームとのコラボでは『Ingress』『Pokemon GO』『World of Warships』などと協力し、イベントを行ってきました。
その中で、『シェンムー』一章の舞台が横須賀であったことから、かねてよりコラボの機会がないかと模索していたところに『シェンムー3』の制作が決定。その大変な盛り上がりを見て、聖地巡礼マップを制作することとなりました。
マップに使用しているゲーム内画面などは担当二人でプレイしながら撮ったもので、実際の写真と似たアングルで撮影するのに苦労しました。朝起きたらフォークリフトレースが始まってしまったりして、クリアした後も何度もプレイし、今ではすっかり涼のファンになってしまいました。
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――横須賀市では、このガイドマップが至る所で配布されているそうですが、観光客や『シェンムー』ファンからの反応はありましたか?
配布初日は多くのお客様にお越しいただきました。印象的なのは、初日から外国人の方が多いことでした。また、全国各地からマップの問い合わせをいただいており、郵送でお渡ししてります。さまざまなマップを作成してきましたが、ここまでお問い合わせをいただいたのは初めてのことです。
また、ドブ板通り商店街の掲載されていない店舗から問い合わせがあったり、メディアで取り上げていただけたことに対して喜びの声をいただいております。
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――ドブ板通りのお店の紹介コーナーでは、ゲームと現実のお店が一緒に紹介されていてとても面白い試みだと思います。今回ガイドマップで紹介されていた以外に『シェンムー』ファンに紹介したいお店はありますか?
ご存知の通り、発売されてから15年以上も経ってしまっておりますので、当然街並みや商店も当時のままとはいきません。残念ながら廃業されたお店も多く、もっと早くに作成できていたなら…と思う気持ちもあります。ですが、昼と夜の表情ががらりと変わるドブ板通りの独特の雰囲気は変わっておらず、ぜひその変化も含めて街ごとの空気を楽しんでいただけたら、と思います。
――担当者の方は『シェンムー』をプレイした事はありますか?プレイしているならゲームで印象深い思い出はありますか?また最新作『シェンムー3』について期待することがあるなら教えてください。
もちろんプレイしました。香港編もです。横須賀編では街行く人々の「生きている感」に感動し、電話番号の市外局番までちゃんと横須賀のものであるという細部までのこだわりに感動し、毎朝のフォークリフトレースではNo.5のフィギュアを何度もらったかわかりませんが、それも楽しくて仕方がありませんでした。終わった頃には、シェンムーの中の横須賀が実際に存在しているような気持ちになりました。
『シェンムー3』については、香港編の最後で大きくストーリーが動きそうだったので、涼の旅がどう進んでいくのか待ち遠しくて仕方がありません。そして早く横須賀に帰ってきてほしいです(笑)。
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――ガイドマップには『シェンムー』の雰囲気を味わえる場所が紹介されていますが、その中には時代の流れによって雰囲気が変わってしまったところもあると思います。ゲームの舞台である1986年代の横須賀市がわかる資料などはありますか?
残念ながらしっかりとした資料があるわけではなく、観光企画課では当時の写真が何枚かあるだけです。
――『シェンムー』の主人公である芭月涼が住んでいた桜ヶ丘~山の瀬エリアは住宅街ということですが、聖地巡礼をするにあたって気をつけることはありますか?
こちらで紹介しているエリアには、シェンムーに出てきている具体的なモデルとなった住宅が登場しているわけではありません。個人宅の撮影などプライバシーの侵害になる行為はご遠慮いただき、その場所の雰囲気を楽しんでいただければと思います。
――ドブ板通り付近でオススメのゲームセンターはありますか?
残念ながら「ゲームセンターYOU」のようなゲームセンターはありません。ですが、サブカルチャーに特化したカフェなど新たな「YOU」が誕生していますので、そういった新たなスポットも発見していただければと思います。
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――ガイドには「ドブ板通りから倉庫街まで2分で到達する事はありません」という『シェンムー』プレイヤーなら思わずクスッと笑ってしまう記述がありましたが、これはセガの担当者が考えたものなのでしょうか?
セガ様にはすべて目を通していただきましたが、ガイド内の文章はすべて当市担当者が考えたものです。実際にゲームをプレイ中に「この距離は2分で行けるわけない!」と突っ込みを入れながら何度もやり直しをしたので、プレイヤーの皆さんとその気持ちを共有したいと思い考えたものです。
――まず、横須賀市を散策する前に、このガイドマップがほしいという『シェンムー』ファンの方も多いと思われますが、ガイドマップの郵送はしてくれますか?その際の郵送料などを教えてください。
日本国内であれば郵送でのお渡しをしております。原則一人2部までとさせていただいております。郵送料は無料です。直接観光企画課までご連絡ください。
問い合わせ先
横須賀市経済部観光企画課
046-822-8124
(平日9:00~17:00)
郵送でのお渡しも可能です。お問い合わせください。
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――このガイドマップを通じて『シェンムー』ファンに興味を持ってほしい事はありますか?
シェンムーに登場した場所だけでなく、「もしかしたら涼も行ったに違いない」というような場所を探して、周辺の観光地にも注目していただきたいと考えています。マップ裏面でも紹介していますが、ヴェルニー公園は当時「臨海公園」として親しまれていましたし、三笠公園も当時から復元された三笠が設置されていました。子供の頃から親しみのある公園だったに違いありません。
また、倉庫街の食堂の壁には「海軍カレー」のメニューがあったと記憶しております。涼が食べたかもしれないご当地メニューにも目を向けて楽しんでいただき、横須賀の街に親しみを感じていただけると嬉しいです。
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――これからこのガイドマップを読んで横須賀市を探索しようと思っている『シェンムー』ファンに向けて何かコメントをどうぞ。
くりかえしになってしまいますが、やはり年月の流れとともに、シェンムー一章のゲームの中の横須賀と現在では変わってしまったということは否めません。それだけの歴史のあるコンテンツが今もなお求められてやまないことに敬意を払いながら、今ご紹介できるスポットはできるだけ掲載いたしました。ですが、場面を一枚の絵として切り取ってみると、ここも似ている、あそこも似ている、という風景はまだあちこちにあります。プレイヤー一人一人の記憶と愛着というフィルターを介して、今再びシェンムーの中の横須賀へ旅していただけたらとても嬉しく思います。少し遅くなってしまいましたが、英語版の配布もまもなく始まります。さらに多くのファンの方にお越しいただきたけたらと思っております。
――この度はインタビューに応えてくれてありがとうございました!