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2017年2月23日にスクウェア・エニックスより発売された、アクションRPG『ニーア オートマタ』。異星人の侵略によって人類が月へと追われた未来の地球を舞台に、地球の奪還を目指すアンドロイドたちの激闘を描き、全世界200万本以上のヒットを記録。アンドロイドと機械生命体たちが織りなす切ないストーリーはもちろん、吉田明彦氏のデザインした魅力的なキャラクター、岡部啓一氏による物語の随所に散りばめられた美しいBGMが評価され「PlayStation Awards 2017」では「ユーザーチョイス賞」、「Gold Prize」を受賞している作品です。
ゲーム以外にも舞台化やカフェコラボなども行われ、発売から1周年をむかえても衰えることのない人気を博している本作について、ゲームをプレイした編集部員たちが熱い思いを語り合いました。ネタバレ全開ですので、閲覧の際は十分ご注意ください。
今回の座談会メンバーは以下の通り。
・山崎:『ニーア オートマタ』のためにPS4を購入した編集長。「A2」が好き。
・カミヤマ:スマホ、コンシューマ問わずなんでもプレイするライター。「9S」に愛を注ぐ。
・いなざわ:社内のエンジニア。『ニーア オートマタ』トロコン済み。「A2」が好き。
ヨコオタロウ作品の思い出
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山崎:
というわけで、語っていきましょう!その前に、みなさんはヨコオタロウさんの手がける作品はどれをプレイされていますか?僕は、PS2の『ドラッグ オン ドラグーン』(以下DOD)が最初です。CMでばったばったと敵をなぎ倒すバトルシーンがめちゃめちゃおもしろそうで。当時は王道なゲームばかり遊んでいたので、狂ったストーリーや演出に驚かされました。『DOD』シリーズは3までプレイしています。前作はPS3『ニーア レプリカント』をプレイして、『DOD』とは異なる切なさ──特に2周目から敵の声が聴こえる展開に、悲しい気持ちになりながら進めていました。
いなざわ:
僕も初代『DOD』からプレイしていて、前作はおっさんのキャラクターに魅力を感じて、Xbox 360『ニーア ゲシュタルト』を選びました。『オートマタ』は釣りのトロフィーだけ買ってしまったのですが一応100%コンプリートしています。最後の最後までやったのは『オートマタ』が初めてでした。『DOD』は音ゲーが苦手でクリアできず、ゲシュタルトでは存在を消すという選択肢が選べなかったんです。。
山崎:
僕も『DOD』、『DOD3』はラスボスに何度も挑戦して勝てなくて。音ゲーが得意な友達にプレイしてもらってようやくEDを見ることができましたよ(笑)『レプリカント』では、がんばってやってきたデータを消すのはとても衝撃的でした。しかも、それがちゃんとストーリーに組み込まれているのもすごいですよね。
カミヤマ:
『DOD』シリーズは1~3、『ニーア レプリカント』、「9S」のピックアップ目当てで『SINoALICE -シノアリス-』もプレイしました。無事に引いてからは、ずっと9Sがトップにいてとても幸せです。『DOD』の音ゲーは、ゲーム画面を何度も止めて、その間に「白・黒・黒・白……」とメモをしてクリアしましたね(笑)。レプリカントでは、えいやっとデータを消しました。
山崎:
消した後、すごい虚無感に襲われますよね(笑)。
いなざわ:
そう言えば座談会をやっているこの場所も、『DOD』のエンディングと一緒の場所ですね。
※インサイド編集部は新宿にオフィスがあります。
山崎:
ホントだ!聖地だ!
2B、9S、A2の誰が好き?
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山崎:
『ニーア オートマタ』は操作できるキャラクターが2B、9S、A2といるわけですが、皆さんは3人の中だと誰が好きですか?
カミヤマ:
私は、9Sですね。自分のゲーム史上、ベスト10に入るぐらいの大好きなキャラクターです。
山崎:
やはり9Sは女性人気が高いのですかね。
カミヤマ:
どうでしょう?私は1週目の飄々とした雰囲気と、2周目以降に見せる機械でありながら人間らしい、むしろ激しい感情を吐露するキャラクターであるというギャップが響きました。
山崎:
確かに。最後にA2と戦う時の、「なんでこんなに人間が恋しいんだ!」という壊れているけれど人のぬくもりを求めるセリフはぐっときました。腕がもげたりして叫ぶシーンもすごかったですね。
いなざわ:
僕も『ニーア オートマタ』をプレイするまではそこまで花江夏樹さんについて詳しくなかったんだけど、3週目以降の感情をぶつけてくる演技がすばらしくて、一気に好きになりました。
カミヤマ:
9Sは、ゲームを進めるにつれてどんどん好きになるキャラクターでしたね。
いなざわ:
真相にたどり着くのも9Sですしね。
山崎:
そして優秀すぎて毎度2Bに殺されちゃうし……色々とんでもないです(笑)。
いなざわ:
3人の中だと、僕はA2が好きですね。最初の少し冷たいイメージと、操作キャラクターになってからの印象がガラッと変わり、ポッド042との漫才みたいなコミカルな掛け合いが楽しかったです。
山崎:
僕もA2が好きなんですよ。長い髪の頃が特に最高でした!でも操作できるようになってばっさり切っちゃうじゃないですか。「なんで切るんだよ!」って思ってたんですけど、設定資料集の中でヨコオタロウさんが「(2Bへの)追悼の意味」って答えてて。じゃあしょうがないなって納得しました。
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カミヤマ:
そんな意味があったんですね!
いなざわ:
A2は、アクションモーションにも挑発ポーズや、バーサーカーモードがあってかっこよかったですね。2Bも可愛いし好きなんですけど、選べと言われるとA2ですね。
山崎:
もちろん僕も2B好きですよ!たまたまこの座談会の前日に友達の女の子と飲んでたんですけど、2Bの目隠し・ゴシックテイストの衣装・ピンヒールに刀!なビジュアルがとてもかっこよくて大好きだと言っていましたね。
9Sを操作してるときに受注できるクエストで「美人の頼みだからってサービスしすぎ」って2Bがムっとしてるところとか、9Sが「ナインズ」って呼んでって言うけど頑なに2Bが拒むじゃないですか。ストーリーが進むと「ナインェズ」っておずおずと呼ぶところとか最高に可愛いですよね。感情を持つことを禁止されていると言いつつも、2Bもなんだかんだ人間くさい。
いなざわ:
後半のほうで水没都市にいくと2Bから9Sに向けてのメッセージが聞けるんです。「君と過ごした日々は光のような思い出だった」って。しかもその中でちゃんと「ナインズ」って呼んでるんですよ。
カミヤマ・山崎:
泣ける……。
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いなざわ:
まさか、ウイルスに侵されて途中退場するとは思っていなかったですね。
サブキャラクターは誰が好き?
カミヤマ:
メインキャラも魅力的ですけど、サブキャラクターでは誰が好きでした?
山崎:
サブキャラも魅力的なのが『ニーアオートマタ』の素晴らしいところですよね。僕はオペレーター21Oさんが9Sに「殺シテ……」というシーンがやばいなと思いました。「9Sとイッショに……いたくて……」って……。あんなにクールな感じだったのにホントは胸に秘めたる想いがあったんですよ。
カミヤマ・いなざわ:
泣ける……。
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山崎:
9Sは目の前で大切な人を2人も殺されているので、そりゃ狂ったりもしますよね。
いなざわ:
「いま……殺すからッ!!」って花江さんの演技もかなり悲壮感があってよかったなぁ……。僕は、2Bのオペレーターである6Oが好きでした。お花の写真を送ったらよろこんでくれたり、恋愛相談をしてきたりと、可愛らしい部分が目立ちましたよね。もうほんとに女子!って感じで。
カミヤマ:
私はパスカルが一番好きでした。悠木碧さんの声も温かみがありましたし、「守らなくちゃいけない子供達がいるんだ!」って、エピソードとしても印象深かったです。それで子供達のいる部屋に戻ったら自殺してて……。自分が教えた知識や「恐怖」のせいで子供達がそんな選択をしたかと思うとやり切れないですよね。
山崎・いなざわ:
泣ける……。
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山崎:
泣けるところだらけの『ニーアオートマタ』ですが、あそこは屈指のシーンですよね。その後に出る選択肢では、僕は殺せなくて記憶を消すのを選びました。
カミヤマ:
記憶を消す時のハッキングもパスカルと子供達の思い出が流れてきて、涙で前が見えませんでした。
いなざわ:
僕は何もせずに立ち去りました。多分、一番選んではいけないやつだと思うんです。パスカルに「恨みます」って言われるし……。記憶を消すとパスカルの村に戻ってきてますけど、その時に売ってくれる商品って村人のパーツなわけですよね。う~ん、切ない。
カミヤマ:
いままで優しかったパスカルが「殺してやる!」なんて暴言を吐くのも含めて記憶に残っています。工場廃墟で行われたエンゲルス同士のバトルシーンにも迫力がありましたよね。スピード感のあるバトルが中心のオートマタで、超巨大ロボットがぶつかり合う姿は圧倒的な存在感でした。
山崎:
サブキャラと言えば忘れてはいけないのが前作から登場するデボルさんとポポルさんですよね。
いなざわ:
前作を知っていると、ちょっと怪しいなと身構えてしまいますよね。ゲーム後半になっていくとそうした気持ちは薄れていきましたが(笑)。
山崎:
メインストーリーの合間にサブキャラクターたちのエピソードも描かれて、デボルさんとポポルさんは、同型モデルの昔の行いから蔑まされて放浪して……みんな物悲しいところがありますよね。
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カミヤマ:
そうした悲しいことや重たい出来事がありつつ、ラストでしっかりと救いのあるエンディングを描いていて、後味はとてもよい作品だったと思います。
山崎:
パーツをポッドたちが集めて再構築して、「生と死を繰り返す螺旋に囚われ続けている」ってゲーム冒頭に2Bが、Eエンドではポッド153が語っていましたけど……きっと抜け出してくれると思ってしまいますよね。
ストーリーもバトルもBGMも忘れられない!
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山崎:
その他、ストーリーの中で印象的なエピソードはありますか?
いなざわ:
サルトルとボーヴォワールのエピソードですね。ボーヴォワールはサルトルに憧れ、美しくなるためにアンドロイドを食べるという噂にのめり込んでいく。2Bルートではわからなかった真実が9Sルートで語られるのは、前作にあった「カイネだけ敵の声が聴こえる」ことを思わせます。
山崎:
確かに、サルトルとボーヴォワールの話もよかったですね。遊園地は初めて訪れたときの映像と音楽が印象的でした。しかし、カイネはどんな思いで戦っていたんだろう……。
カミヤマ:
それを考えるととても切ないですね……。私が印象に残っているのはやはりEエンディングの弾幕シューティングです。だんだん音が増えていくBGMと、これまでプレイしてきたユーザーの思いが集約されてき、自分たちの手で未来を勝ち取りたいという気持ちになりました。スクウェア・エニックスというロゴが出た辺りから弾幕が激しくなるので、何度も「スクウェア・エニックスめー!」と思いながらリトライしました(笑)。
山崎:
あれって、オンラインに繋がないと他のプレイヤーに助けてもらえないんですよね。僕は夜中の3時ぐらいまでずっとオフラインでやっててクリアできなくて。何度も「オンラインに繋いでください」とアラートが出ていたのですが、パスワードとか入れるのが面倒で無視して挑戦し続けましたがお手上げでした。
翌朝オンラインに繋いでプレイしたら、「そういうことか!」と。繋いだ途端にBGMにコーラスが入って、みんなから各国の言葉で励ましてもらえて、ゲームで泣いたのは『Kanon』や『Air』ぶりぐらいでしたよ。
いなざわ:
あと印象的だったのは、Bエンドが終わった後の次回予告のような映像がよかったですね。ヨルハ部隊が感染していて、続きがどうなってしまうのと。
山崎:
僕の周りには「ハッキングがめんどうで……」って言って1週目でやめちゃってる人もいるんですけど、ホントもったいないですよね。
カミヤマ・いなざわ:
もったいない!
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カミヤマ:
『レプリカント』から劇的に進化した部分としては、バトルがありますね。
山崎:
すごく爽快感があって、武器の組み合わせでバトルの方法も変わりますし、一撃必殺のような技も気持ちよかったですよね。攻撃を受ける直前で回避が成功したときのモーションや、□ボタンと△ボタンで様々な攻撃が気持ちよく繰り出せる。このあたりはさすがプラチナゲームズだなと。
いなざわ:
あとは、細かいアクションにもこだわりが感じられました。2Bの場合、待機モーションやポッドをなでたり、大剣で攻撃した後にくるくる回る動作も芸が細かくて好きでした。
カミヤマ:
私はキャラクターによってハシゴを登ったときのアクションに個性が出ていて、作り込まれているなと感じました。もういくつでも『ニーア オートマタ』の魅力は語れますね。
いなざわ:
音楽もすばらしかったですよね。僕はお気に入りの曲が2曲あって、後半のイベントで流れる泣ける曲「曖昧な希望 -氷雨-」と、コウシ・ロウシ戦の楽曲「双極の悪夢」。後者は視点が切り替わりながら戦う演出と合わせて、この曲がかかるとめちゃくちゃテンションあがりましたね。
山崎:
僕は、可愛くてのんびりできるパスカルの村の曲「パスカル」。狂った宗教のところで流れる「生マレ出ヅル意思」で「カミニナル、カミニナル、ミンナ シンデ カミニナル」というコーラスが耳から離れません。
いなざわ:
気付いたら口ずさんでますよね(笑)。
カミヤマ:
私はバンカーでかかっていた「意味」が好きでした。モノクロで描かれるバンカーの雰囲気も落ち着きがあって、還る場所という気がしました。去年に発売された「NieR:Automata Arranged & Unreleased Tracks 」は聞きました?人気曲をアレンジしていたり、サウンドトラック未収録の曲もあるので必聴ですよ。
いなざわ:
いまamazonで売っていたのでポチりました。
山崎:
BGMと言えば、去年にあった『人形達ノ記憶』ってミュージックコンサートに 取材に行ったんですけど、あれは本当に良かったですね。生歌、生演奏にゲームの映像が流れるんです。僕はその時まだクリアしてなかったので、ネタバレになりそうな映像の部分は見ないように目を閉じてたんですけど、周囲からはすすり泣きが聞こえてきました。皆感極まってるんだろうなって。今僕があの状況にいたら号泣してると思います。
いやぁ、生で「Weight of the World/壊レタ世界ノ歌」聞いたら『ニーア オートマタ』をプレイしてる人ならみんな泣くと思うな。
※参考記事:【レポート】珠玉の『ニーア』楽曲演奏と声優陣の熱演に酔いしれた!「人形達ノ記憶 NieR Music Concert」
いなざわ:
参加したんですね、いいなぁ。僕はBlu-ray買いました。
あのエンディングと次回作への期待
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カミヤマ:
Eエンディング後の選択肢はどうしました?あと、あの展開は予測できました?
いなざわ:
魚図鑑以外は全部コンプリートして、消しました。まぁなんとなく予測は出来ていました。
山崎:
僕も躊躇なく消しました。最初から消えるんだろうなぁという覚悟があったので(笑)。これぞ『ニーア』って感じですね。でもコンプリートしないで消してしまったのはもったいないなと思い始めています。
カミヤマ:
私は9Sの喪失感に耐えられないので、まだ消していないです。観たいシーンや聴きたいセリフがたくさんある作品なので、まだまだ大切にプレイしていきたいですね。
いなざわ:
そういえば……この資料集にある暗号解読できました?
カミヤマ:
この数字とアルファベットの羅列ですか?全然わからないです。
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いなざわ:
これ16進数なんですけど、写真に撮ってOCRで文字列に起こした上で、UTF8エンコードの文字列から日本語としてデコードするとちょっとしたお話が読めるんです。○○○○っていうエピソードとか(笑)
山崎:
さすがエンジニア……!というかそんなことが書いてあるんですね。面白いなぁ~。登場キャラクターがみんな人間みたいな行動しますよね、機械生命体にも家族がいたりしますし。
カミヤマ:
人間が一人も出てこないけど、人間くさいキャラクターに溢れた作品ですよね。
山崎:
アダムとイヴの会話も人間くささに溢れていてよかったですね、「にいちゃんがそう言うなら」、「にいちゃんが傷つくのはいやだ」って。いやぁ、しかし話し出すと止まりませんね。この辺りでまとめに入ろうと思いますが、何か言い残したことや次回作に期待することはありますか?僕はこの座談会で「ニーア熱」が高まったのでまたプレイし始めよう思います!
いなざわ:
次回作があるなら音ゲーとシューティングはやめて欲しいです(笑)。
カミヤマ:
えー、私はシューティング好きでしたよ(笑)。次回作には、ニーアらしい衝撃と遊び心がたっぷり入った、プレイヤーがわくわくする仕掛けがたくさん入っていることを期待しています。
結局、座談会が終わったあともニーアトークは繰り広げられたのですが、ひとまずここでお開き。美しくも切ないアンドロイドたちの闘いの物語は、今後も語り継がれていくことでしょう。なお、本日より2週間の間、1週年を記念してデジタル版の半額セールが開始されます。未プレイの方はこの機会にぜひDLを!