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「中華ゲーム見聞録」第42回目は、日本の鉄道文化と戦国時代が好きな開発者による日本を舞台にした運営シミュレーションゲーム『鉄道物語:陸王(Railway Saga:Land King)』をお届けします。
本作は風林火山工作室、東木酋長が開発し、Jolifess Inc.、Fulinkazan Co.によって5月17日にSteamで早期アクセス版が配信されました。最初にSteamで本作を見たときは日本のゲームかと思いましたが、中国上海にあるインディーデベロッパーの作品です。開発者たちは日本の鉄道や戦国時代など日本文化が好きで、その魅力を伝えるために本作を開発したとのことです。自分の好きな物を作るというのはインディーゲームの醍醐味でもありますね。現在のところは中国語(簡体字)のみですが、日本語サポートも予定しているとのこと。今回は開発者にコメントをいただけましたので、記事の最後でインタビューもお届けします。
本作の内容ですが、RPG要素を含んだ鉄道運営シミュレーションゲームです。プレイヤーは物資を運送して売買したり、鉄道の開発をしたりすることができるとのこと。また、ただのシミュレーションゲームではなく、ストーリーにも力を入れているようです。鉄道王の称号である「陸王(Land King)」を目指し、さっそくプレイしていきましょう。
登場人物は猫
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ゲームを開始すると、本作のストーリーが語られます。主人公の名前は出雲拓海。国鉄局の元局長である出雲一郎の子です。出雲一郎は国家反逆罪で幕府によって国外追放され、やがて病で亡くなりました。その後、その子である拓海が船で帰国。大阪港にはマスコミが詰めかけています。この世界にはまだ幕府があるようですね。
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拓海が登場。帰国目的ですが、噂では父が成し遂げられなかった「天下布鉄」の夢をかなえることのよう。しかし拓海はマスコミの質問に答えることなく、その場を去っていってしまいました。ちなみに登場人物たちが猫なのは、一時期中国でも話題になっていた日本の猫駅長の影響かもしれません。
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大阪港を後にした拓海が向かったのは、現国鉄局長である島将大佐の元。猫だけの世界かと思っていましたが、犬もいるのですね。島将大佐は拓海の父の世話になっていたことがあるので、何かあれば協力すると言ってくれました。そこで拓海は私鉄の運営許可書を要求します。
島将大佐は拓海が父親の二の舞になることを恐れていましたが、拓海は「天下布鉄」には興味がないと言います。島将大佐はそれを聞いて安心し、30万通宝のお金と会社の秘書を拓海のために手配してくれました。通貨の単位は江戸時代の「寛永通宝」から来ているようですね。
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島将大佐が去り、ここから先は秘書の宮川恵子が私鉄運営をサポートしてくれます。彼女は、以前は拓海の父親の秘書だったとのこと。拓海の父親が国外追放されたのちは、新局長になった島将大佐の秘書を務めていました。運営に関しては拓海よりも彼女のほうが上ですので、いろいろと教えてもらいましょう。
電車を走らせて資金を稼ごう
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ゲームスタート時に使える車両は3両編成のものだけです。そしてスタート地点は岡崎城駅。後ろに徳川家の家紋ののぼりが見えますね。各駅の無料案内所(画面下のアイコン)で任務を受けることができますので、最初はこれをこなして経験値や報酬を稼いでいきましょう。
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岡崎から浜松まで客を運ぶ任務です。ちなみに「任務を受ける任務」というのがあるので、引き受けるだけで報酬がもらえました。それぞれの任務には期限があるので、期限を過ぎてしまわないよう注意しましょう。
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任務を引き受けたのち、画面右下のアイコンから全国地図を表示させ、行きたい駅を指定します。本作では各地の特産品や資源、各勢力の影響力(持ち株の割合)、都市の特徴や法律など、設定が細かく作られています。岡崎は農業中心の小都市で、禁酒令が出ていますね。また徳川家が駅の株を50%以上握っているます。現在は鉄製の茶器が流行っているので、手に入れられれば高く売れるかもしれません。
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浜松を選んだのち、出発時間を選択します。本作はリアルタイム制なので、放置しておくと時間がどんどん進んでしまうため注意しましょう。とりあえず一番近い時間を選んで出発。特急用の時間も選ぶことができますが、車両もそれに合わせて変更しないといけません。現在は普通車両なので選択不可です。
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それでは出発。ドット絵がきれいで、見ているだけでも楽しいです。このまま浜松へ……と思ったのですが、客を乗せていませんでした。出発するときに「直接出発」を選んでしまったため、列車だけが目的地に到着。いきなり失敗してしまいました。
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浜松に到着。客を乗せるためにまた岡崎に戻らなければなりません。せっかくなので浜松で客を乗せて岡崎に送りましょう。ちょっとでも資金を稼いでおきたいですからね。ちなみに列車には耐久度があって、駅に着くと費用を払って修理することができます。それと修理には一定の時間がかかります。すぐに終わらせたい場合は緊急修理がありますが、費用は2倍ほどします。
交易や株式、建設など様々な要素も!
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岡崎に戻って客を運んでまた浜松に到着。夜になってしまいました。任務達成により経験値や社会評価、お金などを獲得。本作ではレベルを上げることによって、購入できる車両がアンロックされていきます。普通に客を運んだりするよりも任務の方が実入りがいいので、できるだけ任務をこなしていくのがいいでしょう。
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運べるのは客だけではありません。車両を貨物車にすれば物資の運搬ができます。また物資にはマーケットがあり、時期によって値段も変動していきます。物資の種類も工業、農業、林業、漁業と様々なジャンルがあります。安いときに買い、高くなったときに売りましょう。
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各駅の株を購入することもできます。株を多く握っていることが、その駅に対する影響力にもなります。ちなみに株の取引には3%の交易税がかかってきますので、あまり頻繁に売買しない方がいいでしょう。
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都市に対して投資することもできます。投資は農業、工業、商業の分野があり、投資によってそれぞれの数値が伸びていき、それに関する生産物の産出量が多くなります。
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各地の特産品も数多く用意されています。農産品、鉱物、織物から酒類、鉄器、漬物、料理などジャンルも豊富。自分の工場を作って特産品を作らせることも可能です。各地での需要や売買価格も時間によって変化していきますので、上手く売買しましょう。
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車両の種類も豊富で、中古市場から購入したり、改造したりといったことができます。鉄道好きにとって楽しい部分ですね。購入できる車両はレベルによってアンロックされていきます。
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宝くじを買うことも。家紋の中から3つを選び、当選発表の日に当たっていれば賞金ゲットです。賞金金額も700万通宝オーバーとかなりの額ですが、参加費の最低金額は1万通宝と結構高額です。
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各駅では勢力ごとの影響力を見ることができます。浜松でも徳川家が49.1%ともっとも多く株を握っていますね。他にも北条家や織田家、武田家など戦国大名の名前が並んでいます。我らが出雲家はまだ株を持っていないので影響力は0%。いずれ天下に覇を唱えるときまで資金を稼いでいきましょう。
開発者インタビュー
本作は日本を舞台にした鉄道運営シミュレーションゲームですが、背後のストーリーもしっかり作られています。戦国大名たちが各駅のシェア争いをしているのも面白いですね。ゲーム自体は、シミュレーションゲームや鉄道に詳しくない方でも取っ付きやすいように作られています。鉄道や戦国大名に興味のある方はもちろん、無い方でも楽しく遊べるゲームと言えそうです。以下は開発者へのインタビューです。
――まずは自己紹介をお願いします。
東木酋長氏:開発者の東木酋長です。私たちの会社は2014年に成立し、社員は現在6名です。会社は中国の上海にあります。
――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?
東木酋長氏:本作を開発した理由は、私たちが鉄道や戦国時代を含めた日本の歴史文化が好きだからです。そのため日本の風土や人情、各地の特色を表現できるような鉄道作品を作ろうと考えました。一人でも多くの、鉄道のことに詳しくないゲーマーたちに、日本の鉄道と日本文化の魅力を伝えたかったのです。本作は2018年に開発を始め、完成までおよそ一年半かかりました。
――本作の特徴を教えてください。
東木酋長氏:本作の特徴は数百種類の車両が登場することです。その中には懐かしの蒸気機関車や、数多くの現役のディーゼル機関車などがあります。もちろん電車や高速列車も用意されています。プレイヤーは絶え間なく自分の列車の編成を組み替え、各種車両を配置することによって、要求の違う様々な任務を達成していくことができます。
また各駅間で交易を行い、原料や各地の名産物を売買して利益を得ることや、客を乗せて駅に運ぶことで運賃を稼ぐこともできます。それに駅に投資をして建設を行い、絶技を持つ匠たちからプレイヤーのために直接各地の名産品を作らせることもできるのです。ゲームの中盤以降では、各駅の株を買うこともできるようになります。株を独占することによって様々な優待が受けられます。開発で力を入れたところは、ゲームの背景設定、そして各種車両の特徴設定などです。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
東木酋長氏:『大航海時代2』ですね。この作品は私の人生のゲーム開発の観点に大きな影響を与えました。そのため、ゲームスタジオを作ったときには、すでに『大航海時代』や『太閤立志伝』のような作品の開発を目標にしていたのです。この2つは私にとって大きな影響のある作品であり、自分もこのような作品を開発したい、できれば越えるような作品を開発したいと思っています。これによって自分の人生を悔いのないものにしたいです。
――本作の日本語対応予定はありますか?
東木酋長氏:日本版の予定はあります。それと私たちは、今年9月に開催される東京ゲームショウに参加する予定です。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
東木酋長氏:日本の皆様が本作を遊ぶことによって、日常の忙しい学業や仕事の合間のリラックスになることや、もしくは純粋に鉄道運営シミュレーションとして楽しんでいただけることを願っています。
――ありがとうございました。
『大航海時代』や『太閤立志伝』のようなゲームを目指して開発されたという本作。『大航海時代』はともかく、中国の方から『太閤立志伝』の名前が出るとは思いませんでした。『太閤立志伝』は、好きな人は本当に好きなゲームですからね。東京ゲームショウへの参加や日本語対応の予定もあるとのことなので、本作の今後の展開に期待したいと思います。
製品情報
『鉄道物語:陸王(Railway Saga:Land King)』
開発・販売:風林火山工作室、東木酋長、Jolifess Inc.、Fulinkazan Co.
対象OS:Windows
通常価格:1,010円
サポート言語:中国語(簡体字)
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/955170/Railway_SagaLand_King/
※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。