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ラインを組んで食材の加工や調理の工程を自動化し、美味しい料理を作って人類の胃袋をつかむ全自動料理シミュレーションゲーム『Automachef』のプレイレポートをお届けします。
本作はHermes Interactiveが開発し、Team17 Digitalによって7月23日にニンテンドースイッチ版が、7月24日にSteam版が配信されました。Team17 Digitalはイギリスのパブリッシャーで、『My Time At Portia』や『The Escapists』シリーズ、『Overcooked』シリーズなど、取っ付きやすいシミュレーション寄りのゲームを多く配信してきました。筆者的にも好きなパブリッシャーの一つです。本作のテーマは「料理」ですが、同テーマの『Overcooked』のようなアクション性はなく、「人の手をいっさい使わずに料理する」という部分が売りになっています。
本作の内容ですが、おいしい料理で人類を支配しようとするロボットと共に、料理の作製過程を全自動化するラインを組み立てるといったものです。全自動化ライン構築ゲームには『Factorio』や『Satisfactory』などがありますが、本作はパズル要素が強めとのことなので、薬品工場シミュ『Big Pharma』が内容的に近いのではないかと思います。いったいどのようなゲームなのか。さっそくSteam版でプレイしていきましょう。
キャンペーンモードで基本を学ぼう
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ゲームモードには、チュートリアルで段階的にゲームを理解できる「キャンペーン」、自分の会社を経営する「契約モード」、オリジナルシナリオをデザインできる「シナリオエディター」、サンドボックスモードの「試験場」があります。初プレイなので、まずはキャンペーンからスタート。最初から日本語サポートがあるのは嬉しいですね。
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キャンペーンでは提示された条件をクリアしていく必要があります。最初のステージは「3件の注文を処理する」「電力消費量を500Wh以下に抑える」「使用する食材数を50個以下に抑える」。リソース制限があるところを見ると、やはりパズルゲーム寄りですね。
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開始すると「こんにちは、人類さん!」とロボットに言われました。このロボットがレストランチェーンの経営者で、プレイヤーはその求人に応募したようです。この時点ですでに社会システムがロボットに浸食されている気もしますが、ロボットの対応も丁寧ですし、給料も出るようなので応じましょう。
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「我々は完全自動式のキッチンを利用して、コストカットと人類掌握を目指しています!」と野心を包み隠さず話すロボット。全自動化は人件費削減が理由のようですね。やけに人間くさいロボットです。
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最初のステージでは「プレーンバーガー」を作ることが目的です。まずは食材を組み合わせるための装置「アセンブラー」を設置しましょう。装置には入力側と出力側があるので、設置方向に注意。
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設置が終わると「上出来です!こういうシンプルで何も考えない装置やあなたみたいな人間に命令するのっていいですよね!」とロボットに言われました。やけに支配欲のあるロボットです。次にやることですが、アセンブラーを右クリックし、レシピの指定で「プレーンバーガー」を選択。これでこの装置でプレーンバーガーを作れる(というか組み立てられる)ようになりました。
全自動化ラインを構築しよう
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次にプレーンバーガーに必要な食材を供給しなければなりません。画面左側にある「レシピ」タブを見ると、プレーンバーガーに必要な食材がわかります。バーガー用のパン、それにパティですね。パティは生のままでは食べられませんので焼く必要があります。
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食材を供給するために「ディスペンサー」を設置します。食材はパンとパティの2種類ですので、ディスペンサーは2つ必要です。アセンブラーの入力側に配置しておきましょう。
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次は先ほどと同じように、それぞれのディスペンサーで供給する食材を指定します。上のディスペンサーでパン、下のでパティを選択。これで一定時間(ここでは5秒)ごとに食材が自動供給されます。
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パティは生なので焼く必要があります。パティを供給するディスペンサーの出力側に「電気グリル」を置いておきましょう。ちなみにそれぞれの装置には設置コスト以外に消費電力があります。装置が多くなればなるほどトータルの消費電力も大きくなるので、これをいかに抑えるかも重要なポイントです。
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あとは装置をベルトコンベアでつなげれば完成なのですが、ベルトコンベアからアセンブラーや電気グリルに直接食材を投入・搬出することはできません。ベルトコンベアと装置の間に「ロボットアーム」を設置する必要があります。
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ロボットアームには2種類あり、入力されたものをなんでも出力する「シンプル」タイプと、指定した物だけをつかんで出力する「スマート」タイプがあります。電気グリルで焼いている間にロボットアームが生のパティをつかみ出してしまうのはまずいので、電気グリルの出力側にはスマートタイプを設置。「焼けたパティ」を指定します。
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準備ができたらラインをスタートさせましょう。するとディスペンサーからパンとパティが出てきてベルトコンベアを流れ、アセンブラーでプレーンバーガーを作ってくれます。どうやら成功したようですね。
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すべての条件を満たしてステージクリア。ただ、ラインの効率はあまりよろしくないようで、効率性は27%とのことです。ロボットはと言えば、「おめでとうございます!私の世界征服の第一歩を踏み出す手伝いをしてくれましたね!」と不穏なセリフを吐いていました。
ライン管理のプログラミングをしよう
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次のステージでは「チーズバーガー」を作ります。チーズを加える以外は、基本的には先ほどのプレーンバーガーと同じような工程でよさそうですね。
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しかしちょっとした問題が生じました。アセンブラーの入力側には2台のロボットアームしか設置できません。それに対してチーズバーガーに必要な食材は「パン、パティ、チーズ」の3種類。このうち2種類を同じラインで運搬する必要があります。
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パンのラインを利用して、チーズのラインを付け足しましょう。まずチーズを供給するディスペンサーを設置し、その右側に「フードプロセッサー」を置いてスライスしていきます(ロボットアームは不要)。これで同じラインでパンとチーズをアセンブラーに入れることができます。
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さっそくラインをスタートさせてみます。問題なくチーズバーガーを作ることができているようですね。しかし5個作ればいいだけなのにラインが動き続け、不要な食材を常に供給し続けるのはロスが大きいと言うもの。ロボットにダメ出しされたのでなんとかしなければなりません。
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そこで「注文リーダー」を設置し、「注文を受けたときだけ」装置が動くように命令を出していきます。プログラミングの要領で、各装置に条件を設定していきましょう。
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注文リーダーを右クリックし、命令を出したい装置を選択。それぞれに条件を与えていきます。ここではすべてのディスペンサーに対し、「注文を受けたときに1回アクションを行う」の命令を出します。これで無駄な食材を供給することはなくなりました。電気グリルも消費電力が大きいので、「注文を処理している間オンにする」の命令を入れておきます。
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命令入力が終わったので、ラインを動かしてみます。命令を受けている装置は、注文リーダーとオレンジ色の線で結ばれています。今回は注文が入ったときだけ装置が動くので、先ほどに比べてロスが減りました。
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今までは工場内での練習でしたが、次のステージから店舗を持って本格的な経営に乗り出します。ロボットからの指示もないので、自分でラインを考えてクリア条件を満たしましょう。今回はプレーンバーガーとチーズバーガーのどちらも作らなければなりません。単純に2種類のラインを作ってしまうとコストがかかりすぎますので、上手くまとめる必要があります。効率化とコストダウンを目指し、あなた自身の全自動化ラインを作っていきましょう。
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キャンペーン以外のモードですが、「契約モード」では自分の会社名やロゴを決めてプレイすることができます。それぞれの仕事にはクリア条件があるので、クリアできそうなものから引き受けていくのがいいかと。作らなければならないメニューの種類が多い仕事もあるので、先にキャンペーンをやって知識を付けてからの方がやりやすいかと思います。
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それと契約モードでは、ストラテジーゲームでおなじみの技術ツリーも登場します。仕事をこなして資金を貯め、装置をアップグレードしていきましょう。
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「シナリオエディター」ではステージクリアの目標や料理の種類、利用できる装置の種類などを設定し、オリジナルシナリオを作ることが可能です。完成したシナリオはSteamワークショップで公開したり、逆に他のプレイヤーの作ったシナリオに挑戦したりできます。「資金なんて気にせず、自由にラインが作りたい!」という方は、「試験場」で思うままにラインを組み立てるのがいいかと。自分に合った遊び方を見つけていきましょう。
効率化とコストダウンを突き詰めていく全自動化パズルゲーム
本作は、プレイ感覚的には『Big Pharma』や、社畜プログラミングゲーム『Human Resource Machine』に近いものがあり、いかに効率よくラインを動かすか、コストをどれだけ落とせるかを重視した作品です。「コンパクトなライン構築」というのは、「いかに無駄のないプログラムを組めるか」に通じるものがあるので、PCの容量が少なかった時代にプログラミングをやったことのある方は特に楽しめるのではないかと。基本的にはパズルゲーム寄りなので、橋造りゲーム『Bridge Constructor』のようなリソースの制限されたパズルゲームが好きな人にも適しているのではないかと思います。あとキャンペーンでのロボットとのやり取りも楽しいですね。
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またModを管理・配信するモードもゲーム側で備わっています。画像右下のリロードボタンを押すことで、ゲームを再起動することなくModが適応できるのは便利ですね。本作はまだ配信されたばかりですが、すでにいくつかのModやシナリオがSteamワークショップにアップロードされていました。Steamストアページには無料デモもありますので、興味のある方はぜひプレイしてみてください。今後もユーザー作製のModやシナリオが増えていき、長く遊べるゲームになっていくことを期待しています。
製品情報
『Automachef』
開発・販売:Hermes Interactive、Team17 Digital
対象OS:Windows
通常価格:Steam 1,520円、ニンテンドースイッチ 1750円
サポート言語:日本語、英語など7カ国語
Steamストアページ:Steam、ニンテンドースイッチ
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。