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E3 2019で発表され、世界中のゲーマーを驚かせた、ニンテンドースイッチ版『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション(The Witcher 3: Wild Hunt Complete Edition)』。オリジナル版が発売された2015年当時には各国のゲーム賞を総ナメして、もちろん日本のRPGファンもすっかり虜にしました。そんな『ウィッチャー3』のニンテンドースイッチ向け移植リリースの報せに興奮した方は、Game*Spark読者の中にも大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
『ウィッチャー3』は濃厚な世界観と大ボリュームでも有名なゲームですから、場所を選ばず、持ち運んだりゴロゴロしながらでも遊べるのは非常に魅力的。しかしその反面、いちゲーマーとしては「あの大作の移植なんて実現可能なのか?」と疑問を抱かずにはいられませんでした。なにせPC版『ウィッチャー3』は要求スペックが高いゲームでしたし、携帯機で遊べる時代が来るとは想像できなかったのです。
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そんな『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション』に対するゲーマーの疑問に答えるべく、今回はなんとCD PROJEKT RED(以下、CDPR)のジャパンカントリーマネージャー・本間覚氏がGame*Spark編集部にやってきてくださいました! 一足早い体験プレイもできたので、その手触りをレポートしていこうと思います。なお、本稿に掲載しているスクリーンショットは英語版のもので、ハンズオンで体験したエディション(日本語版)と異なることをご留意ください!
プレイヤーにとって特に不安なのは、グラフィックスなどの再現度ではないでしょうか? そこが不安要素となることはCDPR側も認識しているため仕様はさらけ出していくという方針をとっているのだそう。
既に『ウィッチャー3』をPC/家庭用ゲーム機で遊んだプレイヤーであればトレイラーを観ると分かるかもしれませんが、テクスチャのサイズ・ディティールには大幅な圧縮がかけられています。フレームレートは基本的には30fpsで描画が重いエリアでは可変する、という仕様です。解像度はTVモードで720p、携帯モードでは540pとなっており、PC版のようにフルHDや4Kというものではありません。描画距離やディティール、CPU処理など各所が圧縮されており、スイッチのゲームカードの最大容量である32GBに収まるようになっています。
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しかし、圧縮される要素ばかりではありません。ゲーム内に登場するNPCの数は変わることなく、原作と同様のプレイ感覚を味わえます。ニンテンドースイッチのコントローラーに対応するためにボタンマッピングが細かく変更されていて、「Aボタン決定」に最適化されていました。ゲーム内で「決定」に当る操作がきっちりと「Aボタン」に当てられています。
また、ロード時間はPS4/Xbox One版に比べて大幅短縮。広大な「スケリッジ」のロードにはPS4/Xbox One版で1分2秒かかるとのことですが、スイッチ版では39秒までに縮むのだそう。切れるべきところは切り、こだわるべきところはこだわるという職人的な想いが感じられます……!
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特に「ゲームカードの最大容量・32GBに収まる」というのは重要なポイント。CDPRとしては、お店でゲームソフトを買ったら追加ダウンロードなど無しにその場でも遊べる、という仕様を重視していたのだとか。また、パッケージ版には付録冊子や地図などが収録されるのですが、いわゆる「初回特典」ではなく「全数封入」、つまりオマケグッズとして絶対に入手できるということです。普段はダウンロード派の筆者もさすがにパッケージ版が欲しくなりました。
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筆者は『ウィッチャー3』PC版をプレイ済み。『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション』のプレイはTVモードから体験してみましたが、ユーザーインターフェイスの文字などが拡大化され、プレイしやすくするための工夫をそこかしこから感じられました。さすがにグラフィックスは他機種版のほうが高品質ではありますが、スイッチのゲームとして遊ぶのであれば全く気にならないレベルです。描画距離も短く設定されているそうですが、遠景はきっちりと表示できるように調整されているとのこと。おかげでオープンワールド的な「広さ」は存分に感じられます。
ハンズオンの最中、戯れにノヴィグラドの娼館を訪れてみました。スイッチ版だからと言って表現規制が強化されることはなく、他機種と同水準であるとのこと。まさか任天堂のハードでここまで攻めた性描写のあるゲームが遊べるとは……数年前までは思ってもみなかったことですね。
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最も処理が重そうな人口密集部に行ってみても、フレームレートが顕著に下がるようなことは起きませんでした。ノヴィグラドの市街地は『ウィッチャー3』の世界でも指折りのオブジェクト数ですから、CDPRとしても「ノヴィグラドをサクサク歩けるかどうか」ということを強く意識していたのだとか。PS4/Xbox One版の開発においても、一種のベンチマーク的な位置付けだったそうです。
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続いて、本間氏がオススメする携帯モードでも体験。携帯モードでは画面が小さいので、グラフィックス品質の変更はTVモードにも増して目立ちません。こんな規模のAAAゲームが携帯機で遊べるようになるとは……といった、軽い感動すら覚えました。UI調整も良い味を出しています。
本作は「コンプリートエディション」ということで、既発のDLCは全て収録。DLC部分からゲームを始めるモードもそのまま移植されています。レベルが高めの状態からプレイを開始できるので、「今から『ウィッチャー3』を再プレイしたいけど、また序盤から頑張るのはちょっと……」と思っているプレイヤーの皆さんも安心です。
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ここまで遊ぶと当初の不安もどこへやら。取材前夜にPC版で予習プレイまでしていた筆者でしたが、すっかり『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション』に没頭してしまいました。こうなってくると他のCDPR作品のスイッチ移植についても気になりますが……本間氏曰く、「現状ではまったく決まっていない」とのこと。『グウェント ウィッチャーカードゲーム』や『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』はスイッチと相性が良さそうですし、前作・前々作まで移植されたらうれしいところですね!
しかし『ウィッチャー』シリーズの任天堂ハードデビューは、それだけでもゲーム業界的に大きな出来事のはず。なにせゲラルトはいろいろなキャラと刃を交えたり、異世界に飛んだりもしていますから、どうしてもコラボレーションには期待してしまいますよね……!
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そんな『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション』は、2019年10月17日発売予定。携帯機で『ウィッチャー3』を遊びたいと思っているプレイヤーや、スイッチユーザーで本格RPG好きのゲーマーはマストバイな一作に仕上がっているので、この機会に体験してみてはいかがでしょうか!