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幻想的な古代のギリシアを駆け回り、帆船で大海原へと飛び出し、ついには神々の領域まで足を踏み入れ……気がつけば150時間にも及ぶ長い旅になっていました。筆者は、ユービーアイソフトのオープンワールド型アクション・アドベンチャー『アサシン クリード オデッセイ』をクリアしたのです。
そんな旅の途中、筆者は都内某所で元インサイド編集長とこんな会話をしました。
「今『アサクリオデッセイ』にハマってるんですけど、あれホント広くて……たぶん埼玉県くらいありますよ!」
「埼玉県?そんなに?」
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一応、述べておくと埼玉県ほどの広さはないです。勘違いしてしまったんです。
本作のフィールドの広さは約256平方キロメートル。一方、埼玉県の広さは約3,797平方キロメートル……つまりその差は10倍以上。さいたま市の面積である約217平方キロメートルよりは上回るものの、埼玉県最大の市町村である秩父市の面積は約577平方キロメートルの半分以下。いずれにしても筆者が恥ずかしい発言をしたのは間違いないでしょう。
では、なぜこのような間違いを犯したのか。そもそも筆者は数年前まで札幌に住んでいたのです。しかも山々に囲まれた南区。あの札幌市の半分の面積を占める南区です。西区の西に南区が存在するといえば、南区の広さだけではなく、異様な広がり方がわかるでしょうか。
筆者が住んでいたのは南区の中でもクマが出没するほどの辺境。つい先日もクマが出没した事で実家付近が収められた衛星写真がネットで拡散されていました。
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筆者は、観光地としても人気の中央区にはあまり出向きませんでした。大体の娯楽は自分の部屋にある事が要因ですが、結構な交通費と移動時間、それに伴う労力によるところが多いです。そんなわけで筆者の行動範囲はあくまでその辺境でした。幼少時代からそんな感じです。
山々に囲まれた場所で、坂道を登ったり下ったりするのが当たり前の場所から、平坦な土地が広がっている埼玉県に引っ越してきた時にはビックリしました。田んぼから遠くの高層ビルが見渡せるのですから。
そして埼玉県に引っ越してきてからはバスに乗る機会は減り、車窓から風景を眺める事が少なくなったため埼玉県の距離感をいまいち掴みきれてなかったのです。
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そんな状態で『アサシン クリード オデッセイ』を始めたらどうなるのか?まず、あのマケドニアに札幌市南区を重ねてしまったのです。
本作におけるマケドニアの周辺地域は札幌市南区同様、山々に囲まれ平坦な土地がない地域です。そしてクマが頻繁に出没しては襲いかかってきます。筆者は、クマに遭遇したことはありませんが、クマから逃げながら電柱に登る悪夢は何度も見たことがあります。
また、マケドニアで生えているオリーブを採っているうちに、山本(仮名)君という高校時代のクラスメイトを彷彿させたのも一因かもしれません。彼は、山菜採りをした事がない筆者をよくバカにしていました。イケメンで彼女をころころ代えていた山本君ですが、筆者に対して恋愛経験の多さをひけらかす事はありませんでした。しかし、そんな男が山菜採りに対して執拗に筆者をバカにしてくるのです。「え……この地域って、もしかして山菜採りしないと男になれない風習でもあんの?」と勘違いするほどに。(後々聞いた話だと、よく近所の山で山菜を取って家族と一緒に食べてたそうです。そりゃ筆者が男に見えないわけだ)
そんなわけで筆者は、ワシ使いとしてマケドニアを冒険しながら、オリーブを採取しつつ、札幌市南区を追憶するうちに、本作のギリシアのスケールが本格的に狂い始めました。
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そもそも物語序盤で登場するケファロニア島もいけなかったんだと思います。この島の広さも結構なもので、ゲームによってはこれが全フィールドのサイズというものもあるんじゃないでしょうか。
そんなケファロニア島を隅々まで冒険してからギリシア本土に向かえば、ギリシアの広大さが強調され、そのスケールがますますわからなくなってしまったのです。
そのギリシア本土には、一見の価値がある名所が多数存在しており、ついつい筆者も観光気分で各地の風景を満喫していました。せっかくなのでいくつか紹介しようと思います。
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こうしてギリシア全体の命運に関わる壮大な戦いに身を投じながらも、観光をエンジョイするうちに、自分の中のギリシアのスケールがさらにイカれていきました。
プレイ当初は、街からちょっと離れた場所に野党のアジトがあるなんておかしいと思ってたんですけどね。駅チカ感覚で敵のアジトがある感じですよ。でも、それがいつのまにか不自然に感じなくなってきたんです。慣れって怖いですね。
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そして筆者は大海原の旅に本格的に乗り出し、帆船でギリシア周辺の島々に片っ端から上陸していきます。かなり長い旅でした。これだけでも40時間はかかった感覚があります。
しかし、前述したとおり、本作のフィールドの広さは約256平方キロメートルで、海の広さはせいぜいその3分の2くらい。ちなみに、日本最大の湖・琵琶湖の面積は、約669.26平方キロメートルです。この海を「大海原」と表現したのは大げさでしたね。
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でもこの海、昔ながらの海戦が体験できるんです。時代背景的に船には大砲などの破壊兵器は備え付けておらず、弓や槍での戦いになりますが、これが意外にも迫力があって、陸地では味わえない緊張感が味わえます。
敵の帆船に乗り込み、船上で敵船員と兵刃を交えて勝利を勝ち取った時は、そりゃもう征服感が満たされるのです。お宝もゲットできるので何度も海賊行為を楽しんでいました。
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つまり海戦にもハマってしまって……ずっと海の上にいて……ついでに海の中に潜って……さらにさらに筆者の中でギリシアのスケールがおかしくなりました。やっぱり埼玉県くらいはあるんじゃないかと……あそこ海ないし。
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こうして、「ギリシア本土の広大かつバラエティに富んだ地形」「札幌市南区とマケドニアが似ている(と思った)」「本筋を忘れるほど楽しめる古代ギリシアの文化や歴史」「白熱した海戦が楽しめる海の世界」「膨大なプレイ時間」「筆者の埼玉経験の無さ(+大宮より北は群馬じゃねーの?的な感覚)」……これらの要素が複雑に絡み合い、筆者の中で本作におけるギリシアのスケールが狂い、埼玉県と同じだと錯覚してしまったのです。
ちなみに、現在のギリシャ共和国の面積は約131,957平方キロメートル。埼玉県の面積である約3,797平方キロメートルより俄然広いですね。
なお本作では、古代ギリシアの歴史や文化などを学べるモード「ディスカバリーツアー」が2019年9月10日より配信されました。アクションゲームやRPGが苦手でも古代ギリシアの歴史や文化に興味がある人は、このモードで本作を楽しんでみては?