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コジマプロダクション開発の完全新作アクション『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』(2019年11月8日発売)。『メタルギア』シリーズの生みの親として知られる小島秀夫監督の最新作にして、同スタジオの処女作となるこのゲームは、発売前から世界中で大きな注目を集めています。
人々や都市が引き裂かれ分断された世界を舞台に、プレイヤーは滅亡に瀕した人類のため、そして未来のために、人々の希望をつなぐ危険な任務に旅立ちます。そして、この壮大な世界観を彩るのは映画顔負けの豪華すぎるキャスト陣。本連載では、『DEATH STRANDING』のキャスト陣を、映画、ドラマなどの代表作を含めてご紹介していきます。第1回では、デッドマン役のギレルモ・デル・トロに迫ります。
ギレルモ・デル・トロが演じる、デッドマンというキャラクター
アメリカ再建を掲げて組織された“ブリッジズ”の一員で、元監察医。任務中のサムを手助けするなど、サポート的な役回りですが、まだまだその素性はベールに包まれています。額際には、痛々しい手術痕も確認できますね。これまでに公開された映像では、ホログラムのような実体のない姿で登場。別の場所から送信されたホログラムなのか、それとも……。
ギレルモ・デル・トロは、デッドマンの3Dスキャンと一部のモーションを担当。多忙を極めるデル・トロに代わって、全体のパフォーマンスキャプチャーと英語版声優は別の方が担当しています。小島監督いわく、今作の中では最もセリフの多いキャラクターなのだとか。
ギレルモ・デル・トロってどんな人?
我らがデル・トロ監督、コジプロに上陸! pic.twitter.com/yfTwKd2Vyr
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) January 29, 2018
1964年生まれ、メキシコのハリースコ州グワダラハラ出身の映画監督、脚本家、プロデューサー。地元の大学を卒業後、「エクソシスト」(1973)で知られる特殊メイク界の大御所ディック・スミスに師事し、特殊メイクアップ・アーティストとしてキャリアをスタートさせました。その後、特殊メイクの会社ネクロピアを設立し、数多くの映画やテレビ番組に携わります。
脚本も務めた初の監督作品「クロノス」(1992)は、93年のカンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝き、同年のアリエル賞(メキシコ・アカデミー賞)では作品賞、監督賞など、9部門を受賞。この作品の成功によってハリウッドに招聘されたデル・トロは、アメリカ資本による次作「ミミック」(1997)を監督するなど、その名を広めていきました。
拠点をアメリカに移してからも、そのクリエイティブな精神は洗練され続け、監督する映画は世界中で注目を集めています。ファシスト政権時代のスペイン内戦を背景に、ひとりの少女の夢想世界を描いた「パンズ・ラビリンス」(2006)は極めて高く評価され、各国の映画賞、映画祭を総なめに。発話障害の女性と謎の水棲人との恋模様を描いた「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)は、第74回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を獲得。第90回アカデミー賞では作品賞など4冠を達成し、世界的フィルムメイカーとして名を残すこととなりました。
小島監督とは以前から交友があるようで、小島監督のSNSにはデル・トロ監督とのツーショット写真がたびたびアップされています。過去には、人気ホラーゲーム『サイレントヒル』シリーズの最新作を共同で開発していましたが、その後、突如として開発中止が発表。そして、今作『DEATH STRANDING』での友情出演によって、ふたりのコラボはようやく実現したのです。
日本語版声優を務めるのは、石住昭彦
デッドマンの日本語版声優を務めるのは、洋画、海外ドラマを中心に活躍しているベテラン声優の石住昭彦。小島作品への参加は今回の『DEATH STRANDING』が初のことです。
洋画の吹き替えでは、「キングコング:髑髏島の巨神」(2017)のジョン・グッドマンをはじめ、「マネーボール」(2011)のフィリップ・シーモア・ホフマンなど、渋めな俳優を担当。小島監督は、石住が声を当てたジョン・グッドマンの映画を観て、彼の起用を決めたそう。
一度は観るべき! ギレルモ・デル・トロの代表作
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今作『DEATH STRANDING』で、デッドマンに扮したギレルモ・デル・トロ監督。彼の代表作にはどのようなものがあるのでしょうか。少し覗いてみましょう。
■「パンズ・ラビリンス」
彼の映画は常にダークで、そしてファンタジックで、極めて奇妙な空気感を醸し出しています。処女作の「クロノス」をはじめ、「デビルズ・バックボーン」(2001)、「クリムゾン・ピーク」(2015)など、彼のフィルモグラフィの中でいつも輝くのは、そういったダークファンタジーの鮮烈な物語です。中でも代表作として名高いのは、やはり「パンズ・ラビリンス」でしょう。内戦後のスペインを描き出した本作は、過酷な現実世界と、不思議な幻想世界を行き来する、ひとりの少女の物語。その美しい映像とは裏腹に、極めて恐ろしい現実性を含んだ社会派なテーマが盛り込まれています。
■「デビルズ・バックボーン」
「デビルズ・バックボーン」も同じくスペイン内戦を描いた作品で、こちらは、孤児院に夜ごと出没する少年の霊を巡るホラー。どちらも現実とは違う、“もうひとつの世界”を描き出しているのが特徴です。『DEATH STRANDING』の中でも、“死後の世界”という別次元、そして“BT”といった幽霊のような存在が設定されています。こうしたオカルティズムの精神というのは、デル・トロ作品における驚異の世界観の源泉となっているのです。■「パシフィック・リム」
しかし、深海怪獣と巨大ロボ・イェーガーの死闘を描いた「パシフィック・リム」(2013)では、これまでのオカルティズムな作風から一気に舵を切って、大衆向けの娯楽映画として結実させています。ギレルモ・デル・トロは、日本のポップカルチャーに造詣が深いことでも有名で、怪獣と巨大ロボの戦闘シーンは、日本の戦隊シリーズへの極めてアツいリスペクトを感じさせるでしょう。■「シェイプ・オブ・ウォーター」
賞レースを席巻した「シェイプ・オブ・ウォーター」は、これまでのキャリアの集大成のような作品です。この世界には「本当に完璧な人間など誰一人として存在しない」という、普遍性を擁したメッセージを投げかけています。『DEATH STRANDING』も同じで、登場するキャラクターには暗い背景を感じさせます。そういった欠落のある人々が繋がっていくことで、温かな絆が芽生えていくという点は、「シェイプ・オブ・ウォーター」にも通じる共通項ではないでしょうか。『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』はPS4向けに、2019年11月8日に発売予定。ちょっとした共通事項も見られるデル・トロ作品の中には、今作『DEATH STRANDING』へのヒントが隠されているかもしれません。