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「デジボで遊ぼ!」ではボードゲーム要素やカードゲーム要素、テーブルトークRPG(TRPG)要素のある魅力の新作デジタルボードゲームを特集。今回は記憶喪失の刑事が殺人事件を調査するハードボイルドなオープンワールドRPG『Disco Elysium』をお届けします。
本作はZA/UMによって、10月16日にSteam/GOGで配信されました。本作の特徴は油彩画のようなグラフィックに、TRPGのようなゲームマスター(GM)とのやり取り、膨大なテキスト量と選択肢の多さ、自由度の高さなどが挙げられます。またアーバンファンタジー的世界観も独特な雰囲気と空気感を醸し出しています。
プレイヤーは記憶喪失の刑事となり、海岸都市Revacholで起こった殺人事件の解決に挑みます。ゲームはテキストベースで進行していき、プレイヤーのスキルによって展開が変化していきます。オープンワールドなので好きなようにストーリーを進めていくことも可能。さっそくプレイしていきましょう。
主人公は半裸のおっさん
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まずはキャラメイクから。主人公には知力(Intellect)・精神(Psyche)・体格(Physique)・運動能力(Motorics)の4つのパラメータがあり、これにポイントを振り分けていきます。テンプレートが3つ用意されていますが、今回は自作キャラ(CREATE YOUR OWN)でいきましょう。
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筆者はRPGをプレイするとき、戦士など物理系キャラを最初に使うのが好きなので、体格と運動能力にポイントをすべて注ぎ込みます。問題は主人公が刑事で、事件の捜査をしなくてはならないことでしょうか。
このゲームで脳筋が通用するかどうかは分かりませんが、ハードボイルドな世界では知力より武力のタフガイが主人公であることが多いので、案外なんとかなるかもしれません。
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次にスキルの設定。先ほどの4つのパラメータには、所属するスキルが6つあります。スキルレベルは4つのパラメータの値で決まります。メインとするスキルを1つ選ぶと、そのスキルレベルに+1のボーナスが入ります。
スキルレベルは、ゲーム中の行動や装備で上下します。また経験値を使ってレベルアップさせることも可能。どのスキルが有用かは状況によって変わりますので、直感で選んでしまってかまわないかと。ここでは物理キャラらしく「PHYSICAL INSTRUMENT」を選択。説明文には「マッチョマンでジムの先生」と書いています。
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開始すると、「あなたは~です」「どこどこにいます」といったTRPGのGMのような語り口でストーリーが展開。選択肢ではロールプレイに徹するだけでなく、GMに対して質問したり茶々を入れたりすることができます。
GMがスルーしてストーリーを進めようとしても、「いや、そうじゃなくて、さっきの言葉の意味が知りたいんだ」といったような選択肢が出てきて、GMとのぐだぐだな会話が続けられるなど、まるでリアルTRPGのようです。
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暗闇から目を覚ました次の場面では、半裸のおっさん(靴下有り)がだらしない格好で床に倒れています。酒瓶がそばには転がっているところを見ると、飲み過ぎたのでしょうか。このおっさんが主人公です。
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地面をクリックすることによって移動可能。ひどい頭痛に悩まされながらよろよろと歩き、まわりを探索していきます。それにしてもゲーム開幕から一般ウケしないような絵面を見せられています。海外ゲームのリアリティというやつでしょうか。
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緑色の丸をクリックするとその物体を調べることができます。それ以外にも、タブキーを押すことによって取れるアイテムや調べられる場所がハイライトされます。主人公は記憶喪失のようで、なぜここにいるのか、自分が何者なのかもわかりません。画面左下のポートレイトの顔が不明瞭なのもそのせいでしょう。
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ドアを開けようとするも、半裸なので外に出ることができません。記憶喪失でもそのあたりの常識はあるようですね。床に落ちていたズボンを拾って装備します。本作では攻撃力や防御力といったものはありませんが、装備によってスキルレベルが上下します。
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割れている窓を調べると、TRPGでお馴染みのスキルチェックの選択肢が登場。サイコロ2つの合計とスキルレベルを足した数が、必要な数値を超えていれば成功です。ここで使うのは「Visual Calculus」のスキルですが、脳筋なので1しかありません。成功値は9なので、サイコロの合計が8以上でないと失敗です。せっかくだからやってみましょう。
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サイコロの合計は8で、ぎりぎり成功。窓の破片が部屋にないことから、内側から割られています。使われたのは、弾丸よりも大きく、家具よりも小さなもの。壁のハンガーに靴が片方だけあったので、もう片方を投げたものと思われます。もしかして主人公が割ったのでしょうか。ここで「靴を探せ」のタスクが追加されました。あとで拾いに行きましょう。
自分の過去を探れ!
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天井のファンにはネクタイがぶら下がっていますね。これを取るためのスキルチェックがありますが、今回は72%と高め。チャレンジして、ネクタイを取ることができました。ちなみに1のゾロ目はスキルレベルに関係なく失敗、6のゾロ目は成功になります。
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バスルームに入る主人公。自分の顔も分からないので、鏡を見てみることにします。ストーリー中に強制的にスキルチェックが行われることもありますが、この場合はサイコロを振るシーンはなしで、結果だけがテキスト中に表示されます。
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ひたすらGMに焦らされた結果、出てきたのはこの顔(ちょっといい笑顔)。左下のポートレイトはもっと顔色が悪く、アルコール中毒患者のようです。実際酒を飲みすぎて倒れていたようですね。しかし、主人公は自分の顔を覚えていません。
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さて、服装も整ったので部屋の外に出ましょう。簡単に書いていますが、ここまでで1時間以上はかかっています。とにかくテキスト量がすごい。総プレイ時間が60時間ほどあるとのことですが、このペースだと余裕で超えそうですね。
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外にいたKlaasjeという女性に話しかけてみます。彼女は主人公のことを「警察官」と呼びました。話によれば、どうやら主人公は3日前から「警察の職務」でここに泊まっていたそうです。しかし詳しいことを聞こうとしても、はぐらかされてしまいます。
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バルコニーに出てみると、もう片方の靴が落ちていました。これを拾うとタスククリアになり、経験値が入ります。ちなみに主人公の頭の上にある赤い丸は、何かに気付いたときに出現します。クリックすることでセリフをしゃべったりします。
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一階に降りると、カウンターにカフェテリアのマネージャーGarteがいました。鳥をさばいているのかと思いましたが、剥製の翼を修復しているだけでした。彼はいつもここにいるわけではなく、普段はSylvieという女性が店番をしているようです。質問をしようとすると、「そこにいるおまえの相棒に聞け」と言われます。
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車いすの女性の向かいにいる、Kim Kitsuragiという東洋人っぽい男が相棒のようです。57地区から来たようで、主人公は41地区の刑事とのこと。ここで会う約束をしていたそうです。記憶喪失のことを話しても、「飲み過ぎなんだろ。そのうち思い出す。そんなことより事件の調査だ」とあまり相手にしてもらえません。
相棒と捜査開始!
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Kimが仲間に加わりました。事件ですが、3日前に、このカフェテリアの裏庭で警備員の首吊り死体を発見したとの通報がありました。死体はすでに4日放置されていたのですが、誰も捜査に来なかったとのことです。治安の悪そうな地域ですね。
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Garteのところへ戻って話を聞きます。この湾岸地域では、港の労働者組合と雇用主の間で争いがあり、労働者たちが見せしめに警備員をリンチして殺した可能性があるとのこと。通報者はGarteではないようなので、前の店番だったSylvieに話を聞きたいのですが、すでに仕事を辞めたそうです。
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Sylvieの居場所を聞いても、「お前の知ったことか」とGarteは教えてくれません。そこで「俺はフェミニストなんだ!」とよく分からない理屈で押し切ると、新たな思想「フェミニストアジェンダ」を獲得。男に対する権威(Authority)が+2です。
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立ち去ろうとしたとき、Garteに「ミスターフェミニスト、ツケの120レアル払ってくれ」と宿泊費を請求されます。「逃げる」の選択肢があったので選んでみました。逃げたのはいいのですが、スキルチェック失敗。途中で何を思ったのか急に振り返り、Garteを挑発するように両手で中指を立てます。しかしすぐ後ろには車椅子の女性が……。
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車椅子の女性は無事だったものの、主人公は仰向けに転んでしばらく気を失っていました。いい年して何やってるんでしょうか。Garteも気まずい様子で「なんかごめん」と謝ってきました。車椅子の女性も心配してくれています。みんなのやさしさがつらい。
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車椅子の女性はLenaといい、近所に住んでいるそうです。ここへはお茶を飲みに来ているとか。彼女との会話から、この国の歴史や政治体制などを知ることができます。ここはぜひプレイして確認してみてください。
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いい加減そろそろ事件現場を見に行かなくてはならないので、カフェテリアの裏に移動。半裸の首吊り死体がぶら下がっています。近くでは死体に石を投げつける生意気な子供がいました。
このあたりでは労働者組合が法のようなものになっているので、下手に逆らわない方がいいようです。何日もぶら下がったままなので腐臭がすごく、下ろすためのスキルチェックもかなり困難。
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死体は後回しにして、まず周囲の探索。どうやら主人公のものらしき警察の外套を発見しました。取りに行きたいのですが、ここからだと跳び下りるしかないようです。「先に跳んだらあとから行くよ」と言うKim。スキルチェックが必要ですが、行ってみましょう。
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助走をつけてジャンプ……と思ったら、スキルチェック失敗。跳び下りる直前に体のバランスを崩し、怖気づいて跳ぶのをやめました。モラル(士気。メンタル的なもの)に1のダメージです。
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本作には生命力とモラルがあり、どちらかが0になるとゲームオーバー。物理系なので生命力は5あるのですが、モラルは1。1発即死です。「もう嫌だ! 刑事やめる!」と言い出してゲームオーバー。脳筋は予想外にも豆腐メンタルでした。
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先ほどのチェックに使われていたスキルは「Savoir Faire」。運動能力に関するスキルなので本来は5あるはずなのですが、ズボンと靴にそれぞれ-1の修正がかかっていました。ということは、ズボンと靴を脱げば……。
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ズボンと靴を脱いでパンツ一丁となり、「I can fly!」と己を解き放ってジャンプ! 社会的には死にそうな気がしますが、スキルチェックは6のゾロ目で成功。
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そしていつの間にか、しれっと付いてきているKim。何者。とりあえず外套を手に入れました。果たしてこの豆腐メンタルで事件は解決できるのか。この続きはぜひ自身の手でプレイしてみてください。
テキストと選択肢の多さが魅力!
本作は何よりも膨大なテキスト量と選択肢が特徴の作品です。とにかくテキストの洪水で、最初のカフェテリアで会話をしまくっていたら、外に出るまでリアルで3~4時間ぐらいはかかりました。しかし対話式でユーモアもあり、選択肢もこまめに出てくるうえ数も多いので、楽しんでプレイすることができます。
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今回のプレイでは物理が活きるシーンがあまりなく、それどころかあのあと女性をお茶に誘って失敗し、精神ダメージを受けてまたゲームオーバーと、豆腐メンタルだけがやたらと発揮されました。都市生活ではメンタルのタフさも重要なのかもしれません。
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物理系が活きる戦闘ですが、ストーリーの流れや選択肢でスキルチェックをして戦う形で、一般のRPGのような戦闘システムはありません(ゲームブック的な戦闘を思い浮かべるといいかと)。また、現在は英語のみに対応。「テキストを読んで選択肢を選んでいく」ゲームであることから、英語が苦手だとプレイは厳しいかと思います。日本語サポートが待ち望まれます。
本作はTRPG好きならばスルー出来ない面白さなので、GMとのやり取りまである本格的なTRPGを遊びたいという方や、独特な世界観を楽しみたいという方はぜひともプレイしてみてください。
製品情報
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。台湾在住。母は台湾人。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。