ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売されている『Dreams Universe』。ゲーマーなら誰もが考える「こんなゲームあったらいいな」という想いをそのまま実現できるゲームクリエイティブプラットフォームです。いや、本当になんでもできちゃうんですよね。実写レベルのPS4コントローラーを作ったり、先日発売された『Ghost of Tsushima』のトリビュート映像を(2019年に)作ったり……。「ないならつくっちゃえ。」とは本作のキャッチコピーの一つですが、それを地でいける圧倒的自由度とクリエイティビティを持ったタイトルです。
そんな『Dreams Universe』が、この度PS VRに対応。これを機に本作の幅は更に拡がることになります。今まで誰も考えなかったような、驚愕の作品も出てくるかもしれません。
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Mark Healey氏
今回は、『Dreams Universe』の開発を担うMedia Moleculeの共同設立者であり、本作のテクニカルディレクターを務めるMark Healey(マーク・ヒーリー)氏にオンラインインタビューを実施。無料アップデートとして追加されるVRモードの事柄を中心に、お話をうかがいました。
――2019年4月のアーリーアクセス開始から約1年3ヶ月が経ちました。ユーザーの反響はいかがでしょう。
Mark Healey氏(以下、ヒーリー)発売後から素敵なコミュニティがどんどん大きくなっています。彼らが作るものはあっと驚くようなものばかりで、とても美しいものばかりです。
クリエイター(ユーザー)として活動されているみなさんはとてもスキルが高く、『Dreams Universe』にあるツールを最大限活用してくださっています。一方で、まだ初心者レベルの方や、もっとカジュアルなクリエイターたちへ向けたものも、これから拡張しなければと思っています。ここは一つ、課題となっている部分ですね。
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――総作品数は今どのくらいあるのでしょうか。
ヒーリー今はとてつもない数になっていますね。数百万とか……!一生かけてもプレイできないくらいの作品数になっていますよ(笑)。
――日本とそれ以外の国では、ユーザーの作品作りの傾向などに違いはありますか?
ヒーリー日本のクリエイターたちの作品だと、やはりアニメに寄ったものが多いですね。特に「spider-y」という作品が印象に残っています。ディティールがものすごくて、ものすごい愛を込められているというのが、見ているだけで伝わってきます。これは日本からしか生まれない作品だと思います。
――色々なユーザーの作品を見てきた中で「これはとんでもない作品だ!」と思ったものはありますか?
ヒーリー最近見た作品ですと、まず「Tiny Creators」という作品ですね。一枚のスクリーンの中をよーく見ると、すごく小さなキャラクターたちが動いていて、そのスクリーンの中で全てが進行し、ゲームが完結しているんです。
もう一つは、「Temporal fuse」という作品です。一人称視点のパズルゲームなのですが、スタンドアローンタイトルとしてPS Storeで売れるんじゃないかと思うくらいに、クオリティが高いです。
他にも、Badrobo82さんの作品は二度見しないとゲームだとわからないくらいリアルで、驚きましたね。それ以外にも本当に素晴らしい作品ばかりで、作品名を憶え切れないくらいです(笑)。
これは我々が誇りにしていることでもありますが、『Dreams Universe』のツールはクリエイターひとりひとりに馴染み、彼らの思い描いたことを形にできます。“色”をしっかりだすことができます。だからこそ、日本の方にしか作れないような作品も出てくるのではと思っています。
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――今回、ついにVRに対応するということですが、すでにある作品をVRに対応させることはできますか?例えば過去に作ったFPSの作品を、VRでもプレイできるようにしたり。
ヒーリーはい、新規・既存含め、すべての作品をVRに対応させることができます。VR専用にするのか、どちらでも遊べるようにするのか、それとも非対応にするのか。それらもすべてのクリエイターが自身で選択することができますね。
既存作品をVR化したときに、オブジェクトのサイズ感が違って見えてくるのがとてもおもしろいですね。以前、FPS作品を試しにVR化してみたら、手にしたショットガンがすごく大きく見えて(笑)。既存作品もVR化することで、通常プレイとはまた違ったものが見えてくると思います。
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――VRモードを使い、VR空間で通常のゲームを作る、というのもできるのでしょうか。
ヒーリーもちろん、可能です。最終的にVR対応にするかどうかは、最後の設定で決めることができます。VRモードではスケール感がとてもわかりやすくなるので、特にスカルプチャー(動かないオブジェクト)作りに適していると思いますよ。
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PS VRのヘッドセットも、常に付けてないといけないわけでなく、いつでも脱着してもらって大丈夫です。VRは、あくまで『Dreams Universe』における「ひとつのツール」という認識です。使ってもいいし、使わなくてもいいのです。
――今回、VRに対応するにあたり、新しくストーリーモードの追加などはありますか?
ヒーリーストーリーという形ではないのですが、「インサイド・ボックス」という新しいコンテンツを作りました。VR作品を紹介する大きなギャラリーなのですが、その中には様々なコンテンツが収録されており、パズル、シューティング、プラットフォームアクションをそれぞれ題材にした新しいゲームも3つ入っています。もちろん、テンプレートとしてこれらを利用し、クリエイターが自身でリミックスすることも可能です。
――製品版で追加され、非常に評判のいいストーリーモードですが、今後VR問わず追加していく構想などもあるのでしょうか。
ヒーリー我々Media Moleculeとしては、今までが「第一段階」で、開発のためのツールを充実させるフェーズであったと考えています。そしてこれからが「第二段階」となり、充実したツールを使って自分たちもコンテンツを作っていくフェーズに移っていくと思います。
詳しいことは現状まだ言えないのですが、今後のコンテンツは我々も色々と構想はしています。もちろんストーリーモードも、もっと作りたいと思っていますよ。
――ちなみに、ご自身がVRモードで作品を作るなら、どのようなものを作りますか?
ヒーリー『Dreams Universe』らしいクリエイティブなバーチャルサッカーゲームを作りたいと思ったことはありますね。もう一つ、自分の相棒のしゃべる車と一緒に、様々な次元や空間を旅するゲームも考えたことがあります。そのうち、時間ができたら作ってみたいです(笑)。
――車との旅、いいですね……!ぜひ!では最後に、今回のVRも含め、個人的には教育方面での活用もできそうなタイトルだと思っていますが、例えば学校教育などで活用してもらうような構想はありますか?
ヒーリー我々の過去作である『リトルビッグプラネット』も、実際に学校教育に使われたことがあるんですよね。『Dreams Universe』もぜひ、教育方面で活用してもらいたいと思っています。
Media Moleculeには『Dreams Universe』を教育方面で活用するためにどうすればいいかを考えているチームもあります。先ほどお話した「初心者、カジュアル層への展開」に近しいところもありますが、小さなお子さんでも、簡単に動かすことのできる使いやすくて楽しいツールというのも、今後拡張していきたいですね。
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私の息子は森の中で遊んでいることが多いのですが、遊びながら自然のことを自分で学んでいます。「遊びを通して学ぶ」というのは、最も自然な学び方であり、同時にとても大切なことだと思いますよ。
――『Dreams Universe』の自由な遊びをぜひ子どもたちにも触ってほしいですね。本日は、ありがとうございました!