2020年8月27日から30日の3日間、オンライン上で開催されたgamescom2020にてデモが公開された作品を【gamescomの気になるデモ版プレイレポ】としてピックアップ。今回はハンガリーのインディーデベロッパーThe Wild Gentlemenによる『Chicken Police』のデモ版プレイレポートをお届けします。
シュールだがインパクトのあるフィルムノワール風なデザイン
本作は「クロービル」という都市を舞台に、「チキン・ポリス」として知られる刑事コンビ、サンティーノ・“サニー”・フェザーランドとマーティ・マクチキンの二羽の活躍を描くアドベンチャーゲームです。
サニーは落ち着いた雰囲気のある朴訥な人物、マーティは血の気の多い三枚目。二人とも頭脳というよりは、腕っぷしで事件を解決するほうが得意そうなハードボイルドな印象を漂わせています。かつて、「血の大晦日」と呼ばれる事件を担当したことで一世を風靡した二人ですが、その後とある事件をきっかけにコンビを解消し、現在サニーはほとんど引退状態にあります。
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ある日、サニーのもとを美人(?)代理人が訪れ、ナイトクラブ「ツァーリ・クラブ」の歌姫ナターシャ・キャッツェンコへの脅迫事件の捜査を依頼します。サニーは調査のため、元相棒マーティのもとへと向かい協力を仰ぎます。こうして復活を果たした往年の名コンビ「チキン・ポリス」は、危険な香り漂う夜の街へと車を駆っていきます。
本作最大の特徴は、実写の動物の頭部と人間の体が融合した獣人たちのキャラクターデザインでしょう。非常にシュールレアリスティックなこのデザインが、古典的なフィルムノワール映画の特徴であるモノクロームの世界と融合し、物語を牽引します。このあまりに現実離れな映像に、筆者もプレイを始めた直後は戸惑いました。
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しかし、慣れてくると妙なバランスの良さと不思議な愛嬌があります。動物の頭ゆえに表情は分からないにもかかわらず、二羽が交わすぶっきらぼうでアメリカンな雰囲気の会話とともに、彼らが浮かべる不敵な笑みや苦い表情が脳裏に浮かんでくるような気さえしてきます。ニワトリの頭とはミスマッチな革ジャケットにネクタイ、その珍妙な容姿から飛び出す渋みのある低音ボイスがなんとも言えない良い味を出していて、気がつくと彼らの物語にぐいっと引き込まれていました。
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また、ただシュールさだけがあるわけではありません。登場キャラクターたちは各動物の持つイメージと特徴がうまく融合され、身体的特徴を揶揄したりそれに関するブラックジョークも飛び出すなど、どきりとさせられる瞬間もしばしば。翻訳も獣であることがわかるように上手く訳出されていて、テキストを読むのも非常に楽しく、くすりとできるのもグッドポイントです。
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巧みな話術で人々から情報を引き出す!
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ゲームの進め方は、カーソルを動かして対象を選択するポイント・アンド・クリック式。事件の調査を進めるための手がかりを求めて、足を使った聞き込みを行なっていきます。個性豊かな獣人たちから話を聞き、クラブに現れたギャングのボス、イブン・ウェスラーに接触。相手の性格を考慮しながら巧みに会話を誘導し、手がかりとなる情報を引き出します。
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デモ版では、主人公たちの紹介と操作チュートリアルが中心で、物語がどう展開していくかはまだ判然としません。ただし、ゲームとしてプレイする部分はカーソルを動かしてクリックするだけですから、全体を引っ張っていく物語がどれほど深みのある練られたものなのかには注目したいところです。
デモ版のラストはドラマの次回予告風に幕を閉じます。予告編のなかでは銃撃戦もあり、今後の展開に胸が踊ります。フィルムノワールというジャンルを、このユーモアあふれるデザインがいかに後押ししていくのか、それともあえてそのまま実直に伝統を踏襲していくのか、どちらに転んでもユニークな作品となりそうな予感がいっぱいです。
蛇足ですが、筆者個人はデモ版で幾度か名前が言及される司法長官「ハムタロウ」がどのような人物なのか、非常に気になるところです。
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総評
動物の頭と人体が融合したキャラクターたちによるフィルムノワール風アドベンチャーという、すぐには理解が追いつかないほど様々な要素が詰まった極めてユニークな作品。ツッコミどころ満載ながらも、気がつくと物語に引き込まれる、そんな不思議な魅力がありました。
大きなインパクトを与えるキャラデザインが単なる出オチとならずに物語と関わり、このノワール(「黒い」)世界のなかでどのように展開していくのか、非常に期待の持てる作品です。
『Chicken Police』は、PC(Steam)/海外PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに発売予定。現在のところ発売日は未定で、日本語に対応しています。