2020年11月4日にUnlimited Fly GamesがリリースしたPC向けローグライトアクション『Kelipot / 形骸骑士』。開発はこれまで『Blind Spot』『Blind Spot VR』などを手がけており、本作はSteamストアのレビューが「非常に好評」と高い評価を受けている作品です。
プレイヤーは主人公の「アベル」となり、世界で流行している病気の原因調査や突如凶暴に豹変した兄「カイン」の謎を解くべくさまざまな世界を冒険します。ローグライク要素の高い探索アクション、パワーアップ要素、魅力的なアートワークや続きが気になってしまうストーリーが魅力的な作品です。
本稿では、そんな『Kelipot / 形骸骑士』をレビュー。本作の完成度の高いアクション要素、さまざまなキャラクターが織りなす気になるストーリーなどの魅力をお届けします。
豹変した兄、迷い込んだ異世界!
本作の物語は、謎の病気が流行したという古の街「セレファイス」を、主人公「アベル」が調査しているシーンからスタート。まずはチュートリアルとなり、剣を使用した攻撃やジャンプ、回避などのアクション、サブウェポンなどの基本操作を学びます。
道中モンスターに襲われている商人「ウィル」を助けながらマップを進み、中ボスを撃破したところでイベントが発生。調査中行方不明になっていた兄「カイン」と再会しますが、なにやら様子がおかしく、アベルに襲いかかってきます。カインの攻撃は非常に強力ですが、ウィルのポーションのおかげで無事に撃破、しかし突如として世界に空間の裂け目が出現、アベルとウィルは吸い込まれてしまいます。
2人が気がついた場所は、荒野が広がる異世界。そこに置いてある時計とアベルの持つ「銀の鍵」が反応、新たな世界へと続くゲートが出現しました。ゲートの中に広がっていたのは、記憶と異なる「セレファイス」の世界。パラレルワールドのセレファイスにはさまざまなキャラクターとの出会い、強力なボスとの戦いが待ち受けています。流行した病気や豹変した兄の原因を探るため、そして元の世界に戻るためのアベルの冒険が始まります。
本作は物語の導入を含めて演出面が優秀で、ゲーム内でもパラレルワールドの説明や表現がとてもわかりやすく描かれています。
オーソドックスでレベルが高い探索アクション!
本作のジャンルは探索アクション。プレイヤーはステージ内を探索しながら自身を強化し、最後に待ち受けるボスを倒すのが目的です。ステージ内でライフが尽きることで荒野の世界に戻されますが、ゲームオーバーにはなりません。また、ステージ開始前にはクエストを受注可能。クエストを達成すると店で交換可能なアイテムを獲得できます。
ステージ構成は、決められたパターンの部屋の配置が毎回変わるランダム形式。ステージ内にはステージごとの敵やギミックが待ち受けているほか、宝箱や中ボス、アイテム獲得可能な「チャレンジ」などが用意されています。もちろん探索アクションらしく壁を破壊して見つける「隠し通路」もありますよ。また、異世界の「ウィル」の店やアイテムをくれるNPCのなどもステージ内に点在しています。
倒した敵からはまれに「魂石」と呼ばれるアイテムを入手可能。魂石はモンスターによって効果が異なり、攻撃用のサブウェポンのほか、「水中移動性能が向上」のようなアクティブ効果も発生します。ステージ内での敵の数は限られているため、なるべくすべてを倒して魂石を拾う確率を上げておくのがおすすめです。
ひとつのステージ自体はそこまで広いわけではなく、要所にワープポイントも用意されてるため探索しやすい印象です。足場になる石を抱えて移動する「ガーゴイル」を利用して足場を作り、初期ではジャンプでは届かない位置を探索するなどのちょっとしたテクニカルな要素も。時間制限などはないため、エリアを隅々まで探索してボスに挑むまで強くなることが大切です。
なお、異世界で手に入れたアイテムやパワーアップは持ち帰れません。しかし、後述するシステムに関わるため必ずひとつでも多く拾っておきましょう。
ボス戦は「初見殺し」の弾幕戦!
敵を倒しながら己を強化し、たどり着いたボスの間に待ち受けていたのは主人公兄弟と面識のある異世界の「恩師エリアス」。彼もどうやらカイン同様に様子がおかしく、アベルに殺意を向けてきます。ここで最初のボス戦となるのですが、まともにやって初見で勝利するのはほとんど不可能です。
本作はこれまで比較的オーソドックスなアクションゲーム操作で戦ってきたのですが、ボス戦ははっきりとジャンルが異なります。Steamストアページでも紹介されているとおり、本作のボス戦ジャンルは「弾幕」。エリアスを始めとするボスはさまざまなパターンの弾幕を張って攻撃し、ダメージによって何度も形態を変えて新たな攻撃を仕掛けてきます。
プレイヤーは敵の攻撃パターンを読み、適切な回避や敵の弾を消す「必殺技」などを駆使して対応しなければなりません。最初は対処がわからずかなり厳しい戦いになりますが、何度も挑んでパターンさえつかめば無傷で勝つことも難しくありません。筆者も一度勝利して以降、ある程度のステージのボスには不覚を取ることがなくなりました。そのあたりも非常に丁寧なゲームバランスだと感じます。
もし何度挑んでも勝てなかったとしても諦める必要はありません。本作には遊べば遊ぶだけユーザーを強化するさまざまなシステムが用意されており、いつかはきっとクリアできるようになっています。
諦めなければ活路は開く豊富なパワーアップ要素!
本作はローグライクアクションのため、プレイごとに手に入るサブウェポンや装備品も異なります。ランダム性の高さはプレイの幅を広げるのですが、状況によってはプレイスタイルの障壁となることも。最悪の場合は「アイテムを取らない」選択肢も起こりうる本作ですが、どんなときでもプレイヤーを助ける強化要素も用意されています。
アベルの恒久的なパッシブ強化要素「ルーン」は、ステージ内のチャレンジ、異世界で手に入れたアイテム数によって獲得可能。広野の本拠地あるルーン用の台座ではルーンをひとつだけ発動状態にすることが可能で、「敵を倒すと30ゴールド手に入る可能性がある」から「敵を倒すとさらに500ゴールド手に入る可能性がある」などの性能強化が行なえます。
そのほか、ストーリーを進めることで新たに魂石の能力やドロップ率を強化できるようになるNPCが本拠地に登場。本作は必ず最初のステージから開始になるため、序盤ステージに登場する敵の魂石強化をするとプレイが安定します。特に「バット」の魂石効果「一定確率で攻撃時にHP回復」の入手と確率強化は長丁場の探索ではほぼ必須です。
本拠地にはそのほか、クエスト受注用NPCや回想シーン用NPCなども登場。それぞれがさまざまなサポートでプレイヤーを助けてくれます。難易度が高めの本作ですが、プレイすればするほどゲームの進行を楽にしてくれる優れたサポートのおかげで、ゲームプレイ自体にはストレスを感じさせません。
引き込まれる物語!ただしローカライズされてない部分が…
本作の魅力的な要素に、その複雑でしっかりと練り込まれたストーリーがあります。特にパラレルワールドの複雑さの表現がとても上手でわかりやすく、探索要素や主人公の目的にしっかり落とし込んでいるのが非常に好印象。メインキャラであるアベルとウィルは、それぞれ真面目とお調子者のバランスが良く会話も面白いのでテキストも読み応えがあります。
最初の「泥のパラレルワールド」をクリアした後は新たな世界が登場し、同じステージでも敵の能力やギミックが異なります。また、登場するエリアスなどの重要NPCもその世界ごとに立ち位置が異なるため、ストーリーが少しずつ解き明かされていく楽しみもあります。アベルが己の「ちょっとした未来」を知ることで少し思慮深くなるなど、非常に丁寧でしっかり作られた物語です。
しかし、テキストが面白いからこそ、本作のローカライズが不完全なことが非常に惜しい点になってしまいます。ストーリー上での重要なテキストはある程度日本語化されているのですが、ほとんどのNPCとの会話、アイテムの説明の大部分、クエスト内容などシステムに関わる説明などが突然中国語になってしまうのです。これは日本語に限らず英語クライアントでも変わらないため、ほとんど読み解くのが不可能です。
ステージ内に登場するNPCはなにかしら事情を抱えていそうなキャラも多く、複数の出会いで何かしら会話内容が変わっていることも。しかし、いかんせんその内容を確認できないため、本作のパラレルワールドに絡む複雑な設定の重要な部分を逃している気分にさせられます。また、アイテムの説明がわからないのは致命的。未翻訳されてるのが比較的手に入りづらい「アルカナ」に多いため、使って覚えるというのもやりづらい状況です。
Steamストアページによると、日本語化作業は進めているもののまだまだ時間がかかるようです。現在日本語化されている部分でも十分世界観の魅力は伝わるため、今後に期待したいところです。
総評
探索アクションゲームとして、非常に高い完成度に至っている『Kelipot / 形骸骑士』。滑らかなアニメのアクションや豊富な装備によるパワーアップ、遊べば遊ぶほどに選択肢の幅が拡がるシステムなど、あらゆる要素が非常に好バランスで理解しやすく作られています。
魅力的なキャラクターや世界観を持ち、先が気になるようなストーリーも良い印象。それぞれの異世界で異なるキャラクターの立ち位置、さまざまな世界に触れたからこそ生まれるアベルの選択など、物語としての深みも明確に表現されています。だからこそ、日本語に関してはローカライズが中途半端な状態である現状、作品が本来持つ魅力がスポイルされてしまっている状態であるのは心苦しい部分です。ローカライズ品質の保証が開発の責任であるのかについては本稿では触れませんが。
いずれにしても日本人にとって、このよくできた探索アクションが触れづらい、「惜しい作品」になってしまっているのは、残念であると言わざるを得ません。
良い点
・非常にレベルが高いアクションゲームの魅力
・パラレルワールドを活かした気になるストーリー
・個性豊かで魅力的なアートワーク
悪い点
・魅力を損なう不完全なローカライズ
・ボス戦がとつぜん弾幕になる初見殺しは人を選ぶかも