中国や日本だけにとどまらず、世界的な人気を誇る「三国志」。漫画・小説・映画・ゲーム……と、あらゆるエンターテインメントの題材となり、日本でも多くの人に受け入れられていることは、今さら解説するまでもありません。
コーエーテクモゲームスの代表作でもある有名なゲーム『三國志』シリーズも2020年に14作目がリリースされるなど、ゲーマーからも永く愛されています。しかし「三国志」そのものを詳しく理解してプレイしている方はそこまで多くはないのではないでしょうか。
5月には同社の『三國志13』をベースにしたスマートフォンタイトル『三國志 真戦』が日本でのサービス開始を予定しているということで、改めて「三国志」について知識を深めるべくGame*Sparkの連載「中華ゲーム見聞録」でもお馴染み、三国志など中国の歴史に関する著書も多い作家の渡辺仙州さんに、改めてゲーマーでも知っておくべき「三国志」の歴史、そしてゲームがもっと楽しくなる知識を解説していただきます。※本稿では、ゲームIPは全て「三國志」表記、物語などについては「三国志」と表記します。
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そもそも三国志とは?
中国の神話では、古代に「三皇五帝」という8人の帝王がいました。その後、中国最古の王朝と言われる「夏王朝」が興ります。やがて夏王朝が衰退して滅亡し、「殷(商)」が取って代わります。この殷も衰退し、「周」によって滅ぼされてしまいます。殷と周の戦いは、太公望の活躍する「封神演義」という小説の舞台にもなっていますね。
周は天下の覇権を握りましたが、「東周」「西周」に分裂して内乱を起こし、衰退しました。すると、これまで周に従ってきた天下の諸侯たちが各地で独立し、領土の奪い合いを始めます。この時期の前半を「春秋時代」、後半を「戦国時代」といいます。力のある諸侯は「覇者」と呼ばれました。
そして漫画「キングダム」でもお馴染みの「秦の始皇帝」が天下を統一し、「皇帝」を称することになります。しかし始皇帝の死後、またもや天下が乱れました。この動乱で台頭した項羽と劉邦が覇を競い、最後には劉邦が勝利して「漢王朝」を築きます。
漢王朝は、途中で王莽という人物に簒奪されたことはあったものの、その後また権力を取り返して存続しました。王莽に簒奪される前を「前漢」、取り返した後を「後漢」と言います。中国だと「西漢」「東漢」と呼び方が一般的ですね。
「三国志」の物語は、この後漢の末期から始まります。政治が腐敗し、貧困に喘ぐ農民たちを取り込んだ「太平道」という宗教団体が各地で反乱を起こしました。黄色い頭巾を頭に巻いたことから「黄巾の乱」と呼ばれます。朝廷は彼らを賊徒と見なし、鎮圧のために軍を送りました。ここで活躍したのが、後の三国時代の礎となる曹操・孫堅・劉備の3人です。
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黄巾の乱は平定されたものの、漢王朝は衰退し、各地で諸侯たちが勢力を伸ばしていきます。特に曹操は漢王朝の皇帝を保護するという名目の元、中国北部で大きな権力を握り、やがて「魏王」の位まで上り詰めます。曹操亡き後、息子の曹丕が漢王朝を滅ぼし、自らが皇帝となって「魏王朝」を打ち立てました。
一方、孫堅の息子の孫権も中国南東部で勢力を伸ばし、「呉」を建国して皇帝となります。また劉備も中国南西部で「蜀」を建国し、皇帝となります。皇帝は「天子」とも言われ、天下にただ一人でなければならないのですが、この時代には3人の皇帝が存在したのです。この「魏・呉・蜀」の三国が覇を競った時代を「三国時代」と言います。
中国で「三国志」というと、陳寿という人物の編纂した歴史書のことを指します。「三国志」では、後漢末期から三国時代、そして三国を統一した晋の時代までの歴史が、紀伝体で記されています。皇帝の一生を記した「本紀」と、個々の人物を記した「列伝」などによって構成されており、簡単に言うと「人物事典」のようなものです。
しかし人物事典を読んでも全体の流れが分かりませんし、そもそも簡潔に書かれすぎているため面白くもありません。ここで活躍したのが、民間の噺家たちです。話を面白くするために脚色が入っていき、武将は一騎当千の超人として、軍師は魔術師のような存在として語られていきます。
これら民間の「物語としての三国志」の集大成となったのが、明代の「三国志演義」という小説です。中国では「三国演義」と呼ばれることが多いですね。現在、広く知られている三国志の物語は、この「三国演義」がベースとなっています。
「三国演義」においては、忠義や裏切りなど、人間ドラマを中心とした物語が展開されていきます。貧しいムシロ売りの劉備が、関羽・張飛という猛将、そして諸葛亮という名軍師に支えられ、苦難を乗り越えながら蜀を建国するといった立身出世の物語は、中国の多くの人たちに愛されてきました。曹操は悪役的に描かれ、劉備の前に立ちはだかる巨大な敵として物語を盛り上げてくれます。登場人物が多く、様々な人間の生き様を見ることができるのも三国志の魅力と言えるでしょう。
現代における三国志の流行とゲーム『三國志』の登場
日本での三国志の流行ですが、やはり吉川英治氏の著した「三国志」の存在が大きいでしょう。筆者の、台湾の祖父の家にもなぜか六興出版版(全10巻)が置いてあって、子供の頃に読んでいました。古い本なので、「三国志」が「三國志」と漢字はすべて旧字体で、「わかった」が「わかつた」など小書きが無くて読みにくいものでした。しかし物語自体が面白いので、苦になりませんでした。
この吉川英治氏の小説をベースにしたのが、横山光輝氏の漫画「三国志」(全60巻)です。「学校の図書館で読める漫画」として、三国志をよく知らない生徒たちにも人気がありました。この作品も、日本での三国志ブームへの多大な貢献を果たしています。
しかしマイナーな武将や正史「三国志」にまで人々の興味が及んだのは、やはりコーエーテクモゲームス『三國志』シリーズの存在が大きいでしょう。1作目が1985年にPC-8801mkIISRというNECのパソコンでリリースされた同作は、1988年にファミコン版が登場してから広く知られるようになりました。特徴としては、国同士の戦いの中に、数多くの「武将」が登場することです。そして武将の能力が「数値」として可視化されたことですね。
「三国志」の小説や漫画を読んでいて、「呂布は強い」「諸葛亮は頭が良い」というのは分かるのですが、具体的にどれぐらいの能力なのか、他の武将と比較するとどうなのかというのが、ゲームを通して数値で把握できるようになったのです。このことから、三国志の武将がぐっと身近な存在になったかと思います。正史「三国志」やその他の史書を読み込むほど深堀りされるようになったのも、ゲームの存在が大きいと言えるでしょう。
現代における三国志は、物語性もさることながら、「武将のキャラクター性」がかなり重視されるようになりました。『三國志』シリーズもナンバリングが進むごとに武将のパラメータや能力を加えていき、「個性」が発揮されるように作られていきました。
今回サービスが開始となる『三國志 真戦』はシリーズ13作目『三國志13』のIPを使用し、コーエーテクモゲームスの監修の元で開発されています。本作においても武将の個性が重視されており、多くの資料からそのキャラクター性を再現させています。
例えば諸葛亮の名軍師ぶり、知能の高さは知力に反映されていますし、武将のスキルにもその特徴が見て取れますね。
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本作における武将は、『三國志』シリーズでお馴染みの「武力・統率・政治・知力・魅力」の5つのパラメータに加え、戦場における軍の進行速度を表す「速度」が付け加えられています。またそれぞれの兵科の得意・不得意をS~Cにランク分けして表現しています。
例えば、蜀の名軍師・名政治家で知られる諸葛亮を再び例に取ると、知力・政治・統率・魅力が高い反面、武力は低めです。また弓兵・槍兵・兵器といった得意兵科とする一方、騎兵は苦手であり、歩兵中心なので速度も低くなっています。
諸葛亮の戦法としては「神機妙算」があります。これは確率で敵の戦法の発動を失敗させ、計略ダメージを与えるというものです。「三国演義」においても諸葛亮は敵の計略を見抜き、逆に利用するといった場面が多く見られました。特に呉の軍師・周瑜や、南蛮王・孟獲、魏の軍師・司馬懿は策を何度も見破られ、手痛い反撃に遭っていますね。
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一方、三国志最強の武将ともされる呂布は、武力が高い反面、「知力・政治」は低く設定されています。また裏切りが多かったことから、魅力も低いです。
それと呂布は「赤兎馬」と言う名馬に乗っていたことから、速度は諸葛亮の2倍以上もあります。得意兵科はもちろん騎兵で、兵器を操るのは苦手。城攻めよりも、機動力を活かして野戦で活躍するタイプの将ですね。
戦法には、一騎討ちを発生させる「天下無双」があります。武力の高い呂布としては、兵士同士を戦わせるよりも、直接敵将を討ち取ってしまった方が手っ取り早いでしょう。
同様に、本作では他の武将もそれぞれ特徴のあるパラメータや戦法が設定されています。本作をプレイすることによって、三国志武将への理解度がより深められるかと思います。
みんなで遊べる『三國志』!『三國志 真戦』の魅力に迫る
ゲーム『三國志』シリーズにおける「戦争」ですが、チェスや将棋のような「1対1」のシチュエーションではなく、複数の勢力が参戦し、それぞれの思惑が複雑に絡み合うことになります。
コンピュータを用いたストラテジーである『三國志』シリーズは、基本的には1人で遊ぶシングルプレイが中心。シリーズ作品によっては、ターンごとにプレイヤーを交代して遊ぶマルチプレイも可能なのですが、ローカル環境でしかプレイできませんし、このように遊ぶプレイヤーはあまりいないかと思います。
しかし、『三國志 真戦』では、無数のプレイヤーが一つのサーバーでプレイすることができるため、ナンバリングの『三國志』シリーズで実現できなかったオンラインマルチプレイが可能になりました。それにより、シーズンごとに新しい舞台で覇業をとげることが可能になっています。「みんなで『三國志』シリーズを遊んでみたい。共闘して中国を統一したい」と思っていた方には朗報ではないでしょうか。
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なお、本作では最大で200人対200人の戦いも可能です。プレイヤーはそれぞれ5つの部隊を指揮することができるほか、主要城ではさらに5部隊指揮できるため最大で2,000部隊対2,000部隊といった大規模な戦闘が行われることになります。三国時代における「官渡の戦い」や「赤壁の戦い」といったような、大規模集団戦を経験することができるでしょう。
また戦いにおいては、武将同士の力の差だけでなく、兵種による相性も重要です。例えば騎兵はその速度を活かして敵に接近できるため弓兵に強いですが、槍兵に対しては弱くなります。それぞれの兵種の特徴を考えて戦わなければなりません。
これが集団戦になると、思わぬところから苦手な兵種を率いる敵が現われて惨敗などという展開になったりもします。予想のつかない熱い戦いが繰り広げられることになるでしょう。相性の悪い兵種を避け、カウンターとなる兵種で攻撃するなど、実際の戦闘のように状況判断をすることが大切になります。
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『三國志 真戦』のゲームシステムですが、内政をして自分の国を育て、武将を登用し、他国の城を占領して領土を拡大し、天下を統一するという過程は、これまでの『三國志』シリーズのコンセプトを踏襲しています。『三國志』シリーズをプレイしたことのある方には馴染みやすいでしょう。
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戦争パートについては、IP元である『三國志13』のシステムをベースとしています。歴史研究に多くの時間を費やして再現した三国時代のマップを舞台に、各プレイヤーはそれぞれ攻めたい地点へと軍を動かします。長距離を移動すれば、当然兵士たちは疲れてしまいます。
また、リアルな山が再現されているため、行軍する際には、その山をよけて目的地に向かわなければなりません。単純に平坦で一直線な道を行軍するよりも時間がかかりますし、疲れも相当なものとなるでしょう。疲弊した軍は「士気」が落ち、普段の力を出すことはできなくなります。いくら呂布や関羽といった猛将が軍を率いていたとしても、士気の低い軍では勝ち目がありません。
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士気を落とさないためには、できるだけ進軍の楽なルートを通らなければなりません。もちろん守備側はそれを予測して関所の守りについたり、柵や櫓などを建設したりして進軍を妨げるでしょう。また友軍に連絡して、敵の背後を突く作戦に出るかもしれません。
実際、三国志においても、軍の士気は戦況を左右する重要な要素になっています。例えば「合肥の戦い」においては、10万の兵を率いて攻め込んできた孫権に対して、合肥城にいた魏軍はたったの7,000でした。しかし魏の名将・張遼は800の兵を率いて奇襲を仕掛け、本陣に斬り込んで孫権を敗走させることに成功。この奇襲によって呉軍は士気が低下し、陣中で疫病が流行したことも相まって、城攻めを断念して退却します。
しかしその退却時に、張遼はさらに追撃をかけ、孫権を追い詰めます。あと一歩のところでしたが、孫権の顔を知らなかったため、捕らえ損ねてしまいました。兵力差があっても、士気の違いによって戦局がひっくり返されてしまうのも三国志の面白いところですね。本作の戦場でもそのような逆転劇を楽しむことができるでしょう。
まとめ
これまでのナンバリング『三國志』シリーズになかった「オンラインでのマルチプレイ」を実現させた本作。現在までに全世界で5,000万ダウンロードを突破するという人気ゲームとなりました。最大で200人対200人が戦えるというのも魅力です。
ちなみに筆者は課金が嫌いなのでスマホゲームはほとんど遊ばないのですが、本作はよくあるような「資源や兵士への課金」というのが無く、「Pay to Win(お金を払って勝つ)」という内容にはなっていません。競技ゲームとしての公平性が保たれており、武将の能力だけは相手に勝てないようになっています。勝利のためにはプレイヤーの知力が重要になるでしょう。
『三國志』シリーズを遊んだことがあり、マルチプレイを待望していた方は、ぜひとも本作を試してみてください。また「三国志」に興味が無かった方も、本作を通じて武将に興味を持ち、そこから三国志の世界に入っていくのもいいかと思います。それでは良き三国志ライフを!
※記事内の画像はすべて開発中のものです。
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