『Demon’s Soul』に『Returnal』と、高難度ゲームが目立つPlayStation 5専用タイトル。あれ?もしかしてPS5のゲームって難しいのでは?いえいえ、そんな時代もついに終わります。『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』によって!
本作を一言で表せば、「だれもが楽しめる冒険活劇」。もちろん手ごわい戦闘も出てきますが、全編にわたって大きなストレスを感じることなく、われらがヒーローラチェットとクランクの冒険が楽しめます。
「幸運にもPS5が手に入ったけど、専用ソフトはめちゃ難しいらしい……」そんな問題はこれでもう解決です。
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『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』はシリーズの最新作にして、PS5の性能を思いっきり活用した専用タイトル。ふわふわの主人公「ラチェット」や金属ボディの相棒「クランク」から、探索しがいのある大きなフィールドまで、ロードはほぼなしで描ききってくれます。
本作は、次元を操る「ディメンジョネイター」を巡って次元を超えた冒険が描かれ、もうひとりの主人公、「リベット」が初登場します。彼女はラチェットと同じロンバックス族で、インタビューによると別次元のラチェットといえる存在だそうです。別次元ではラチェットに対するリベットのように、懐かしのキャラクターの別次元の姿も登場します。
『ラチェット&クランク』シリーズは、2002年にPlayStation 2でリリースされた初代から20年近く続く長寿シリーズですが、Insomniac Gamesによると本作はPS3向けタイトル『ラチェット&クランク INTO THE NEXUS』と初代を再構築したPS4向けタイトル『ラチェット&クランク THE GAME』の続編とのこと。
シリーズをまったく遊んでいない不勉強な筆者でも本作は十分楽しめましたし、もちろんシリーズをやっていた方はさらに楽しめるでしょう。登場人物はみんなキャラが濃くて楽しいので、出てきた途端に昔からの顔なじみのようです。
幸運にもローカルゲーム屋さんでPS5を手に入れてゲームをプレイする機会に恵まれたので、本作の魅力をご紹介したいと思います。
いちばん気になるのは「PS5ならではの機能」っすよね。
ロードが爆速、コントローラーがすごい、3Dサウンドがヤバい……。PS5は無数の気になる新機能を搭載しており、それらは本作でも存分に発揮されています。
まずは高速SSD。本作ではゲーム中のロードはほぼなし。次々とマップが切り替わるシーンは発表時から常に本作の特徴として挙げられていましたが、筆者としてはそちらで驚くことはあまりなかったんですよね。すごいとは思うのですけれど。
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むしろSSDの威力をもっとも感じたのは、ゲームの起動からラチェットを操作するまでの時間の短さです。
速いと書いてもなかなか想像つかないと思うので、動画で紹介したいと思います。ゲームを起動してからロードが終わるまでを撮影しました。製作会社のロゴなども初回起動以降は一切出ず、起動、スタート画面、メインメニュー、プレイとパパパっと移動します。
参考までに、PS4の『ラチェット&クランク THE GAME』を外付けSSDにインストールして比較しました。単純な比較はできませんが、PS5の性能の一端が分かると思います。『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』は起動からラチェットを操作するまで15秒、『ラチェット&クランク THE GAME』は30秒ほどでした。
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本体の次はコントローラー。「DualSense ワイヤレスコントローラー」にはPS4のDUALSHOCK 4にはない「アダプティブトリガー」と「ハプティックフィードバック」のふたつの新機能が搭載されています。
アダプティブトリガーは、LRトリガーの抵抗をゲームが制御できる機能。本作には武器に2種類の機能が用意されています。初期装備の「バーストピストル」はトリガーを半押しで単発、全押しで3発同時発射。ショットガン風の「エンフォーサー」は半押しで1発、全押しで2発同時発射するなど、さまざまな機能が用意されています。
戦闘に熱中しているときに半押しと全押しを間違えずに押すのは結構大変。そこで登場するのがアダプティブトリガーです。軽く抑えると半押しの部分で一度トリガーが固くなり、さらに押し込むと全押しになるおかげで、意外と難しいトリガーの押し込み加減をサポートしてくれます。
また、弾切れになるとトリガーが急に軽くなるので、戦闘に熱中して弾切れに気がつかないという心配もありません。「画面を見ていれば不要だろう」と思うかもしれませんが、思った以上に便利でした。
そして、アダプティブトリガーを使って楽しいのが連射武器。弾が出るごとにトリガーが軽く押し戻され、振動以外でも武器の反動を表現してくれます。
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もう一つの新機能ハプティックフィードバックですが、爆発が起きたときのような大きな振動はDUALSHOCK 4と差を感じませんでした。一方、小さくて細かい振動は素材感が伝わってくる「気がします」。
例えば雪の上を歩くときに霜柱を踏むような、細かな振動が表現されるのは今までにない表現だと思います。ハプティックフィードバックは、そんな細かな小さい振動の表現に最適だと感じました。
最後は3Dサウンド。PS5は「Tempest 3Dオーディオ技術」を搭載しており、一歩進んだ3Dオーディオ表現を実現しています。筆者はPS5向けの「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」を使用しましたが、これが効果抜群。敵のいる方向や高さが感じられ、ひとつひとつの音が指向性をもった波紋のようです。
特に3Dサウンド感が顕著だったのが、冒険の途中で立ち寄るバー。フロアで談笑する人々、コイントスの金属音、グラスが机をたたく音、ロデオの作動音などさまざまな音が、聞こえてくる場所が個別に分かるほどの定位感で楽しめました。Tempest 3Dオーディオに対応した3Dサラウンドヘッドフォンを持っていれば、ぜひ体験してみてほしいと思います。
舞台となる惑星は広いっす。でも、移動手段も多いので安心っす。
本作の大きな特徴は、個性豊かな惑星もさることながら、冒険する惑星の大きさです。『マイクラ』やオープンワールドゲーム並み……とはいいませんが、徒歩で探索するのは大変。ラチェットとリベットは、冒険の途中でさまざまな移動手段を発見します。
「State of Play」でも披露された惑星サルガッソーの「スピートル」ライドは、次元を飛び越えながら走る楽しいシーンでした。通常では通れない酸の海もへっちゃら。次々と変わる風景、ブーストの爽快感、衝突の緊張感を楽しみながら、敵も木箱も吹き飛ばして走り抜けましょう。
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ほかの星でもちょくちょく出てくるスピートルですが、出てこなければ当然乗れません。スピートルは登場しないのにとても広い星もあります。そこで手に入るのが、ガラメカ「ホバーブーツ」。ホバーブーツを使った通常移動も徒歩より速いのですが、最高なのが助走を付けるとさらに高速移動できること。マップの端から端まで移動するのも苦でなくなるスピードです。
ホバーブーツは移動と探索というゲームプレイを一変させる力がありました。惑星探索から制限時間以内に所定のルートをくぐり抜けるレース風のイベントまで、さまざまな場面で大活躍します。
ちなみに、これまでに公開されたトレイラーにもちょっとだけ登場。まるでちょい役な扱いですが、ゲームではこれを手に入れたらそれ以降使い倒しになる頼れる相棒です。
そうそう、 レールに乗って滑る「グラインドレール」も爽快感たっぷりです。PS5パワーで表現された広大なマップで、どんどん現れる危険をビュンビュン回避しながら走り抜けるシーンは、ゲーム全体を通してもハイライトでした。上記のトレイラーにもそのシーンがちょっぴり出てきてます。
やっぱり最大の楽しみは戦いっす。たくさんのガラメカを駆使して戦うのは最高っすね。
本作、武器ガラメカの種類がほんとに多い。少なくとも1枚のウエポンホイールに収まりきらない量の武器が出てきます。バーストピストルやエンフォーサー、ガトリングガンや極太ビームなど、公開されたゲームプレイトレイラーにはさまざまな武器ガラメカが出てきますよね。
ほかにどんな武器が登場するかはゲームを遊ぶまでのお楽しみということで伏せますが、個性的な武器でガンガン戦えます。お気に入りの武器はショートカットキーにも登録でき、戦闘よりも武器ホイールで何を使おうかニヤニヤしながら考える時間の方が長い、なんてことは......筆者は割とありました。
ウエポンホイールは好きなように並べ替え、使いやすくカスタマイズできます。
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長いことシューターファンをやってますが、「コンソールシューターは武器の所持制限がきつい」なんていってたのも今は昔ですね。キーボードの1から0まで、10個のキーでも登録しきれないほどの武器が登場することを保証します。
武器は使えば使うほどレベルアップ。レベルアップしたらショップでアップグレードしてさらに強力に。筆者が貧乏性なだけかもしれませんが、ある武器のレベルがカンストしたら別の武器をレベル上げついでに使ってみようかなと、いろいろな武器を使うことになるのは好感触です。レベルアップシステムがなければ、使い慣れた武器でばかり戦っていたかもしれません。
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『ラチェット&クランク』シリーズって近接攻撃主体だと勝手なイメージを持っていたんですが、本作はかなりシューター寄り。武器がこれだけ用意されていることからも、撃って戦うのがかなり楽しいゲームです。
戦闘で忘れてはならないのが「ファントムダッシュ」。敵の攻撃を回避するショートダッシュです。最近ではビデオゲームヒーローの必須技術になった気さえします。『Returnal』にもありましたし、『Demon's Soul』にもドッジロールが用意されてますよね。
実はこのファントムダッシュ、絶妙に使いづらいのが面白いです。近接攻撃をキャンセルして発動できないことを筆頭に、ほんの少しだけ使いづらく調整していると思います。
よって、場面によってはジャンプを使って敵の弾丸をかわしたり、フットワークでかいくぐったりすることも求められます。無敵回避だけに頼らず、場合によって使い分けるのが楽しいです。
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鍛えた武器、磨いた技術を思いっきり使えるのがボス戦です。小さなヒーローの行く手を阻む巨大なボスキャラ。手ごわい敵ですが、熱中して戦えるはず。もしも勝てなければレベルを上げてHPを増やして再び戦いを挑むのもいいでしょう。
本作の最大の魅力は「きっとだれもが楽しめる」間口の広さ
筆者は当事者ではないため「完璧」と太鼓判を押すことはできませんが、本作には豊富なアクセシビリティオプションが用意されています。複数の操作をワンキーにまとめたり、長押しと切り替えを選べたり、英語ですが公式サイトにはオプションがすべて掲載されています。
ストーリーとそれを彩るキャラクターたちも、きっとたくさんの人を幸せにするはず。ラチェットとクランクの友情には熱いものがありますし、悪役すらどこか憎めない、愛嬌のある脇役たちは見ているだけで楽しいです。
そして本作のもうひとりの主人公リベットは、ラチェットに負けない魅力で『ラチェクラ』ファミリーの仲間入りを果たします。
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リベットは「別次元のラチェット」。しかしラチェットと違い、彼女はなぜだか世界を救えません。そんな彼女の抱える物語は胸を打ちます。
エンディングを迎える頃には、きっとだれもが笑顔になっているはず。おじさんから見ると少し子供っぽさも感じますが、それでも「冒険活劇っていいな」と思いました。
そして最後にこれだけは覚えて帰ってください。「グリッチ」ちゃん超かわいい!彼女の大活躍は君の目で確かめてほしい!
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タイトル:【ラチェット&クランク パラレル・トラブル】
対応機種:PlayStation 5
記事におけるプレイ機種:PlayStation 5
発売日:2021年6月11日(金)
記事執筆時の著者プレイ時間:15時間
価格:通常版 パッケージ版/ダウンロード版:各 8,690円 デジタルデラックスエディション(ダウンロード版専売):9,790円