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最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2021年7月28日に、The Farm 51よりSteam版が配信された『Chernobylite』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Chernobylite』とは
本作はチェルノブイリ原発事故後のチェルノブイリ地区が舞台のSFホラーサバイバルRPGです。消息不明の婚約者の手掛かりを求め未だ放射線が残るチェルノブイリ地区を彷徨う主人公イーゴルの物語が描かれます。本作最大の特徴は、実際のチェルノブイリ地区に100日間滞在し作り上げた精巧なチェルノブイリの風景。こちらでは実際のチェルノブイリ立ち入り禁止地区とゲーム内映像の比較映像を見ることができます。なお、チェルノブイリでは2020年の大規模火災で焼失が起こっており、当時の詳細な風景はもはや本作でしか味わえないものとなっています。
『Chernobylite』のゲーム内容に迫る!
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ゲーム開始と同時にムービーが始まりました。どうやら主人公とタチヤナさんはご夫婦の様子。このタチヤナさんの消息を追うのが主人公イーゴルの目的です。しかしなぜ行方不明になったのか、その身に何があったのかはプレイヤーには一切明かされません。
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そんなタチヤナさんの行方を捜す、開始早々のミッションの一幕。本作には様々な要素がありますが、その中の一つにストーリーに影響する様々な選択肢が挙げられます。例えば、潜入任務を行う中、軽口を叩く仲間にどういった対応をするかで選択肢が表示されます。こういったやり取りの中で仲間と主人公イーゴルの間に信頼感や不信感が生まれます。
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本ミッションは潜入任務なので敵に見つからないように隠密行動をする必要があります。こういった点は『Tom clancy’s』シリーズや『Far Cry』シリーズのステルスに近いと感じました。しかし、敵に見つかってからも敵と交渉できるのが本作のユニークポイント。選択肢次第では上手く状況を切り抜けることができます。
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そしてチェルノブイリと言えば気になるのはやはり放射線量。おなじみ(?)ガイガーカウンターで線量測定を行います。本作は線量の高い場所に長居すると体力がガンガン削られていきますので、カリカリカリカリカリ……というあの特徴的な音がなったらすぐさまその場から離れないといけません。
そして潜入任務の果てに手に入れたのはタイトルにもなっています「チェルノブライト」。その力は絶大で、物理学者でもあるイーゴルの手にかかればワームホールを開くことだってできます。
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困惑しているうちにチェルノブイリの森の中に投げ出されてしまいました。ここからは本作の醍醐味である、拠点づくり、アイテム収集、そして婚約者タチアナさんの行方を探す情報収集、仲間集めが始まります。
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必要なのは「物資・情報・仲間」
中心となるゲーム内容は、アイテムを集めつつ、物語の謎を解いていく昼間、拠点をアップグレードし、集めた仲間に食料や薬を配給する夜間を繰り返してゲームが進んでいきます。一日の流れを簡単に説明すると、まず、主人公と仲間たちが昼間にどういった行動を取るかを決定します。この流れは『This War of Mine』と同じ感じです。探索する場所も、「食料、医薬品といった特定のアイテムが投下された区域」と「ストーリー進行に必要な情報を集められる区域」の二つがあります。今必要なのは食料なのか、銃のカスタマイズに必要な機械部品なのか……それらを見極めながら探索場所を決定する必要があります。
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区域に着いたらアイテム収集を行っていきます。薬草や機械部品、電子部品などを集め薬や銃器、インテリアなどを作成します。
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エリア道中は様々な障害が待ち受けています。放射線に有毒ガス、謎の武装組織NARが行く手を阻みます。
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特に厄介なのがNAR。彼らに見つかると結構な腕前で鉛弾を打ち込んできます。相当な距離を走って一分ほど潜伏することで追跡から逃れることができますが、草むらにしゃがみ込む程度ではあっという間に見つかってしまいます。なら見つかる前に始末してやる……と行きたいところですがこのイーゴルさん、不要な殺しをすると精神面にダメージを食らいます。そのためなるべくステルス行動で敵をやり過ごすのが最良となっています。
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精神面を回復するこのアイテム、即ち“酒”を見つけ出すまでは。
というわけで筆者のプレイスタイルは「イーゴルさんに敵を暗殺してもらい、病んだ心を酒で癒す」というややソシオパスじみたスタイルに落ち着きました。ごめんねイーゴルさん……二週目からは不殺でいくから……
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そして重要なのが仲間集め。後述しますチェルノブイリ原発突入作戦には多くの情報とバックアップしてくれる仲間が必要です。様々なキャラクターと交渉し、協力者として引き入れましょう。
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探索から戻れば夜のフェーズが始まります。そこでは食料の配分や設備の増強が行えます。この食料はなかなか補充することが難しく、毎日十分な量供給できるとは限りません。そしてご飯が食べられなければ主人公や仲間のステータスに影響します。
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設備の増強も一筋縄ではいきません。素材のほかに、電力や空気汚染、騒音などによる快適性がマイナスにならないように考えて設置しなければなりません。居心地の悪い拠点では仲間が離反する可能性が生まれてしまいます。こういった点も『This War of Mine』ライクなシステムです。
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最終目的は「チェルノブイリ原発」。どう攻略するかはプレイヤー次第
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本作の特徴的な点はまだあります。それは、最終目標であるチェルノブイリ原発突入作戦をいつでも行えるという点です。しかし画像の通り、たった二人で、どういうセキュリティがあり、どういった内部構造になってるかも不明な場所に突入するのはあまりにも無謀。協力者や情報を集めるのも全てはこのためです。
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しかしながら、別に協力者がいなくても、情報が集まっていなくても突入作戦を始めることは可能です。ちなみにその場合だと唯一の協力者オリヴィエさんに見限られてしまいますが。
様々なゲームのエッセンスを包含した“意欲作”
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本作をプレイしていて感じたのは、「様々なゲームのいいところを合わせた」作品だという点です。探索や仲間集め、資材の管理に選択肢によるストーリー分岐は多くの作品で既に使われてきた技法です。しかし、それらを組み合わせ、ゲームデザインとして完成させた本作には、ここでしか味わえないゲームプレイを提供すること間違いありません。すべての要素が高い水準でまとまっていると感じました。
そのほか、気になった点は以下の通りです。ご参考になれば幸いです。
良かった点
敵に倒されても即座にゲームオーバーにならず、敵地からの脱出というフェーズがある。
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主人公が死亡した際のデスペナルティの回避策がある。
マルチエンディングだが、重要な分岐地点に遡れる。「もう一周したいけど初めからやるのは・・・」という躊躇いが軽減される。
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チェルノブイリの風景が美しく描写されている。
美しいBGM
いつでも難易度変更が可能。かつ、「サバイバル」、「戦闘」、「基地管理」で細かく難易度を変更できるため、戦闘だけ苦手・・・というピンポイントな難易度調節ができる。
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気になった点
全体的にローディングが長い。
入り組んだ屋内には光源が無く、手持ちのライトもほとんど照らせないため迷子になりやすい。
放射線量が高い地点が割と多いため、一見広く見えるマップだが実際に回れる場所やルートは限定されている。
仲間や情報を集めるミッションでは、いわゆるお使いイベントになるため何度も繰り返すのが大変。
武器や設備の種類はそこまで豊富ではない。
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また、早期アクセス版では多くのバグが残っていたようですが、筆者がプレイしたところバグは一切気になりませんでした。
厳しく、それでも美しいチェルノブイリに満足
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謎の多いSFストーリーに、美しいグラフィック、丁寧なホラー要素と、仲間を作り情報を集め、最終目標のために取捨選択を進めていくゲーム展開。ゲームとしての完成度は非常に高く、製作チームのやりたいことを一気にぶつけられた心地よさがありました。
そして何よりも、ややソ連みを感じる建物に、生い茂った自然。チェルノブイリ地区ならではの風景を楽しむだけでも十分元が取れるゲームだと感じました。
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対応機種:PC(Steam / Epic Games ストア / GOG)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2021年7月28日(Steam版)
記事執筆時の著者プレイ時間:5時間
価格:通常価格 3,699円