気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Gamious開発、PC/XSX/Xbox One向けに9月1日にリリースされた田舎郵便配達アドベンチャー『Lake』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、大都市での慌ただしい生活に疲れた40代の女性Meredith Weissが、父の代わりに地元で郵便配達員になるアドベンチャーゲーム。電話もインターネットも無い美しい田舎の風景の中をドライブし、個性的なキャラクターたちと交流しながら2週間の日常生活を送ります。日本語にも対応済み。
『Lake』は、2,050円で配信中(Steam)。
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――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Jos Bouman氏(以下Jos)本作のリードライターでコゲームデザイナーのJos Boumanです。Gamiousはオランダ・ハールレムを拠点とするゲーム開発会社になります。Gamiousはおよそ10年前、弟のPimと一緒に設立しました。これまでにパズルゲームの『Lines』や石油掘削ゲーム『Turmoil』などを開発しています。
私が(今まで遊んだ中で)一番好きなゲームは『Warcraft II』です。2人とも夢中になって遊びました。当時はオンラインゲームというものが出てきたばかりの頃で、電話代が大変なことになったのを覚えています。このゲームのおかげで大学を中退しましたが、後悔はしていません!私たちは今でも毎年、クリスマスからお正月にかけて、何日間も一緒にゲームを楽しんでいますよ。
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
Jos本作はゲームディレクターのDylan Nagelが出してきたアイデアの一つでした。他の2つのアイデアはかなり詳細まで書かれていたのですが、本作のアイデアだけは、ただ綺麗な湖の周りを走るクルマの絵だけだったのです。彼は「何も気にせず、ただ手紙を配達しながらぐるぐるドライブしたい」と言っていました。私たちはこのアイデアがとても気に入り、すぐにプログラマーと環境アーティストと一緒に作業に取り掛かったのです。
本作のストーリーについても考え始めたのですが、心配事なくドライブするというのにぴったりなストーリーが出来上がるまで、かなり時間を要しました。こうして、シンプルで魅力的な小さいストーリーの集まりでありながら、そのすべてがメインストーリーに繋がっていくという本作の今の形が出来上がったのです。MeredithはProvidence Oaksに留まるのか…それとも仕事のために街に帰ってしまうのでしょうか?
――本作の特徴を教えてください。
Josおそらく、リラックスできるというのが一番の特徴でしょう。本作のストーリーでは、何かすごいことが起きるということはありません。殺人事件も起きませんし、宇宙人も出てきませんし、銀行強盗も発生しません。しかし「友情」「ワークライフバランス」「恋愛」「両親との関係」というテーマは全世界共通のものですので、深い没入感を得ることができるのではないでしょうか。スーパーヒーローより、本作のメインキャラクターであるMeredithの方が、共感しやすいでしょう。プレイヤーの皆さんには、携帯電話もインターネットも忘れて、本作の美しい世界を楽しみ、ただリラックスして頂きたいのです。
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――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
Jos特に具体的なターゲットを考えて作ったわけではありません。何より一番重視したのは、私たち自身が楽しめるゲームを作るということです。私たちももう10代ではありませんので、おそらく、本作は大人の人により楽しんでいただけるものに仕上がっているのではないかと思います。また、本作の舞台は1980年代ですので、80年代の映画、ゲーム、スポーツ、歴史、テクノロジーを元ネタとしたものが出てきます。そのため、懐かしさも感じられることでしょう。若いプレイヤーですと、そのすべてを理解するのは難しいと思います。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Jos様々な映画やドラマから色々な面でインスピレーションを受けています。いくつか例に出すと、「ツイン・ピークス」「スタンド・バイ・ミー」「たどりつけばアラスカ」「Detectorists」「チアーズ」ですね。ゲームですと、『Firewatch』の美しい舞台やリアルで大人っぽい会話などに影響を受けました。あと聞かれる前に言っておきますが、私たちが『DEATH STRANDING』について知る2年前から本作の開発はスタートしていました!まさか配達ゲームがこんなに成功するなんてと驚きましたし、おかげで本作の開発にも自信を持つことができましたね。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Jos幸運にも、それほど影響は受けませんでした。パンデミックが始まった頃は自宅からの作業を強制されましたが、すでに一番クリエイティブな判断が必要だった時期は過ぎていたのです。パンデミック前に、会議室の中で多くの人が集まり、クリエイティブな結論に辿り着けたのはとても良かったです。開発最後の一年は仕上げの段階で、完成形のイメージがしっかりできていました。本作の開発は予想よりもかなり長くなってしまいましたが、おそらく新型コロナがなかったとしてもそう変わらなかったでしょう。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Josご自由に配信してください!ただ、配信前に配信チャンネルをお知らせいただけますよう、お願いいたします。ホワイトリストに入れさせて頂きますので、こうすることでゲーム内で使われている楽曲の著作権問題をクリアすることができます。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Jos私の人生において、日本のゲームがどれだけ大きな存在であるか、少しお話させてください。私たちは子供の頃、MSXというコンピュータが家にあり、コナミのゲームはどれも素晴らしかったのを覚えています。その後、私たちはスーパーファミコンをたくさんプレイしました。『スーパーマリオカート』と『スーパーマリオワールド』は今でも私のお気に入りのゲームトップ5に入ります。それとは別に、コーエーのシミュレーションゲームも大好きでした。大人になると、私は任天堂の雑誌を作る仕事をするようになり、ゲームキューブ、ニンテンドーDS、そしてWiiについて書かせていただいたのです。
残念ながらまだ日本を訪れたことはないのですが、やりたいことリストの上位に入っています。東京オリンピックに合わせて日本に行ってみたいと思っていたのですが、それは新型コロナで叶いませんでした。代わりに村上春樹の本を一冊読みましたよ。(笑)
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。