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恋愛ゲームというジャンルはPCゲームの黎明期から続く息の長いジャンルの一つです。流石に当時からプレイしているという読者はいな・・・割といそうですね。ゲームにおける主要ジャンルとして『CLANNAD』や『月姫』のようなビジュアルノベルにしかり、PC-FXの『ブルーブレイカー』と言った恋愛ゲーム+RPGのような王道から『プロギアの嵐』のような恋愛+STGといった変わり種まで数多く存在しています。
とはいえ、多様性とアイデアに溢れる日本では光栄のネオロマンスシリーズのような女性向けの恋愛ゲーム、いわゆる乙女ゲームも結構な人気があり。Steamでもかなりの初期からroseVeRteというサークルさんが精力的に発表しています。
乙女ゲームを男性がプレイすることに対しても筆者としては特に大きな違和感もないのですが、価値観が人それぞれ違うように、最近ではノンバイナリーという考え方も一般的になってきました。
前置きが長くなりましたが、そんな性別を問わずドラマティックで一夏の体験ができる・・・ハクスラと性別を問わないノンバイナリーな恋愛シミュレーションを組み合わせた『Boyfriend Dungeon』のプレイレポをお届けします。
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プレイヤーのゲーム中の性別の設定を問わず、ゲーム中には同性愛などの恋愛観に触れる部分もあります。筆者はヘテロセクシャル(異性愛者)ではありますが、他の恋愛観に対して差別的意識や嫌悪感などの意識は持っておりません。ですが、そういった部分に嫌悪感などを抱かれる方はご注意下さい。
恋人のいないフリーな自分にイケメンや美女な武器が現れて迫られる!
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舞台となるヴェローナビーチでは今ダンジョンが空前のブーム。ダンジョンに現れるモンスターを狩ることで小遣い稼ぎができると沢山の人が押し寄せてきています。ですが、ヴェローナビーチは別名「恋人達の街」と呼ばれていて、出会いの街としても成り立っています。
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プレイヤーは、夏休みを利用して従兄弟のジェシーが以前住んでいた家に9月まで居候することになります。と同時に自身の母親から「過去にデートの経験もない」という問題の解決もジェシーに相談されており、彼からも問題の解決のため大胆になれとアドバイスをもらいます。
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そして、出会いの場でもあるダンジョンは命の危険もある場所になっているのですが、何故かこの街には武器に変身できる人間が数多くおり、変身できないプレイヤーは使い手として彼らを手にダンジョンに潜ることで武器と愛と友情を深めることができます。多分何を言っているのか理解できない人が結構いらっしゃると思いますが、筆者も「なんでやねん。」と思わず画面に突っ込んだくらいなので大丈夫です。
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街にあるモールは何故かダンジョンになっており、自身の恐怖を具現化する場所になっています。ダンジョンではジェシーの友人であるエストックのアイザックが待っており、チュートリアルを兼ねて戦闘の説明などを行ってくれます。
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プレイヤーにはスマホやテレビなどがモンスターとして襲いかかってきますが、他者との繋がりが恐怖として具現化されているとのこと。そしてダンジョンの深部へ進むことで自身の理解も深まるだろうとのことです。
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そしてダンジョンでは何故か武器人間が捕われており、救出することで彼らと関係を深めることができます。本作品で二番目に出会うサンダーはタルワールという曲剣でアイザックとは違った豪快でハデな戦闘が可能です。武器毎にも能力やコンボが違っており、プレイヤーの好みでゲームを進められます。
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ダンジョンで倒れるか、脱出すると結果に応じて経験値が手に入ります。そのときに装備していた武器とも関係が深まりますが、関係が深まるにつれ武器のスキルが解禁され攻略も楽になります。お金はデートでの支払いや、着替えの購入、アイテムの作成に使う素材の購入などに使えます。プレイヤー自身も経験値でレベルが上がるにつれHPが上がっていくので、最終的にはゴリ押しできるほどのHPになり、アクションが苦手なプレイヤーでもクリアできるようになっています。
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正直なことを言えば、本作品のハクスラ部分は他のハクスラ作品と比べると難易度も高くなく、素材とお金を回収するくらいしか要素としてはありません。隠し部屋の探索などもありますが、本作品の目玉はやはり恋愛シミュレーションとしての部分でしょう。
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スマートフォンに届くメッセージなど、登場人物は皆積極的にプレイヤーにアプローチをかけてきます。男女関係なく皆プレイヤーに何故か夢中で、一人はストーカー化するほどストーリー中に関わってきます。更に言えばプレイヤーが誰かに血道を上げていたとしても「特定のパートナーがいても問題ない」と面と向かって言ってきます。
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ダンジョン内にも特定の施設があり、スケートリンクやゲームセンターと言った場所で関係を深めることもできます。彼らにも抱えている問題などもあり関係が進めば人物を深く知ることができるでしょう。
中途半端な感じは否めない
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古くからゲームをプレイしている筆者としては少しアンバランスな感じは否めませんでした。ですが、多様な性に対してのアプローチ手法としては個人的には悪くないとは思います。愛の前に男性でも女性でも人間でもある必要は無いのですが、設定の中に若干「正しさ」的な押しつけを感じてしまったのは事実です。
全員と恋愛関係であっても別に問題は無い。確かに人類愛という観点でいえば正しいでしょう。ですが、そういった感情は誰かに強制されるものではなく、自然に持っている感情ではないかと私は思います。
ハイスピードなハクスラに、アプローチの積極さから展開の早いシーソーゲームを楽しめるのは本作品の間違いなく魅力です。アイザックのようにストイックだけど時に見せるプレイヤーへの依存といった差にキュンとなったり、サンダーのような情熱的だけどオッサン的なアプローチもドン引きすることもあれど、悪くないなと思う部分はあります。他の武器や登場人物にも魅力的な部分はあるのですが、そこは未見のプレイヤーの楽しみに残しておきましょう。
ですが、恋愛シミュレーションとしてある意味で性別を問わないアプローチに見事挑戦し、ハクスラ部分と相まって一つのゲームとして完成しているのは賞賛に値するでしょう。
一風変わった恋愛シミュレーション、もしくはハクスラをプレイしたいと思っているなら是非ともオススメです。
対応機種:PC(Steam)/Xbox One/Xbox X/Xbox S
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2021年8月12日(Steam版)
記事執筆時の著者プレイ時間:5時間
価格:2050円