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約25年前の1997年、『Age of Empires』という傑作シリーズタイトルが生まれました。古代文明をテーマにし、全てリアルタイムで内政や戦闘を一緒に行うリアルタイムストラテジーという概念を日本へ定着させたのは、正に本タイトルの大きな成果と言っていいでしょう。
今でこそ高速回線でダウンロード/インストールも早く簡単になり、Discordといったボイスコミュニケーションツールが簡単にインストールできる世の中になりましたが、初代タイトルのヒットと共に1999年に販売された『Age of Empires II』は、日本でもZoneと呼ばれる公式ネット対戦の場や、IRCなどでの対戦コミュニティはまだ電話回線が主流の時代。テレホーダイタイムと呼ばれた夜11時以降はプロバイダーには回線の逼迫も有り、簡単にはインターネットに繋がりませんでした。
対人戦を伴う白熱化はプロリーグの登場と相まって、当時の国際大会でもあったWCGに採用された『II』はPCゲーム黎明期の日本からも出場者が出るほど盛り上がっていました。この時出場し、優勝したHALEN氏は今でも伝説と呼ばれているほどの日本人プレイヤーで、『AoE2』『AoM』を当時プレイしていた人には耳にタコができるような話でしょう。なお、あまり知られていませんが、当時コナミからもPS2移植版が発売されていました。
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そんな『AoE』シリーズですが、2002年には古代ギリシャ神話をテーマにした『Age of Mythology』が発表され、シリーズも遂に3Dタイトルへ突入します。ゴッドパワーと呼ばれる神の力を行使できたり、決まった位置にしか街の中心を建てられないのが特徴のシリーズタイトルです。
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2005年には新大陸進出をテーマにしたナンバリングタイトルの『Age of EmpiresIII』も発売され、日本でも賞金付き大会が定期的に行われるほど盛り上がりました。本作品をキッカケに現e-Sportsプロモーター会社ともなっているJCGも誕生し、筆者も本ゲームの大会には根幹部分で大きく寄与させていただきました。
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そして2021年、遂に完全新作という形でナンバリングタイトルである『Age of Empires IV』が、10月29日に発売されることになります。今回は一足先にプレビューキーを頂きましたので、歴代シリーズプレイヤーでもある筆者より、細かくプレイレポートをお届け致します。
過去シリーズのリスペクトとなったゲームデザイン
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本シリーズの基本は街の中心と呼ばれる施設から町の人を生産し、資源を集めつつ建物や施設を建て、内政を整え、軍隊を編成し相手を打ち倒すのが目的。シリーズを通して共通かつ、25年間不変のルールです。
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資源は食料・木材・金貨・石材に分かれており、それぞれ町の人を送ることで資源の回収施設に取り込み資源として所有でき、この資源を元に文明を発展させていきます。
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また、時代が4つに分かれており、時代を進める毎に生産できるユニットや建造施設、試合を有利に進めるための研究などのロックも解除されていきます。進化システムは『IV』になって変わった点で、過去シリーズでいうと『III』のアジア文明の進化システムでもあった、文明毎に特徴のある建造物を建立することで次の時代へ進化していく仕組みです。
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相手を倒すには街の中心を含めた歴史的建造物を破壊するか、民族の象徴と呼ばれる建物を建立し、制限時間まで守りきることでも勝利となります。ゲームシステム的には過去シリーズの中でもオーソドックだった『II』に近く、割とゲームの開幕からハイスピードなゲーム展開になっています。
初心者向けの機能も拡充されて遊びやすく
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冒頭であえて触れなかったのですが、過去シリーズは現在「Definitive Edition」という名称で現代PC向けのリメイクが行われています。『Age of Empires II: Definitive Edition』で追加された孫子の兵法というモードは、初心者向けの操作や必須テクニックが学べる素晴らしいコンテンツになっています。マルチプレイヤーにいきなり飛び込もうとするとダイアログが出るようになったのもポイントでしょう。
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孫子の兵法は『IV』でも搭載されていますが、内容は基本とはいえ経験者でも結構手こずる内容になっており、全ての項目でゴールド評価を取れるようになれば、対人戦でもある程度戦える内容になっています。
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文明史を追う新機軸のキャンペーンモード
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過去作品のキャンペーンモードは過去の歴史をフィクションを交えつつ追体験するような構成になっていましたが、『IV』では超美麗な実写映像を使用した実際の歴史と資料を交え、ナレーションと共に各文明史の勉強にもなりえるモードとなっています。
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イギリスの勃興からフランスとの百年戦争、ロシアの元となったルーシ、中国大陸を席巻したモンゴルといった実際に使用できる文明がベースになっています。一つ一つのシナリオもボリュームがあり、数十時間にも及ぶコンテンツとして楽しめるでしょう。
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本作の文明で筆者が面白いと思うのはモンゴルでしょうか。ほぼ全ての建物を何時でも梱包して、自由な位置に再配置できるという移動民族としての特徴を反映したシステムは非常に独特です。『II』のフンとも近い性能にもなっており、人口枠が最初からマックスなのもポイントです。
だからこそ気になる細かいポイント
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リアルタイムストラテジー、ひいては『Age of Empires』というシリーズにおいてホットキーは勝敗にも関わる非常に重要な点です。『Age of Empires III: Definitive Edition』以降、全ての項目をほぼ簡略的なホットキーで扱えるオプションが追加されたのですが、昔ながらの細かい設定が一切できなくなっているのは、筆者的にはかなりのマイナスポイントです。
このホットキーはアップデートで改善されるかなと思っていますが、現段階だとあまりにも簡略化されているためかなり使いづらく、従来のAoEユーザーとしては細かくカスタマイズさせて欲しかったところです。
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反面、従来のシリーズの「Definitive Edition」でフレンドを招待するのも一手間かかったり、別プラットフォームとリストを横断したり……と結構面倒だったUIが大改善されていて、この点はかなりの評価です。
最後に
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過去シリーズを含めて既に数千時間以上プレイしていますが、『Age of Empires IV』でも相当な時間プレイすることになるのではないかと思っています。個人的には、操作の簡略化を目指して開幕で差が出づらくなった『III』が一番好きなのですが、過去のオーソドックスなスタイルに戻った『IV』は少々ストイックな気がしています。
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今回10年ぶりのナンバリングタイトルのプレイレポートという重責はありましたが、旧来のプレイヤーとして余すことなくプレイし倒しました。上記のホットキーの点など気になる部分はありますが、過去シリーズにも触れたことがないユーザーであっても初心者向けコンテンツが揃っていることで習熟しやすくなっているため、シリーズを始めるのに丁度いいタイミングでしょう。
歴史の波に乗って、マルチプレイという果ての無い新世界へ漕ぎ出しましょう!
対応機種:PC(Steam/Windows Games ストア)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2021年10月29日(Steam版)
記事執筆時の著者プレイ時間:13時間
価格:7590円(通常版)