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今年はゲーム音楽にとって大きな出来事があり、手放しとは行かない議論が巻き起こりました。それぞれに思うところはあるでしょうが、意見の違いはあっても互いを認め合い、戦いの矛を収めることを願うばかりです。
すぎやまこういち氏死去 享年90歳
電子音だった時代のゲーム音楽にクラシックの風を吹き込み、『ドラゴンクエスト』シリーズのメインコンポーザーとして業界を牽引した、すぎやまこういち氏が9月にお亡くなりになりました。昭和の時代から歌謡曲のヒットメーカーとして活躍し、ひょんなことからゲームに関わることになった経緯は何度も語られてきましたね。
すぎやま氏の追悼として、第72回NHK紅白歌合戦において、特別企画「カラフル特別企画 ~明日への勇気をくれる音楽~」内で『ドラゴンクエスト』の楽曲が演奏されることが発表されました。演奏はおなじみ東京都交響楽団です。
政治面では物議を醸しましたが、氏が去った後の『ドラクエ』はどうなるのか、今後の行方が気になるところです。いち早くオーケストラコンサートを開催し、「音楽」としての発展に大きく寄与した業績に感謝して、ご冥福をお祈り申し上げます。
TOKYO2020オリンピック開会式にゲーム音楽が採用
ゲムスパが口にできる資格があるのか、というお叱りはご尤もですが、今年最大のトピックはこれしかないでしょう。異例とトラブルにまみれて誰もが納得できるような状況ではありませんでしたし、賛否両論が渦巻く中で単純に良かったとは言えません。喜んだ人も怒った人も、お互いに相手を突っぱねず、ゲームを愛するもの同士丁寧な意見交換を心がけるようようお願いします。
ウマ娘が音楽番組に進出
今年のスマートフォンゲームを席巻したのは『ウマ娘 プリティダービー』でした。メディアミックスプロジェクト自体は2016年からスタートしていたものの、肝心のゲームは長い間延期されていました。それが今年2021年にようやくリリース、あれよあれよという間に大人気コンテンツへと成長しました。
本作は競走馬を取り巻く環境をアイドルとして解釈、レースで勝利した暁には「ウイニングライブ」が披露されます。これがゲームの枠を飛び出して音楽業界からも注目を浴び、地上波TVの音楽番組にも3回出演しました。先日は有馬記念にて海上自衛隊による「うまぴょい伝説」の演奏も披露されたとか。これからの展開に目が離せません。
鋒山亘氏がハリウッド音楽の「HMMA」を受賞
ハリウッドを拠点に活動を行っている鋒山亘氏(『AFRIKA』『ソウル・サクリファイス』)が手がけた『ラチェット&クランク パラレル・トラベル』が、劇伴音楽に送られる「ハリウッド・ミュージック・イン・メディア・アワード」(HMMA)においてゲーム音楽部門を受賞しました。他のノミネートは『BATTLEFIELD 2042』『NEW WORLD』『ROGUE LORDS』The Game Awardとは違うラインナップとなっており、部門も歌唱部門、モバイルゲーム部門の3種類と、音楽好きならこちらも要チェックです。
『ニーア レプリカントver.1.22474487139...』がThe Game Awards Best Score and Musicを受賞
『DEATHLOOP』『GotG』などのライバルを抑え、「世界のOKABE」による『ニーア レプリカントver.1.22474487139...』のサウンドトラックが今年の音楽部門を制しました。バージョンアップ版制作にあたり、管弦楽による生音を加えてリアレンジした本作。五輪開会式にも採用された「イニシエノウタ運命」は、原曲では力強く鳴っていたドラムを控えて、トランペットの勇壮さを加えた違うニュアンスになっています。3月には合唱による「Choir Arrangement Album」も発売予定です。
グラミー賞2022アレンジ部門に「メタナイトの逆襲」がノミネート
結果発表はまだ先ですが、アメリカ最大の音楽賞「グラミー賞」において、Best Arrangement, Instrumental or A Cappella部門にThe 8-Bit Big Bandの「Meta Knight's Revenge (From "Kirby Superstar")」がノミネートされました。『星のカービィ スーパーデラックス』の「メタナイトの逆襲」をビッグバンドで演奏しており、キレのある華やかなサウンドに生まれ変わっています。過去のグラミー賞ではAustin Wintory氏の『Journey』がノミネート、Christopher Tin氏の『Civilization IV』テーマ曲「Baba Yetu」が受賞しています。
『テイルズ オブ アライズ』に「Hello, again ~昔からある場所~」カバーが採用
タイアップ主題歌にこだわりがある『テイルズ』シリーズですが、まさかのカバー曲で話題になりました。オリジナルは1995年のMy Little Loverで、2015のアルバム「re:evergreen」ではリマスタリング+音源追加でまた違った印象になっています。
Game Soundtracks Best Selection in 2021
1,Game Music 2021
今年発売された作品とアレンジアルバムから約12時間分たっぷりと詰め込みました。こたつでゴロゴロ、大掃除などのお供に使っていただければ幸いです。長すぎるのでお好きなところから再生してくださいね。
2,TGA2021 Best Score and Music
今年のノミネートは『The Artful Escape』『サイバーパンク2077』『DEATHLOOP』『Marvel’s Guardians of the Galaxy』『ニーア レプリカントver.1.22474487139...』の5作品。どれも個性的な音楽が揃っており、ロックが重要な『サイバーパンク2077』と『GotG』は本格的なバンドサウンドを書き下ろしました。音楽好きには『The Artful Escape』は見逃せません。サントラには入っていませんが、ゲームプレイではプレイヤーが自在にギターをかき鳴らして宇宙を旅していく冒険が繰り広げられます。
『DEATHLOOP』の「Déjà Vu」は60年代をイメージしたパワフルなサウンドで高い評価を受けています。プレイ中の洒脱なBGMもスリリングなスパイ映画を連想させますね。別のボーカル曲「Down the Rabbit Hole」「Pitch Black」も雰囲気抜群です。
3, Indie Selection 2021
今年リリースしたインディーズ系からセレクト。こうして並べてみると生録音のリッチなサウンドが多く、ゲーム音楽の裾野がそれだけ広がったことを実感します。『Hundred Days』や『Chicoly: A Colorful Tale』『Unpacking』はアコースティックとデジタルの塩梅が心地よく、リラックスしたいときにちょうどいい雰囲気ですね。『The Longest Road on Earth』は音楽と映像から物語を想像する趣向の作品で、楽曲の歌詞がイメージを膨らませる手がかりになっています。Beícoli氏による表題曲は一緒にハミングしたくなるような軽快なカントリーソングです。