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日本のゲーム業界ではどこもかしこも馬ブーム、そんなビッグウェーブに本連載も乗っかり今回は『The Elder Scrolls V:Skyrim』に登場する重量級の馬に注目します。重い荷物を抱えてファストトラベルしてくれる力持ちではあるものの、「スカイリム 馬」で検索するとサジェストに「遅い」が出てくるくらい、シリーズの他作品と比べてもトップスピードの遅さが目立ちます。何故あえて遅くなっているのか、それは普通の馬とは違うタイプであるためなのです。
馬と一言でイメージするのはサラブレッドなどの競走馬タイプ、短い毛に細い足が特徴です。体重が軽い「軽種」に分類され、スピードに特化しているために重い物の牽引や足場の不安定な山岳地帯を苦手とします。レース用でない乗馬用は「中間種」で、パワーとスピードのバランス型。スカイリムにいるものはこれらの軽種、中間種とは異なり、一目で分かる一回り大きい蹄が特徴です。厩舎で愛馬を購入するときもパワーが強いことが強調されますね。
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このタイプは「重種」と呼ばれ、農耕や馬車などの文字通り重い物を得意とする労働に向いた馬です。日本に於いては重量曳きのばんえい競馬でこの重種が活躍しています。大きい物は体重1トンを超え、ペルシュロン、シャイアーという品種は体高(肩までの高さ)2メートル以上になる個体も出るそうです。記録に残る最大の馬はシャイアー種のSampson号で体高219センチ、体重は1,524キロ。頭の高さはそれよりも上なので、側に立つと真上から見下ろされるような格好になります。
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馬の脚は単蹄類、つまり人間の中指に当たる部分の一本だけで立っていて、歩く、走る動作だけでもかなりの負荷がかかります。競走馬の場合、一本でも使えなくなると残り三本の足では支えられなくなり、レース中の事故では「予後不良」としてその場で安楽死が決まります。急峻な山場に暮らす馬や、数百キロにもなる荷を運ぶ馬は平地を駆けるよりも強い負荷に耐える必要があるため、より安定する太い脚になっていきました。
スカイリムの馬の特徴はなんと言っても踏破能力と屈強さにあります。プレイヤーが登れない岩場も乗り越えられますし、斜め45度の崖も何のその、多少高いところから飛び降りてもまあまあ大丈夫。ハイフロスガーの険しい登山道も登頂までしっかり連れて行けます。また、騎乗動物としては馬は多くの作品に登場しますが、降りた後も自ら進んで攻撃に行く馬はそういないのではないでしょうか。『Skyrim』におけるこれらの特徴付けが山岳地に向いた重種らしさを表現しています。
ゲーム中では馬車ぐらいしか見かけませんが、林業が盛んなスカイリムでは木の運搬に馬が使われていると推察されます。動画のように山に入って伐り出した丸太を製材所まで運んだり、材木を購入者の元に運んだり、家を建てるプレイヤーの知らないところでお世話になっていることでしょう。
日本で労働に従事するものは輓馬(ばんば)と呼ばれ、体格によっては1トンの重さも曳けるので、機械が代替するまでは労働の主力を務めました。農業では鋤を付けて田畑を耕したり、粉挽き臼を動かす動力にもなります。戦後には大きく数を減らしましたが、東北や北海道では現在でも労働を担っているそうです。機械の入れない山林では馬搬のメリットがあり、重機のための道を作らずに済むので、余計な木を伐らなくて済みます。
重種の中でも人気があるのが白い足回りの毛、「距毛」が見栄えするクライスデール種。この品種は寒風吹きすさぶスコットランドを源流としており、寒さから脚先を守るために長い距毛があります。装飾を付けてパレードによく用いられ、ビールのバドワイザー社はイベント用にクライスデールのみのパレード隊を所有しています。
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『Anniversary Edition』に含まれるCreation Clubのコンテンツには馬鎧(バーディング)を着せられる物があり、駆け出しの冒険者には似合わない立派な物を用意してくれます。甲冑を着込んだ騎士を乗せれば立派な威厳を演出し、体格が大きく軍馬として有名なデストリア種は戦争よりも儀礼試合用としての人気が高かったようです。馬鎧と騎士を含めた重量は最大で120キロなので、実用面で言えばスピードの出るタイプが適しており、現存する馬鎧の多くが中型クラスの物です。それでも大型の軍馬は堂々たる風格を放つ憧れの存在だったのかもしれません。
花形の競走馬とは違う世界がある重量級の馬。『Skyrim』ではスピードを出してもやや物足りなさがあり、他の作品のような駿馬とは並べられないでしょう。それでもいざ戦いとなれば強敵にも果敢に挑み、力強い蹴りで盗賊のひとりやふたりくらいなら倒してくれます。単なる乗り物ではない頼もしい仲間として大切にしてあげましょう。
※UPDATE(2021/01/10 11:10):本文中の誤字を修正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。