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世界中様々なロケーションを再現するModも豊富な『Microsoft Flight Simulator』(以下『MSFS 2020』)。
同作で先日、日本に存在するアートの島「直島」を再現したModが無料公開されました。日本人でも知らない人も多いだろう「直島」の再現Mod、実は作製を発案したのはニュージーランド在住の日本人。
新たな種の蔓延により、再び人々の移動へと甚大な影響を与えているコロナ渦。そんな中お送りする本記事では、「直島」Modの発起人からいただいた、Mod開発の理由とその過程についての記事をお届けします。
Game*Spark読者のみなさま、こんにちは。いきなりですが、私は現在ニュージーランドに住んでいます。ニュージーランドではすでに2年間ほどコロナのせいで国境が閉鎖されており、海外に出たが最後、外国人の私は、妻がいるニュージーランドに再入国することができません。そのため私は最早、日本にも戻れず、他の国への旅行にも行けないため、ずっと『MSFS 2020』で旅行気分を味わっていました。特に最近は日本の名所を訪れることが多いです。
「直島」ってどんな島?
話は変わりますが、皆様は、日本が世界に誇るアートの島、「直島」をご存じでしょうか。90年代には産業廃棄物の不法投棄や煙害が問題となっていた島々の一つなのですが、その後、ベネッセの会長でもある福武總一郎らを中心に30年もの時間をかけて、今日では“アートの島”としてよみがえった奇跡の島です。
島のあちらこちらにアート作品がちりばめられており、草間彌生や安藤忠雄など日本を代表する芸術家や建築家の作品を満喫できます。
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去年の秋に台風で流されてしまいましたが、草間彌生の黄色いかぼちゃが有名です。
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フェリーターミナルにも赤いかぼちゃやかわいい椅子たちがあります。
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こんなオブジェが海岸にあったりして、とにかく遊び心、芸術心満点の島なのです。
直島は、ナショナルジオグラフィックの「The Cool list」、ニューヨークタイムズの「52の行くべき場所 (52 plaese to GO)」、WIREDなどのブランドを持つコンデナストの「次世代の7不思議 (The next 7 WONDERS)」にも選ばれ、2021年の映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも直島にある地中美術館をモチーフにした建物が出てきます。知れば知るほど、とにかくすごい島なんです。
『Microsoft Flight Simulator』で直島を飛んでみたものの・・・
きっかけはふとしたことでした。前述の通り日本に戻ることすらできなかった私は、そんな直島の風景が恋しくなり、『MSFS2020』で同所まで飛んでみることにしたのです。日本にいた頃、妻と直島に遊びに行こうという話をしていたのですが、結局行くことができず、やがてはそのままになっていたという思い出もあり、わくわくしての出発です。
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岡南飛行場から出発し、さっそく直島が見えてきました!!!ワクワクするぜ!!
やはり直島といえば、草間彌生がデザインした黄色と赤の巨大かぼちゃ。早速見に行ってみましょう!!まずは直島の玄関であるフェリーターミナルへ!!
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……建物ひとつありません。ついでに、前述の有名な黄色いかぼちゃも見に行ってみます。
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……ガーン。こちらも何もない。それならばと、安藤忠雄の設計した美しい地中美術館や宿泊施設はどうでしょうか。
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地中に埋まっているはずの美術館もおかしな形状で地面に出てきている……。なんなのこれ。
こんな調子でいろいろ飛んで回ったのですが、残念なことにこれといったものは何一つなく、やがて悲しくなってきました……。もちろん、プレイヤーには知られている通り『MSFS 2020』のランドマークの多くは、AIによる建物の自動生成で成り立っています。それでも、軍艦島など要所要所はしっかり作りこまれているのに、日本を代表するこの直島がこんなていたらくというのは悲しすぎました。
ベネッセの会長である福武聰一郎や、世界の建築家安藤忠雄が『MSFS 2020』をやっているかはわかりませんが、彼ら大御所を含め、直島の皆さんがこの惨事をみたらきっと悲しむに違いありません。何よりも、私の期待と全く異なるこの惨状は許せるものではなく……。
そういうわけで、自分で直島を作ることにしました
『MSFS 2020』はユーザーがアドオンを作り、望むように景色を変えたり地形を整えたりすることができます。有名なものでは、海に空母を配備してそこから離着陸できるようにしたり、中にはゴジラみたいな巨大生物を作るような人までいます。今回、私は直島を、あのかつて見た美しい風景へと戻すべく、アドオンの制作へと手を伸ばすことにしたのです。
一からの勉強でしたが、基本的な流れは
Blenderで建物や小物を3Dモデリングする
それをMSFS2020のフォーマットに直してオブジェクトを生成する
MSFS2020のフォーマットになったオブジェクトを開発モードで地図の上に配備していく
地形や草木を整えたり、テトラポッドや堤防などを配置していく
といった感じです。youtubeを見てひたすら勉強しました。
なお、私が見てきた中でも勉強におすすめのチャンネルは
GAO CHAN https://www.youtube.com/channel/UCXyToooYx7l3H5Lj8InfOGA/videos
Flying Theston https://www.youtube.com/channel/UCTrmxNqBCjRpnrMmDQeDMiA
です。アドオンを作りたい方はご参考に。
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はじめての3Dモデリングで、色々と戸惑いましたが、こんな感じでオラオラと作っていきます。
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意外とすんなり行けるかもと思いながらも2カ月ぐらい作っていたある日。突然これまで作りこんでいた全ての建物や地形がゲーム内から消えてしまったのです……。比較的マニアの多い海外の掲示板で質問したり色々なサイトを見て原因を調べたのですが、原因はどこまで行っても「よくわからん」という状況で八方塞がり。
途中でセーブしたデータまで使えなくなってしまったのは未だに意味が分かりません。いずれにしても、巻き戻すこともできない、先に進むこともできない、生半可な知識では太刀打ちできないと、完全に目の前が真っ暗になってしまいました。
GAOさんに助けを求めた
そこでもはや、藁にもすがる思いで上記YouTubeチャンネルで作り方等を紹介しているGAOさんに連絡し、経緯をお話しさせていただきました。その結果、なんと光栄にも作成にご協力いただき、原因の解明を試みることができました。
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GAOさんは、先ほども紹介したこちらのチャンネルの管理者です。
はっきりした原因は最後までわからなかったのですが、「作っているオブジェクトが複雑すぎるせいでゲームに読み込まれなくなってしまったり、一つのオブジェクトのビルドが失敗することで連鎖的にほかのオブジェクトも読み込まれなくなってしまった」などが考えられるようです。
そして結論として「一から作り直しましょう」、ということに。なかなか難しい判断でしたが、今から考えるとそれが一番正しい選択だったと思います。
これ以降、『MSFS 2020』アドオンとしての作成は、私からGAOさんにバトンタッチされ、以降は恐ろしい精度と速度で開発が進みました。
そしてバージョン1が完成!
見よう見まねで作っていた私とは異なり、GAOさんは百戦錬磨の黒帯有段者ですので、今までが嘘のようにオブジェクトが完成していきます。そして、私の出る幕は全くなく(本当に全くなく)、バージョン1が完成したのです。ありがとうGAOさん!!これは完全にあなたの成果です!!
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このアドオンの中には直島にあるモニュメントや建物が多く再現されており、GAOさんの気合と、直島愛を感じずにはいられない作りになっております。アドオンの中には数多くの小物や芸術的な建物がちりばめられているので、ぜひ旅行気分で楽しんでください。その中のいくつかを紹介させていただきます。
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こちらは有名な草間彌生のかぼちゃです。実物は去年台風で吹き飛ばされてしまったため、現在修復中とのこと。テカテカな質感までしっかりと作られています。
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そしてこちらは安藤忠雄設計の「ベネッセアートミュージアム」。宿泊施設と美術館が一体化していて、美術館の中に寝泊まりするような体験ができる施設です。草間彌生や安藤忠雄など、まさに日本が誇る芸術のオンパレードです。遠くから見ても小さなモニュメントが見えますね。しっかり再現されているので、ドローンなどで近づいて是非細かく見てみることをおすすめいたします。
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ベネッセアートミュージアムに近づくと、入り口付近にこんなオブジェがあったります。他にも色々ありますよ!
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そして直島が誇る銭湯、「I LOVE湯」。実際の銭湯では入浴しながら象さんのオブジェを見たりすることができます。
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直島フェリーターミナルを遠くから見た感じです。手前にあるオブジェは、実物では中に人が入って登ったりできます。奥にあるフェリーや、広場にある椅子の一つ一つまで手作りで再現されています。すごい気合の入りよう!!
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ほかにもこのアドオンでは、ここでは紹介しきれないほど数々の建物やオブジェがありますので、是非ダウンロードして楽しんでください。
なお、今後はさらなるアップデートを重ねてよりリアルでにぎやかな直島を少しずつ再現していく予定とのことです(私の出る幕はあまりなさそうですが)。楽しみですね!
ダウンロードはこちらから(どちらからもダウンロードできます)
思い付きで始まったアドオン作成でしたが、順を踏んでやってみると、「初めてでもそこそこできる」ということと、行き詰っても強い意志があれば(そして助けを求め続けていれば)、その意志を引き継いでくれる人は出てくるはず、ということを知ることができました。大変ですが、やり甲斐も達成感もあるユーザーコンテンツの作成、読者の皆様も『MSFS 2020』に限らず、興味があれば是非トライしてみることをおすすめします。
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※UPDATE(2022/1/30 22:50):直島に関する記述を一部修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。