「アーケードモード」と「ドラマティックモード」
本作には、「アーケードモード」とDLCである「ドラマティックモード」の2種類があり、共通した7ステージが準備されています。「アーケードモード」での1プレイは1時間ほどですが、「ドラマティックモード」は台詞演出もあって1時間30分~2時間ほど掛かったように思います。
標準で実装されている「アーケードモード」は、ゲームプレイに集中する内容となっており、台詞などストーリー的な説明が省かれています。テンポ良く状況が推移するためにゲームプレイとしては気持ち良く進められますが、ステージ2で味方として編隊を組み攻撃を強化してくれる謎のウイングギャリバーや、敵として現れるトリムルティの関係がわかりにくく、最終ステージの演出を考えてみても何かしらの説明やオペレーターからの台詞が少しあっても良いのでは?とも思えます。
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一方でDLCとして配信されている「ドラマティックモード」は、台詞だけでなく特殊演出も多く盛り込まれ、台詞についても状況の説明も含め多くの事柄に触れられています。ヤマト壱號機から参號機までのパイロット同士の会話だけでなく、中ボス/ボス、支援アンドロイドや艦長、ステージの特性などゲームプレイで起こる現象のほぼ全てを説明。登場キャラも70~80年代ロボットアニメ的(どちらかと言えばギャグが混じった80年代OVAな雰囲気)で比較的ストレートなキャラクター設定となっています。
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壱號機のパイロットであるショウと謎のウイングギャリバーの関係や、弐號機ルゥナとディータの対決を含め、細かな描写や設定、演出などがプレイヤーを鼓舞し、気分を高めながらゲームプレイに熱中することに上手く繋がっています。
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「敵だったキャラが色々あって味方に転じてくれる」や「父の形見が最終的な戦いのキーアイテムとなる」などのクラシックなアニメ的演出は、プレイヤーのゲームプレイとシンクロすることによって、古くも新しい実感をもって熱中できる体験へと発展したと思えました。
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本作は、プラチナゲームズが、クラシックゲームの魂を受け継ぎ現代の技術で追求すると謳う「ネオ-クラシック・アーケード」というプロジェクトの第1弾に位置づけられていますが、『ソルクレスタ』のゲーム内においてスペシャル/シークレットボーナスを取得した時に流れるジングルや音楽、ボス/中ボスのデザイン、「ドラマティックモード」の演出、スコアアタック/キャラバンモード、マニュアルなどほとんどのところでその志を見てとれます。それらを色濃く濃縮したものがDLC「ドラマティックモード」であるため、その意気を感じたいのであればプレイしておくべきゲームモードだといえるでしょう。
調整に調整を重ねた痕跡が見えるそれぞれの難易度
本作の難易度は、敵の出現/攻撃パターン/敵弾発射数を含めて全体的に絶妙な調整がなされており、初心者が尻込みしてしまうような弾幕的画面を極力見せないようにしています。筆者が確認できた難易度は「VERY EASY」「EASY」「NORMAL」「HARD」「PLATINUMHARD」の5段階。「VERY EASY」から「NORMAL」までは、敵弾の発射数が増えることや、攻撃パターンが増える調整がされており、2週目的な難易度「HARD」になるとさらに敵弾が増えるとともに、敵が倒された瞬間に弾を撃ち返す「撃ち返し弾」が発生するようになります。
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レビューの段階で確認できた最高難易度の「PLATINUMHARD」は、敵の撃ち返し弾や弾数増加に加え、シールドの上限が1つまで、フォーメーション攻撃が1度の使い切り(フォーメーションチップを入手することで再使用できる)、完全に倒されるとフォーメーションチップ損失とパワーアップがリセットされるという厳しい仕様です。そのため、他の難易度のようにセオリーを突き詰めたゲームプレイでなく、よりペナルティを意識したゲームプレイを心がける必要があります。
全体的な難易度を見てみると非弾幕のSTGとして、無闇に敵弾を増やさずに如何にして敵を撃ち倒す面白さを伝えることに腐心しているのが見て取れます。特に中~低難易度の調整が秀逸で、敵機が多く登場するものの敵弾が多くないためテクニックを駆使し、フォーメーション攻撃などを使って気持ち良く、それなりな困難をもって倒せるように誘導していることが、これまでのSTGにない要素だと思えました。アーケードSTGのようにインカムを求められないコンソール/PC向けだからこそ成り立つ、STGの面白さを追求した調整です。
加えて、「PLATINUMHARD」をプレイしていて驚いたのが、ペナルティの厳しさから「PLATINUMHARD」を続けようか悩むほどに心を折られたものの、再び挑戦してみたところあっさりと適応できたことでした。これは先のゲームシステムの紹介で言及した通り、テクニックが多種多様で新たな発見をしやすく、プレイヤーの腕前が上がれば上がるほど攻略しやすくなるレベルデザインの恩恵だといえます(何度も遊んだり、他のプレイヤーのゲームプレイをみたりしてテクニックを参考にできるため)。それでも、極端な高速弾は無いにせよ敵弾が多くなるため、「PLATINUMHARD」はゲームを習熟したSTG熟練者向けの難易度であることに変わりありません。
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難易度全体の調整が上手くいっている一方で、ゲームプレイで理不尽になってしまっている箇所がいくつかありました。例えば、ステージ6のボスによる攻撃予備動作の描写不足や、ステージ7最終ボスのビームの軌道予測が困難なこと、さらにステージ1とステージ3ボスの砲台から放たれるビーム発射時のエフェクトが見づらいことなど、難易度やステージ道中の完成度が突き詰められているからこそ、明らかに手が届いていないような挙動が目についてしまいます。
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一方で地形については難易度の違いによって、最終ステージの高速スクロールパートで突起などが増えるなど微妙に変化がありますが、どの難易度でも攻略の難度に影響を与えない印象を受けました。
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全体的な難易度に関しては、非弾幕STGであることを最後まで意識し、これまでのSTGをプレイしてこなかった人もターゲットにした画面にしていることが好印象的でした。アーケードモードにおいて「NORMAL」以降の難易度がクリア後アンロックという形式というのも含めてそう思います。
シューティングゲームの面白さを万人へ解き放つことに成功した『ソルクレスタ』
『ソルクレスタ』は、一部ボスの予備動作の描写が不十分なことや多数の不具合があるものの、2022年のシューティングゲームジャンルの再スタートを告げる完成度を誇るタイトルです。練られた難易度調整から、これまで耐え忍びながらプレイしてきたシューター(この場合はSTGゲーマーを指す)だけでなく、これまでSTGに触れてこなかったユーザーにもオススメできる内容となっています。本体の価格も4,378円(税込み)と、2DSTGとしては若干高めに思える設定ですが、メカニクスの完成度/相乗効果と練られた難易度のバランスから価格相応の価値があることは確かです。
一方で本作のレビューにおいてリリース直後のバージョンである1.0.0でプレイしていたところ、分離時のスローが解除されない/アイテムが取得出来ない不具合に複数回遭遇してしまったこともあり、ゲームプレイの熱中から醒めてしまう瞬間があったことが残念でした。それでも、3月24日に配信されたPC版のアップデート1.0.1において進行不能不具合の修正や処理落ちの改善、ソルゲージの調整やFゲージへ名称変更・調整も行われるなど、修正が全部ではありませんが徐々に改善する意思を持っているのが見てとれます。
今後、更なる不具合の修正やプレイアブル機に個性をもたらす調整、ステージのリトライができないことや、コンティニューがないことでクレジット表示が形骸化しているなどユーザー体験部分にも更なる手が入ってくれれば、より良くなるので今後の発展にも期待したいところです。
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『ソルクレスタ』は、『ベヨネッタ』や『NieR:Automata』などアクションゲームにSTG要素を組み込んでゲームプレイを彩ってきたプラチナゲームズによる、シューティングゲームの現在の到達点を現したタイトルであるといえます。
・誰でも楽しめる練り込まれた各種難易度
・倒されにくく、1機へ追い詰められても3機状態へ復帰しやすいバランス
・様々な攻略法を構築出来る奥深いゲームメカニクス
・クラシックゲームの良さを再発見させてくれる「ネオ-クラシック・アーケード」というコンセプト
・DLC「ドラマティックモード」の古風だが熱いシナリオ
悪い点
・アーケードモードにおける状況の説明不足
・所々発生する不具合
タイトル:『ソルクレスタ』
対応機種:Windows PC(Steam)/PS4/ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2022年2月22日
記事執筆時の著者プレイ時間:13.3時間