2022年5月26日、「パックマン」シリーズの作品を多数収録したコレクションゲーム『パックマン ミュージアム プラス』が発売されました。PS3/Xbox 360向けに発売された『パックマンミュージアム』の現行機種版としてラインナップの追加・変更が施されており、新旧・ジャンル様々な「パックマン」関連作が14作品収録されています。
本稿では、そのプレイレポートをお届け。まずは若年ゲーマーに当たる筆者がなぜ『パックマンミュージアム』に強く惹かれているのか、その想いを語らせていただいてからゲームの詳細について触れていきます。
DS世代のゲーマーがレトロゲームに熱中するワケ
筆者は世代的にDSやWii、PS3といったゲーム機と共に過ごした若年ゲーマーで、『パックマン』黄金時代とは世代がカスリもしていません。もちろんIPとしてのパックマンは知っていましたし、「大昔にとっても流行った作品」程度の認識はありました。
普通のゲーマーであったとしても、ファンでなければ日常の中でパックマンについて深く考えることはあまりないと思いますし、そもそも『パックマン ミュージアム プラス』自体が少しニッチな作品でもあると思います。しかし筆者はレトロゲームやナムコの作品が大好きで、本作にも大変期待していました。
20代のゲーマーである筆者がなぜ本作に興味を示しているのか……それは、2013年に放映されたテレビ東京制作のドラマ「ノーコン・キッド~ぼくらのゲーム史~」という作品が大きく影響しています。
本作は、1クレジット(ノーコンティニュー)でゲームをクリアする、通称“ノーコン”と呼ばれる少年・木戸 明信とゲーセン店主の子供・渡辺 礼治、礼治憧れの美人ゲーマー女子・高野 文美の3人を中心にゲームにまつわるドラマが展開。俳優陣として、ブレーク前の波瑠さんや田中圭さん、個性派俳優の佐藤二朗さんやミュージシャンの浜野謙太さんが出演しています。
舞台は駄菓子屋と併設の昔懐かしいゲームセンターで、アーケードゲーム黄金期やファミコンブームからプレイステーションの登場や格ゲーブームなどゲーム史を辿るような内容に。当時の世相を反映した描写も多く見られます。
このドラマの魅力は、ゲームを巡り登場人物の間で巻き起こる熱い友情や恋愛など人間関係の揺れ動きなどが展開されること。当時アツくなっていたゲーマーが懐かしむだけではなく、世代外のゲーマーでも当時の熱気を感じられるような作りになっています。ゲームたちもただ登場するだけではなく、裏技や攻略法をゲーセンに設置されたノートで他のゲーマーと共有したり、大学受験と大ヒットゲームの続編の間で揺れ動き、徹夜で攻略したり……と、昔のゲーマー文化・ゲーセン文化について知ることができるのも大変楽しいポイントです。
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本作は様々なメーカーから制作協力を受けており、『ゼビウス』『スーパーマリオブラザーズ』『ドラゴンクエストII』などゲーム史を彩る数々のタイトルが取り扱われていたことでも注目されていました。『パックマン』は第3話に登場し、特定の場所に居るとモンスターが襲ってこない安全地帯グリッチを絡めたストーリーが描かれています(なお、『パックマン ミュージアム プラス』収録版では再現不可)。
筆者は20代前半ですが、レトロゲームも幅広く楽しみますし、ゲーム史を様々な観点から辿るのが大好きです。一時期は軽くコレクションもしていましたが、レトロゲームに興味を持ち始めたのは、このドラマ「ノーコン・キッド~ぼくらのゲーム史~」が大きなきっかけになっています。現在は積極的に集めることはなくなりましたが、『パックマン ミュージアム プラス』のようなコレクション系タイトルはついつい手が伸びてしまいます……!
「ノーコン・キッド ~ぼくらのゲーム史~」は、現在Paraviにて見放題配信中。レトロゲーマーでなくても楽しめるドラマとなっているので、ぜひご視聴ください。
あなたの知らないパックマンがあるかも?収録タイトル充実・やりこみ要素も
さて、ここまでは筆者がレトロゲームに興味を持ったきっかけとなった個人的なエピソードを述べましたが、ここからは『パックマン ミュージアム プラス』に焦点を当て、本作がなぜ注目タイトルなのかの解説&プレイレポートをお届けします。
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本作の魅力はやはり、収録ラインナップにあります。もちろん全作品収録とはいきませんが、良い具合にピックアップされていると思います。ラインナップは以下の通りです。
『パックマン』(1980)
『スーパー パックマン』(1982)
『パック&パル』(1983)
『パックランド』(1984)
『パックマニア』(1987)
『パックアタック』(1994)
『パックインタイム』(1995)
『パックマン アレンジメント アーケードver.』(1996)
『パックマン アレンジメント CS ver.』(2005)
『パックマン チャンピオンシップエディション』(2007)
『パックモトス』(2007)
『パックンロール リミックス』(2007)
『パックマン バトルロイヤル』(2011)
『パックマン256』(2015)
『スーパー パックマン』
鍵付きドアや新パワークッキーが導入された意外とマイナーな『スーパー パックマン』やボーナスアイテムを盗む第3のライバルが登場する『パック&パル』など初代作の続編は、完成度の高い初代には及ばないものの、いつものパックマンとは違った体験が楽しめます。
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筆者のおすすめは『パックマニア』と『パックランド』。『パックマニア』はBGMがおしゃれでキャラも可愛く、オバケを避けられるジャンプでより戦略性が高まっており完成度高めです。『パックランド』は『スーパーマリオブラザーズ』よりも先に高いクオリティで横スクACTを実現したゲーム史に残る作品です。ダッシュの勢いによってジャンプの高さが変わるという癖のある操作感ながら起伏に富んだ冒険が楽しめます。あとオバケとパックマンが最高に可愛い(ここ重要)。
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近年の作品では、迫りくるバグの波から逃げながら自動生成されるメイズをひたすら進みまくる『パックマン256』や、最大4人対戦でフレンドとアツくなれる『パックマン バトルロイヤル』を収録。本作はオフラインマルチプレイのみの対応ですが、スイッチなどで友達と集まってプレイすると盛り上がりそうです。
『ハロー!パックマン』や『パックマンワールド』シリーズ、そして諸事情により収録できなくなった『ミズ・パックマン』など「これは欲しかった……!」というタイトルもありますが、オーソドックスなところから意外と遊ぶ機会のなかったタイトルまで揃った見事なラインナップなのではないでしょうか。
なおゲームのラインナップは最初からすべて解放されているわけでなく、一部作品は特定のゲームをプレイするなどの条件達成でアンロックされます。有名な作品は最初からアンロックされているとはいえ、正直に言えば最初から全てが遊べる状態にあってほしかったのですが、ラインナップをまんべんなく遊ぶきっかけになる……と前向きに捉えました。
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『ミズ・パックマン』の権利問題は『パックマン ミュージアム プラス』にも大きく響いており(本件についてはAUTOMATON誌が詳しい)、『パックランド』『パックインタイム』のミズ・パックマンのグラフィックが変更されているほか、早期購入特典のフィギュア(ゲーム内アイテム)も「パック・マム」という今まで登場したことのないキャラクターに差し替えられています。
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残念ながら未収録となった『ハロー!パックマン』はミズ・パックマンの登場機会が多いため、単なる差し替えにも手間がかかることが考えられますし、『パックマンワールド』は当時の3Dグラフィックなので作り直すのは現実的ではありませんが……良い方向に解決してくれることを願うばかりです。
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本作の特徴として、ゲームセンターを作れる機能が挙げられます。ゲームの筐体やインテリア、フィギュアなどを設置したり壁紙や床を決めて自分好みのゲームセンターを作ることができ、シンプルな作りながら意外とのめり込める要素です。「『パックマン』は人気だから何台も並べちゃおう」「この辺りはいろんなゲームが遊べるバラエティコーナーにしよう」と想像を膨らませられます。
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特定条件達成で現れるオバケはゲーセン内をウロウロしてて超かわいい……!設置できるインテリアやフィギュアは様々なゲームで設定されたミッションを達成したり、スコア報酬でもらえるコインで回すガシャポンで入手できます。
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筆者はPS1で発売された初代『ナムコミュージアム』シリーズの一人称視点でミュージアム内を探索できるモードが大好きでした。コレクション系ゲームは単なるゲーム詰め合わせとなっていることが多いですが(もちろんそれが普通)、本作のようにちょっとしたやりこみや仕掛けがあるとなお嬉しいと感じます。
『パックマン ミュージアム プラス』は、定番のドットイート系からアクションやパズルなど派生系まで、充実したラインナップで満足度の高いコレクションとなっています。収録されなかったタイトルもありますが、日本が誇る偉大なゲームシリーズ「パックマン」の歴史を安価(もしくはXbox Game Pass)で感じられるため、未経験のゲーマーにもおすすめしやすい作品です。
『パックマン ミュージアム プラス』は、PC(Steam/Windows10)/PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに配信中。ゲームサブスクサービス「Xbox/PC Game Pass」にも対応しています。