気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、nornware開発、PC向けに6月4日に正式リリースされた高難度エイリアンFPS『Space Beast Terror Fright』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、暗闇の宇宙船の中でエイリアンを相手に戦う本格派高難度FPS。ランダム生成のマップ、敵の攻撃一撃で死亡してしまう緊張感などを特徴としており、かなりハードコアな内容となっています。記事執筆時点では日本語未対応。
『Space Beast Terror Fright』は、1,480円で配信中。
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――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Johannes Norneby氏(以下Johannes)Johannes Nornebyです。この業界ではjohnoと呼ばれています。私は1997年からプロのゲーム開発者としてスウェーデンで働いています。これまでにMassive EntertainmentやDICEで仕事をしてきました。
2010年に自分の会社であるnornwareを始め、以来インディーとして活動しています。2、3個ゲームをリリースすると、2015年の始め、状況は大きく動きました。本作の最初の体験版がSteam Greenlightをわずか2週間で通過したのです。
それ以来(7年以上)、他の仕事とバランスをとりながら、本作の開発を続けてきました。2018年の中頃にはフルタイムで本作の開発に取り掛かり始めました。2022年の6月、私はついに本作の開発が完了したと判断し、早期アクセスを終了することにしたのです。
現在は、本作の続編のためのアイデアや技術を模索しています。
一番好きなゲームを選ぶのは難しいですが、1993年の初代『Doom』を発端とし、真剣にゲーム開発に興味を持つようになりました。すべての『Doom』『Quake』『Half-life』『Halo』作品が、本作にとても重要な影響を与えましたね。
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
Johannes主にプログラマーとしてAAAゲームの開発に何年も携わった後、私は自分がとても独断的でクリエイティブなアイデアを持っていると気がつきました。こうして私は大手ゲーム会社を去り、自分自身がクリエイティブ・ディレクターとなれるインディー開発により没頭したのです。
本作の開発は、1986年に映画「エイリアン2」を見たのがきっかけです。私は当時11歳でしたが、ものすごい衝撃を受けました。それ以来、私はあの映画の激しさと雰囲気をゲームにできたら、どんなものになるだろうかと考え続けていたのです。本作は「エイリアン2」への私からのラブレターとも言えるでしょう。
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――本作の特徴を教えてください。
Johannes本作が他の作品と異なる特徴的な点として、プレイした人がすぐに気が付くのは、とにかくその激しさでしょう。モンスターはプレイヤーを一瞬で殺しますが、それほど危険な敵を相手にするためプレイヤーの火力もとても高くなっており、バランスを取っています。これら2つが合わさって、カオスな体験となります。この緊張感こそ私が映画「エイリアン2」について最も心に残っていることであり、これこそ私のゲームで再現したいと思ったものなのです。
本作の銃口から発せられる閃光の激しさや視認性の悪さは、よく話題になります。これこそジェームズ・キャメロン監督の撮影手法を真似たものなのです。実際、「エイリアン2」や本作のような状況に置かれたら(暗闇の通路に閉じ込められ銃を連射する)、おそらく周りもよく見えず、何が起きているのかもわからないような状況になるのではないでしょうか。
しかし本作には、慣れたプレイヤーなら状況を理解できるようにヒントがしっかりと搭載されています。そのコアとなるのは「アドレナリン」で、モーショントラッカー、プレイヤーを視認しているモンスター、武器の発砲などに影響されます。これはカメラの視界やダイナミックな音楽に変化を与えるのです。
また、アドレナリンが高ければプレイヤーはより早く走れます。これらすべてが合わさり、まるでアクション映画のような感覚を生み出すのです。プレイヤーは次第にこれらの使い方を理解し、まるで危険察知システムなように使えるようになり、生き抜く手助けとなるでしょう。
ステージレイアウトはランダム生成に多くを頼っているため、実質的に本作のマップの種類は無限大です。ランダムマップ、リピートマップ、毎日変わるマップ、週に一回変わるマップが用意されています。また、毎週変化するものにはシングルプレイヤーのランキングが用意されているので、世界中のプレイヤーを相手に、誰が一番先まで進めたか競い合うことも可能です。
また、本作にはシンプルなステージエディタも搭載しています。すでにプレイヤーの皆さんが作った何百ものマップがあり、誰でも楽しめますよ。
本作はシングルプレイヤーでもマルチプレイヤーでも楽しめるゲームです(ローカルの画面分割とネットワークモード)。しかし早期アクセス中、プレイヤーの皆さんにはネットワークモードを多いに気に入っていただけたようです。
本作にはPvEモードしかありませんので(1~4人のプレイヤー対コンピュータが操作する敵)、友達と一緒にプレイするのはとても楽しいですし、対人ゲームで時折起こる気まずいシーンも回避できます。マルチプレイヤーコミュニティの声にはかなり気合を入れて耳を傾けるようにしたので、かなり改善されて良いものになったと思っています。
何より、Steamの早期アクセスを実施してとても良かったと思っています。公にしながらゲーム開発をするというのは大変なことももちろんありましたが、結果的にプレイヤーの皆さんのフィードバックを汲み取り、本作は私1人で作ったものよりもかなり改善されました。
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――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
Johannes本作はとても難度が高いので、大きな市場というのは期待していません。しかしローグライクというジャンルが好きな人であれば、楽しんでいただけるでしょう。本作は文字通りの意味で「シミュレーション」です(台本はありません)。そのため本作のルールは簡単に理解できますし、かなりの腕前に上達することも可能です。レトロシューター(1990年代の『Doom』や『Quake』)が好きな人にも間違いなく本作は楽しんでいただけるでしょう。
個人的に、1980年代のカナダのゲームセンターで遊びながら育ちましたので、アーケードゲームのような早い展開のゲームデザインを本作でも採用したいと思いました。アーケードスタイルのゲームが好きな人は、本作も気に入っていただけるのではないでしょうか。
最後に、「エイリアン2」や「ウォーハンマー40,000」のファンの方にも、もちろん楽しんでいただけると思います。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Johannes上でも述べたように、本作は1986年公開の映画「エイリアン2」から多大な影響を受けています。もう一つあからさまに影響を受けているのが、ボードゲーム「ウォーハンマー40,000」の「Space Hulk」です。
私がこの業界に入るきっかけとなったゲームである、すべての『Doom』『Quake』『Halo』作品も、影響を与えたと言えるでしょう。ヘルメット、バイザー、アイコンのデザインはゲームキューブ向けの初代『メトロイドプライム』から影響を受けていると思います。
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――本作の日本語対応予定はありますか?有志翻訳は可能ですか?
Johannes現時点で具体的なローカライズプランはありません。開発者のキャパシティという問題(私が弊社で唯一の開発者)と、私のコードが現時点ではUNICODEをサポートしていないという両方の問題があります(ASCIIのみ)。
しかし本作もついに正式リリースされましたので、要望に応じて再検討したいと思っています。有志翻訳は大歓迎です。私宛にメールでお問い合わせください。
――新型コロナウイルスによる開発への影響はありましたか?
Johannes確実にあったと思います。2018年の中頃に本作の開発にフルタイムで取り掛かるようになりましたが(自宅から)、その年からすでに1人で作業をし、1人で多くの時間を過ごすことに違和感を覚え始めていました。当時はあまり共感を得られませんでしたが、パンデミックが巨大化するにつれ、皆さんも同じような感覚を覚え始めたでしょう。
ソロ開発者ですので、メンタルヘルスと生産性に強い相関関係があるのを感じます。2020年の中頃からはパーソナルトレーナーと一緒に改善に取り組むようになり、バランスを取る大きな助けとなっています。ただ頭だけを働かせ続けるのではなく、体全体を意識させられるようになってきました。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Johannesもちろんです。本作がここまで人気になったのもプレイヤーの皆さんの口コミによるものですので、本作をより広めていただけるのには、大変ありがたく思っています。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Johannes私は子供の頃、ゲームセンターでゲームをして育ちました。当時、最高のゲームはどれも日本の会社によるものだったと覚えています。当時大好きだったのは、『アルゴスの戦士』(テクモが1986年に開発)です。私は北米でファミコンが人気になる以前に、ゲームセンターで『スーパーマリオブラザーズ』もプレイしていましたよ。
ゲーム開発者となった当初、『スーパーマリオ64』からは多大な影響を受けました。その後ゲームキューブを買い、『ゼルダの伝説 風のタクト』や『メトロイドプライム』をとても楽しみましたね。
私が関わってきたような「言葉で説明する」欧米のゲームと比べ、日本のゲームはよりゲームプレイに力を入れ、「子供の頃のようなワクワク感」に力を入れているのがとても気に入っています。
私の作った小規模タイトルである本作が、日本市場にも興味を持っていただけるポテンシャルを持っていたら、それはもう幸運ですし、大変謙遜する思いです。ありがとうございました!
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。
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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)