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ディードリットの魅力を存分に味わえる2D探索アクション!
2021年12月16日にPS4/PS5/スイッチ/Xbox Series X|S/Xbox Oneでリリースされた『ロードス島戦記 -ディードリット・イン・ワンダーラビリンス-』は、メトロイドヴァニアとも呼ばれる2D探索アクションゲームです。
主人公は、ファンタジーノベルの金字塔「ロードス島戦記」のヒロインであるハイエルフのディードリット。見知らぬ迷宮へと迷い込んでしまった彼女のさまざまな冒険や戦いが描かれます。
マントをたなびかせながら軽やかに宙を舞い、精霊たちの力を借りて魔法を使い、そして敵に向かってレイピアを華麗にきらめかせるアクションは原作ノベルやOVA(オリジナルビデオアニメ)のイメージそのままで、ファンとしては感慨もひとしおでした(若干既視感があるモーションではありますが)。
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本作では遊びに幅を持たせるため、ディードリットに大剣や棍棒などさまざまな武器を装備させられますが、なかなかレイピア以外を持たせる気になれなかったほどです。「エルフといえば魔法か弓」というようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、ディードリットの武器といえばレイピアなのです。原作ノベルでは、遠距離攻撃は精霊の力を借りた精霊魔法で行うことがほとんどだったように思います。
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ディードが日本製ファンタジーに与えた大きなインパクト
ディードリットがヒロインを務める、原案・安田均氏/著・水野良氏による角川スニーカー文庫「ロードス島戦記 1 灰色の魔女」は1988年に刊行されました。家庭用ゲーム機ではファミコンが大ヒットしており、『ドラゴンクエストIII』や『ファイナルファンタジーII』がゲーム少年たちの心をわしづかみにしていた頃です。
ディードリットは、極めて長命で生まれ育った里を出ることすらほとんどないハイエルフとしては珍しい、好奇心旺盛な少女です(第1巻の時点ですでに160年ほど生きていますが)。正義感にあふれるものの、まだ勇気と無謀さの区別すら付かない未熟な少年・パーンを気に入り、その旅に同行。彼が数多の戦いや別れを乗り越えて成長していく過程を一番近くで見守り続け、少しずつ惹かれ合っていきます。
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イラストを手がけたのは、メカニックデザイナー/キャラクターデザイナーの出渕裕氏でした。出渕氏は海外のファンタジー作品やファンタジー調の画集などに数多く触れていた造詣の深い方で、そうして生まれたのがパーンやディードリットたちでした。
当時制作されたOVAは、『ヴァルキリープロファイル』シリーズのレナス・ヴァルキュリアや『DEAD OR ALIVE』シリーズのレイファン役などで知られる冬馬由美さんが声を担当し、こちらも原作ノベルともども大ヒット。当時のアニメ雑誌ではディードリットが表紙を飾ったり、特集を組まれたりするほどでした。
また、出渕裕氏による原作版権イラストや、アニメーターの結城信輝氏がキャラクターデザインを務めたアニメ版権イラストでのディードには芸術家アルフォンス・ミュシャの影響が見られることが多く、落ち着きのある色調で草花のモチーフとともに描かれる姿は「美少女」というよりも「美しい」、「幻想的」と形容したくなるほどで、当時その姿に脳を焼かれた人は多かったと思います。少なくとも筆者は焼かれました。
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そうやって一躍人気キャラクターとなったディードリットは、日本のファンタジー作品に大きな影響を与えました。それは、エルフは華奢で、耳は「長く」尖っているものであるという強烈なイメージです。
もちろん、今日のファンタジー作品ではスタイルがいいエルフや耳がそこまで長いわけではないエルフを見るのもめずらしくありませんが、何かの作品でエルフのキャラクターを見かけたら、そのデザインに注目してみてください。「耳が極端に長く尖っている」、「体つきが華奢」、「衣装の配色が緑基調」…そのような特徴があったら、ディードリットのイメージを受け継いでいるかもしれません。そう言えてしまいそうなくらいに影響力があったヒロインです。
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