新生『セインツロウ』40時間にもおよぶプレイが終わって、私は奇妙な感覚に襲われました。エンディングに向かう最後のミッションで圧倒的高ぶりを感じる一方、それまでのゲームプレイに対する幾ばくかの失望感に苛まされました。本稿ではその詳細を語ることで、本作の実態をお伝えできればと思います。
『セインツロウ』(2022)はVolitionによって開発され、Deep Silverによって2022年08月23日に販売されました。本作は『Saints Row: Gat out of Hell』(2015年1月23日)を最後に長らく途絶えていたシリーズの最新作で、7年の月日を経た上での“リブート”となっています。果たして、その再起は成功しているのか? そういったところにも焦点を当てつつ、レビューをお送りしたいと思います。なお筆者は初代を除く『セインツロウ』はすべてプレイ済みです。
導入も含めシリーズ旧作よりもシリアス
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本作の物語は、主人公である「ボス」が何者かによって墓に埋められてしまうシーケンスからスタート。その数カ月前の出来事にカットバックし、本編が始まります。本編では特殊部隊の一員である「ボス」の戦闘が描かれ、うまく手柄を上げたようだったのに認められずクビとなり、同時に敵対組織を作るハメになってしまいます。
解雇されるのだったら自分たちで一から“仕事”をやろう! そうして犯罪組織「セインツ」が結成されるのです。朽ち果てた教会の認可を市長から無理矢理ぶんどって本拠地にして。
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導入としてはやや求められる戦闘が冗長とはいえ、「セインツ」結成までを丁寧に描いているのは好印象です。アメリカ南西部に存在するという都市「サント・イレソ」の景色を映しながら、じっくりとストーリーが語られていきます。
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コミカルでギャグ全開のクライムアクションとして人気だった『セインツロウ』シリーズですが、本作ではリアリティラインが上がっており、それなりに“現実的”な形でシナリオが進みます。シリーズファンの筆者としては、『セインツロウ 2』を思い起こさせてくれる懐かしい仕上がりと感じました。ただし、マップ内から入れる建物の数は『2』ほどでなく、『セインツロウ ザ・サード』程度とコンパクトになっています。このことは残念でした。
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犯罪組織の仲間は、トレイラー映像でネコ耳ヘルメットを被っていた「ケビン」に、エキスパートドライバー「ニーナ」と、蝶ネクタイがトレードマークなビジネスマン「イーライ」。そして……捨て猫だった「スニッカードゥードゥル」。この和気あいあいとしたメンバーで、セインツは勢力を拡大していきます。仲間は「マイメン」とも呼べる親しさで、ボスとも対等に接してきます。
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導入部は時間帯のせいで暗くてわかりづらかったのですが、イントロダクションを終えて外へ出ると、広大な世界に昇る朝日がとても美しく描かれていて感動的でした。
戦闘が冗長ぎみ
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『セインツロウ』シリーズにとってはいつものことではありますが、戦闘は多め。本作ではこれまで以上に畳み掛けるので、疲れを感じるほどです。ストーリーを活かすための戦闘イベントとなっているかといえばそうでもなく、少なからず冗長にも感じられ、「もう戦いたくない」とまで思ってしまった場面もありました。
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戦闘における弾薬などのリソースマネジメントはシビアめ。敵を倒すことで補充が可能だったり、即時キル&体力回復を狙える「テイクダウン」という要素もあったりと、戦略性の高さは評価できます。
装備のカスタマイズとボスのスキルは戦略性を生み出している
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オープンワールド×クライムアクションとは切っても離せない「車」と「武器」。それぞれカスタマイズ可能ですが、それぞれ「改造を実行するまでに必要なタスク」があり、武器/車の種類によって異なります。
たとえば「ハンドキャノン」のカスタマイズ項目を増やすのであれば、“敵であるバンテロスの車両のタイヤを破壊する”、「クルコフアサルトライフル」なら“マガジン最後の1発で敵を倒す”、車両の「ハンマーヘッド」は“車とのニアミスをする”などが挙げられます。いずれも複数回こなす必要があり、自由度の高いオープンワールドゲームでありながら「目標」を持って運転できたり戦えたりするのは、プレイ全体に戦略性があって楽しめます。
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今作には、4つまでスロットに入れられる「スキル」と、マイナー(x2)/メジャー(x2)/エリート(x1)のスロットにそれぞれ追加できる「PERK」が存在します。「PERK」はいわゆる“パッシブスキル”で「スキル」は“アクティブスキル”という扱いで、この組み合わせが独自のビルドを作る楽しみを味わわせてくれます。
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ミッションの評価
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ミッションは複数提示され、スマホの画面から自分で自由に選択可能。その中にはゲーム内のお金を貯めたり、独自アイテムの獲得も狙える「サイド・ハッスル)」というサブクエストも用意されていますが、いずれも非常にコンバットドリブン。戦闘が多く、これもやはりプレイヤーによっては「疲れ」を感じやすい構造になっています。
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メインミッションで語られるストーリーは「とにかくセインツを大きくしていくこと」に終始。敵対組織の壊滅を目指していくのですが、シリアスな展開が多く、『セインツロウ2』的なトーンに寄っている印象を受けます。「バカゲー」としての側面も評価されてきたシリーズですので、この質感には賛否が分かれるでしょう。旧作を踏襲しつつも新鮮なストーリーラインが待ち受けている本作について、筆者は「こういう『セインツロウ』もアリだな」と感じました。
“現時点”での問題点
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残念ながら、筆者環境のバージョン(ロンチ初期バージョンから“J4380107”)ではミッション中のクラッシュが頻発。クラッシュした地点からミッションを再開できればよいのですが、一番最初の場面からやり直しになります。30分以上にわたって挑むミッションでこうした不具合が起きると、さすがに辟易させられました。
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さらには武器ホイールを開けなくなり、攻撃不可能になってゲームオーバーになることも。本作は本稿執筆時点の2022年8月末においてバギー過ぎる仕上がりです。字幕の表示タイミングもおかしく、長文の字幕がけっして読めない速度で消えてしまうことも。カスタマイズ要素が豊富にもかかわらず、武器のペイントが初期化されてしまう……といった不具合にも遭遇しました。
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ストーリー進行上絶対にやらないといけない、収入を増やすための要素「シノギ」ですが、そのミッションの一部は「特定車両を持ってこい」といったものが複数回繰り返されるというもの。あからさまなゲームプレイの水増しのように感じられ、一度のプレイが長いこともあって落胆させられました。
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また、本作は車での移動が基本であるものの、旧作と比べても運転操作を求められるミッションが多過ぎる印象です。更に目標地点がとてつもなく遠かったりと、運転疲れを感じてしまうほどでした。
PC版におけるシステム面の仕様で言うと、撮影した写真がどのフォルダに登録されているのか皆目見当も付かないのはノットグッド。これまで述べてきた不具合のこともあり、「そもそも保存されていないのでは」と不安になってしまうことも残念です。
ボスの描写は暴力性寄り
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本作におけるプレイアブルキャラクター「ボス」は、旧作主人公と比べて温かみが少なく、失われており、仲間の前でも粗野に振る舞います。「カッコいい」というよりは「怖い」というイメージです。今作のボスは(筆者にとっては)好感を抱きにくく、ともすればソシオパスとも言えてしまう暴力性の塊。これまでの作品の「熱く燃えるようなボス」とは一線を画していました。
サウンド、その他の要素の出来は良好
不具合やシリーズファンとしての不満を並べる形となってしまいましたが、幸いなことに、カントリーミュージックなどを収めたサウンドトラックはアメリカ南西部を表現するにあたって雰囲気作りに寄与しています。
また、「むちゃくちゃな運転が褒められる(XPが入る)のはセインツだけ!」な勢いで逆走はもちろんのこと正面衝突してもXPが入るむちゃくちゃな仕様はセインツ節で非常に好感が持てます。
総評
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本作のミッションでは何かと「シノギ」や「キャッシュ」が要求されるため、なかなかメインストーリーを進められず、やきもきした印象を受けるかもしれません。しかしオープンワールドゲームとしてのある程度の自由度は担保されているため、マイペースにのんびり遊んでいけるタイトルでもあります。ただし、現行のバージョンではバグを無視して遊ぶことは難しいため、安定して遊びたい方は今後のアップデートを待ってからプレイすることをおすすめします。
リブート作品としては、旧作と比較して“今まで以上”を求めると失望し、“アベレージ”を求めれば納得のいくタイトルであると言えるでしょう。
良い点
・リブートとして新鮮さがある
・どれだけムチャをしても達成感が得られるドライビング操作
悪い点
・戦闘イベントが多すぎる
・ミッションにおける「車での移動」が長い
対応機種:PC(Epic)/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox Series S X
発売日:2022年08月23日
記事におけるプレイ機種:PC(Epic)
今回の記事執筆に限定したプレイ時間:40時間
価格:6,180円