
ゲームメディアや一般ユーザーの間でも話題になっている「PlayStation VR2」(以下PS VR2)。今回は都内で開催されたPS VR2のメディア向け体験会に足を運びました。実は……大変恥ずかしいことではありますが、筆者のPSハード経験は初代PSで止まっています。そもそもPCゲーム派だったこともあり、今でもゲームメディアで記事を書いているにもかかわらずPS5を所有していないという有様。そんなPSライトユーザーの筆者が、PS5向け次世代VRシステムを全力で体感してみました。さぁ、どうなることやら……?
大きな頭にも対応!

会場で筆者の目の前に現れたのは、ホワイトカラーが美しい丸みを帯びたデザインのVRヘッドセット。コントローラーも非常に特徴的な円形のデザインです。これが他でもない、世界中のユーザーが発売を待ち望んでいるPS VR2。今後のゲーム用VR市場のターニングポイントとなり得る可能性を秘めた製品です。

実はこの取材をするにあたり、筆者はあることを恐れていました。それは自分自身の頭の大きさ。ここで暴露してしまうと、筆者の頭のサイズは堂々の63! 自分でも嫌になるほどの頭デッカチです。そんな頭に合うVRセットがあるのか、という不安をずっと抱えていました。

しかし、PS VR2ならそのような悩みはまるで不要でした。前後に大きく調整できるベルトが、筆者の頭に巻き付くようにフィットします。後部にあるダイヤルを回してベルトを締め付けると、まるでこの製品自体が筆者に合わせてオーダーメイドされたかのようにピタリと適合してくれます。

そして、PS VR2に新しく搭載された「レンズ調整ダイヤル」で視界の調整。これは両目のレンズ間距離を、筆者即ちプレイヤーの目のスパンに合わせることができる機能です。す、すごい!
シースルービュー機能でお菓子を食べられる!

また、PS VR2では「プレイエリアのカスタマイズ」ができます。広くて何もない体育館のような部屋ならともかく、単身住居のようなところではVRを着けたまま無制限に動き回るということができません。そこで、予めコントローラーを使ってプレイエリアを制限します。このプレイエリアの外に出てしまうと、ゲームをプレイしている最中でも注意が発せられるという仕組みです。
さらにこのPS VR2は本体正面にカメラが内蔵され、「シースルービュー機能」でVRを装着したまま周囲の環境を見ることができます。VRデバイスを着けていると、近くにいる誰かにコントローラーを渡してもらったり、椅子がある位置まで誘導してもらったりということがありますが、PS VR2ならそのようなことも自分ひとりでできます。VRデバイスを装着したままの状態でお菓子を食べたりジュースを飲んだりすることも可能!

「それじゃあ澤田さん、早速ゲームプレイに映っていただきます!」――スタッフにそう声をかけられ、緊張しながらも『バイオハザード ヴィレッジ』の試遊を開始します。
『バイオハザード ヴィレッジ』アンドレを見下ろすドミトレスク夫人の巨体を堪能!
『バイオハザード ヴィレッジ』をVRでプレイする。これにはどのような意義があるのでしょうか?
まず言及すべきは、このタイトルの象徴的キャラクターと言えるドミトレスク夫人の大きさ。その身長は、何と2m90cmです。「墓場の使者」「地獄の大統領」の二つ名で知られたプロレスラーのキラー・コワルスキーが198cm、「王道」「東洋の巨人」我らのジャイアント馬場が2m9cm、「人間摩天楼」スカイ・ハイ・リーが2m11cm(諸説あり)、「現代のガリバー旅行記」アンドレ・ザ・ジャイアントが2m23cmです。そのような巨人レスラーを悠々と見下ろすドミトレスク夫人の身長を、PS VR2を使えば仮想空間で目撃することができます。いや、この人デカい! そして胸や腰のふくよかなことといったら……。こういう部分は開発陣のこだわりでもあるのですが、平面のモニターでは表現に限界があります。しかしPS VR2なら、目の前のキャラの造形を十二分に楽しむことが可能です。いや、決していやらしい意味じゃないですよ!?
詠春拳でゾンビを倒せ!

今回プレイした『バイオハザード ヴィレッジ』VRモードの体験版では、あくまでも最序盤のシナリオまで。その中で登場した武器はナイフと拳銃(セミオートマチック)です。ナイフは左腕にホルダーがあるという設定で、これを実際に左腕から取り出す動作を行い、振り回します。拳銃の操作では、ポーチから弾倉を取り出し、それを差し込んだのちにコッキングするという手順を踏む必要があります。VRのコントローラーだからこそ、銃弾の装填の動作まできっちり再現できるというわけです。
ただし筆者は拳銃など使わず、襲いかかるゾンビ共はナイフで斬りつけます。こういう時、コロナ禍を逆手に取って習い始めた詠春拳が大いに役に立つ!

攤手(タンサオ)、伏手(フォクサオ)、膀手(ボンサオ)、そして拍手(パクサオ)、欄手(ランサオ)も使ってゾンビを迎撃! ナイフをコンバットグリップ(順手持ち)でしか保持できないというのは物足りない部分ではありますが、それでもナイフの投擲が可能という点はイイ!
それにしても、こんなところで詠春拳が役に立つとは……。てか、ちゃんと詠春拳の動きが反映されてるぞ! 世界広しと言えど、VR空間で詠春拳を披露したライターは他にいるだろうか!?ですが、そんな感じでゾンビ相手に暴れていると、どうしてもその場から動いてしまいます。狭い部屋だとテーブルに足をぶつけてアタタタタ……という可能性も。これはかっこ悪い! そこで上述の「プレイエリアのカスタマイズ」が役に立つ、というわけです。
『Horizon Call of the Mountain』で崖登り、弓矢での戦闘を体験!

次に体験したのは『Horizon Call of the Mountain』です。先程の『バイオハザード ヴィレッジ』は立った状態でプレイしましたが、『Horizon Call of the Mountain』は椅子に腰を下ろした状態で遊びます。そしてこのゲーム、山や断崖絶壁を登る動作や弓矢を使うアクションは当然ながら「実際の動作」でやらなければなりません。

まさにフリークライミングの要領で崖の出っ張りを持ち、上へ上へと登っていきます。「フランスのスパイダーマン」ことアラン・ロベールよろしく、命綱なしでスイスイとフリークライミング。そしてその後に機械獣相手の戦闘を、弓矢でこなさなくてはなりません。

詠春拳とは違って弓矢は相手に狙いをつけて飛ばす必要がありますから、結構難しい! 改めて説明しますが、これは肉体の動作を伴うゲームプレイです。ゲーム内で「弓を引く」というアクションをするために、プレイヤーが本当に弓を引いている動作を行うことになるのです。
フリークライミングの直後に弓矢で射的。これ、やってみれば分かりますがなかなか激しいスポーツです。消費カロリーを計算する機能とかないのかな?
VRヘッドセットとしての「酔いにくさ」

4K HDRディスプレイ採用、110度の視野角、片目あたり2000×2040の解析度を有するPS VR2は、一方で「中心視野の外側を低解析度で描写する」という機能を備えています。これは「フォービエイテッド・レンダリング」と呼ばれる技術。視線の中心は高解像度に、視線を向けていない部分は敢えて低解像度にすることにより、より現実的で精細な映像表現を可能にしています。
パネルリフレッシュレートは90/120Hz、そして実際に試遊した正直な感想は「酔いを感じない」という点です。これは当然個人差もあるはずですが、VRでのプレイの途中で起こりがちな頭痛や立ちくらみ、不快感等は筆者の身体に全く現れなかったのも事実。このあたりも特筆に値する点だと感じています。
そんなPS VR2、2023年発売ということで詳細はまだ公開されていないものの、「ゲームの在り方」を大きく変える可能性が秘められた製品であることに間違いありません。