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本メディアは昨今のブロックチェーン、NFT……そしてメタバースなどの多様化するデジタルエンターテインメントの環境に対応すべく、「むしろ現実で肉体をぶつかり合わせるジャンルを取り扱うことこそ現状に対するオルタナティブになるのではないか。AIブームをはじめ急速なデジタル技術の発展が、未来の社会を作り上げていくとこれまでは信じられてきたが、むしろ現代でインパクトがあるのは未来にそぐわないような原始的で、旧来のもののほうだ。」そうした考えより、より根源的なジャンルであるプロレスを取り扱うことにしました。
このメディアは人間と人間の戦い、人間の考えや魅せ方がもたらす力はもちろん、その裏のドロドロとした感情や組織の暗部も恐れずに記事化していく予定です。そう、もっとも原始的で、旧来のものでありながらインパクトを与えるのは人間そのものなのです。本メディアではプロレスを通して、人間とはなにかのインパクトを届けていく所存であります。
THQ Nordic『AEW: Fight Forever』のブースでほんとにプロレスが始まった
レススパくん:というわけで始まりました。東京ゲームショウ2022が開催される幕張メッセ、THQ Nordicの『AEW: Fight Forever』のブースにて、満員の観客が己のリビドーを両目から発して四角い戦場に注ぎ込み、会場は真っ白で禍々しいオーラに包まれている模様です。
スパくん:おいテメー誰だよ!
レススパくん:申し遅れました、わたくし今回の試合解説のレススパです。新たに開設された「Wrestling*Spark」をかわいらしく、なじみやすい存在として認知してもらうために誕生しました。よろしくお願いいたします。
スパくん:なんか頭がハリネズミ並みに尖ってたり、目つきがヤバい感じでむしろ通報されそうなんだけど……。
レススパくん:単に模索している最中です。新メディアならよくあることでしょう? Game*Sparkにおけるスパくんもいろいろ言われるわけじゃないですか。アダルトなビデオに出てくる電マじゃないかとか。私はその前例を踏まえて、セクシャルなことに使おうとしたら即病院行きになる見た目にしているのです。
スパくん:「スパくんがプロレスの実況!? はたして出来るのか!TGS2022のAEWの試合をレポート!辻よしなりを超えていけ!」という話で来たのに、なんで現地でこんなヤバい人と組まなきゃいけないんだよ! たまにそういうことあるけど、少なくともTGS2022では避けてほしかったよ!
レススパくん:ところで語尾に「スパ」はつけないんですか?
スパくん:給料が発生しないところでつけねーよ! コウメ太夫とかパペットマペットとか、コンビニ行くときも白塗りだったり被り物したりしてると思ってんのか!
ベテラン外人と気鋭の日本人レスラーの対戦
スパくん:さて、いよいよ幕張メッセにて、大胆な試みであるプロレスが始まる模様スパ! こちら遅ればせながら、今回の実況を担当するスパくんだスパ。
レススパくん:解説はわたくし新興メディアWrestling*Sparkのマスコット、レススパが担当いたします。どうぞよろしくお願いします。
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スパくん:あああああっと! まずは世界を包み込むミストの中から狂気が姿を現す! アメリカと日本で30年近く活躍する大ベテラン、クリストファー・ダニエルズだーッ! スパ。
レススパくん:ダニエルズの動きをみてください。もうリングに入っただけで熟練の技が見えるわけですよね。コーナーに上がったらかならず360度に顔を振り、自らを見せる。メディア的にはどの方向にいても “映える”写真を撮りやすくしてくれている配慮……。プロレスは360度すべてが舞台ですからね。自らの周りはすべてお客さんがいると身体で知っている。そこにベテランならではの “魅せる”テクニックがあるわけですよ。
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スパくん:続いて霧の中から現れたのは! 現代日本プロレスのエンターテインメント路線に影響を与えた団体、DDTプロレスリングの若き虎! 竹下幸之介だーッ! スパ。現在27歳! その磨き上げられつつある肉体は、未来にダイヤモンドへと変わることを予感させるものでありまスパ。
レススパくん:(スマホで竹下選手のWikipediaを見てる)えー……焼鳥屋のお父さんの……影響で……あー……プロレスを好きになり……うー……ともかく日本人に勝ってほしいなと思いますね!
スパくん:おい! なにやってんだスパ!
レススパくん:すいません。ただ、スパ先輩にご注意をいただきながら「あっ語尾にスパが付いてる。ということは給料が発生している範囲なんだな」と思ってしまいました。
スパくん:たまに格闘技とかプロレスの解説で「Wikipediaに書いてあることしか喋ってねえじゃん。なんだこいつ」みたいな解説者を見かけるけどいい加減にしてほしいスパ!
ついに戦いが始まる! 揺れる幕張メッセ。いや、もしかしたら千葉県まで揺れる。
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スパくん:さあ試合が始まりました! 東京ゲームショウの中で異色の催しであるこの戦い、果たしてどう転ぶのかーッ! スパ。
レススパくん:東京ゲームショウでのプロレスというのは、決して初めてではないんですよね。意外にもここ10年で歴史があります。
たとえば2012年、ブシロードが新日本プロレスを買収した年で、同社が東京ゲームショウに出展した際、ブースにて新日本の選手による試合が行われています。また。2016年と2017年にはDDTと東京女子プロレスさんが試合をしているんですね。ここではゲームメディアの4Gamerさんのブースで行われたことも重要でしょう。同メディアではDDTの所属選手・男色ディーノさんが、ライターとして連載を持っていることなども関係していたかもしれません。
スパくん:ゲームメディア出展でプロレスをする背景には、そういうつながりもあるかもしれないスパね。ディーノ選手は、古くは雑誌「ゲーム批評」の時代からコラムを寄稿しており、ライターとしても活躍していた方だスパ。
レススパくん:へー、意外ですね。その観点から行くと、「ゲームイベントとプロレス」は、意外にもゲームメディアも絡んだ歴史ともいえそうですね。
スパくん:実はゲームライターって前歴や本業が特殊な方がやっていて、「ゲーム専門でやってます」というわけではない人も少なくないスパ。
たとえばGame*Sparkにおいても多様な方がライターをしているスパ。「中華ゲーム見聞録」を寄稿している渡辺仙州さんは作家として活動したり、「三国志」「封神演義」など中国の古典小説の翻訳を手掛けているし、Daisuke Satoさんはさまざまな記事を書く一方で短編映画「狭霧の國(さぎりのくに)」という魅力的な特撮映画を手掛け、造形作家としてのキャリアもあったりする方だスパ。そして最近はゲーミング刑事として体当たり記事を手掛ける文章書く彦さんは、ワニウエイブ名義で『7 pay』など、現代日本の鬱屈をテーマに風刺的なアルバムを手掛けているスパ。
レススパくん:おお、確かに多様。
スパくん:他メディアさんをライバルとして調査していると、意外にプロレスラーがライターをやっているケースはあるスパ。たとえばIGN JAPANさんで主に活動するフリーライターの山田集佳さんは、ルル・ペンシル名義でレスラーとして活躍してるスパ。IGNさんは東京ゲームショウでライブ配信をやってるスパからね! いつルル・ペンシルさんがライブでプロレスやってもおかしくないスパ。
レススパくん:ゲームメディアにプロレスラーがそんなに入り込んでいるとは。ライバルが多いですね。
スパくん:多様な背景のライターを抱えるGame*Sparkだけど、まだレスラーはいないスパ! 急いでプロレスラーをライターとしてリクルートして、いつかブース出展してプロレスの試合をしないと置いて行かれそうな気がするスパ! 東京ゲームショウプロレス史における小川vs橋本イッテンヨン事変を生み出すため負けられないスパ! おいおいおいおいもう終わりかよ! ゲームファンの皆様は目を覚ましてください! 仮に将来の東京ゲームショウでGame*Sparkによるプロレスが実現したら、スパくんはジェラルド・ゴルドーの立ち位置でありたいスパね……。
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レススパくん:話を戻しますと、AEWが自らの団体のゲーム化に合わせて実際に東京ゲームショウで試合をするのも、イベントの歴史的に意味があることになりますね。AEWの日本初上陸が、まさかのゲームイベントというのもすごい話ですし。竹下選手はDDTプロレスリングの所属ですし、AEWとの関係はもちろん、2016年~2017年の同団体が幕張メッセで行った試合の実績なども今回につながったのかもしれません。
スパくん:ゲームイベントでプロレスをやるのは、一瞬はミスマッチを思わせるド派手な出し物なんだけど、やりつづけていくことでなにか意味が出てくるかもしれないスパね。
レススパくん:特に深い意味はないとしても、なにか深みが出てくるものが伝統とされるものの内実だったりしますからね。
推している選手が押されている現実に耐えられない!そうだ、そこでゲームだ
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スパくん:ああーっと! やはりダニエルズの上手さが竹下を圧倒していくかーッ!スパ。竹下をコーナーに追い詰めて、一気に打撃をお見舞いしていくーッ! 反則攻撃だが構わず振り落としていく! スパ。 まるで封印されし黒魔法で隕石を落とすようにパンチが注がれるーッ! スパ。竹下という地球を救うためにディスク1の終盤で自らを犠牲にして星を守る白魔法のような逆転はあるのかーッ! スパ。
レススパくん:(語尾るっせえな…)本当にこういうシーンを見ると試合巧者と思いますね。
スパくん:そうスパね。やはりダニエルズのキャリアが……。
レススパくん:いえ、レフェリーの方です。
スパくん:は? スパ。
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レススパくん:見てくださいよ。あの手の動き。ダニエルズをちょんちょんとしか触っていない。反則だと言っても止める動きは控えめで、「ああ、彼もまた試合を作っているんだな。 だから“レフェリーは3人目の選手”と言われるんだな」と感心しました。
スパくん:おめーどういう距離感で試合を見てるんだスパ?
レススパくん:封印されし黒魔法の隕石も地球を守る白魔法も生み出しているのは作中のキャラクターではなくて、作者であるディレクターやプロデューサーが考えた展開という話ですね。レフェリーもまたそんな風に試合を制御していく立場という。まあそういう魔法による傑作プロデューサーも何か新しいことがやりたすぎて、160億円くらいかけて映画を作ってその後、所属企業のトップだったのに退職して独立したりとかいろいろあるわけですよね。
スパくん:誰の事だかわかるようでわからん話はやめるスパ!
レススパくん:レフェリーでも、いろいろあってトップ団体の内部で揉めて退職し、怒りの暴露本みたいなことをやる人が20年前にありましたからね。あの頃は格闘技ブームもあって、プロレスが何を見せるかを迷っていた時代で大変だったと思います。
スパくん:流血の魔術や最強の演技の話は、実況解説席ではいくらなんでもご法度スパ! さあ竹下、反撃の狼煙を挙げるときだーッ! スパ。
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レススパくん:そうですね、このパンチとキックのコンボによってパワーが溜まっていくのが見えます。いいですね、グロッキーになった隙にロープから奪取して攻撃すると、パワーある技で打撃を出せますし。
スパくん:ん? え? ちょっと何言ってるの?
レススパくん:最高ですよ。ゲージが溜まっていって必殺技が炸裂して……CMパンクは最高ですよ。必殺技がKENTAから取ってる(しかも名前まで!)のはいかがなものかとは、いまだに思ってますが。
スパくん:こいつ『AEW: Fight Forever』の方をやっていやがる! 何してやがんだ!
レススパくん:もうね、竹下選手が圧倒されているのがつらいんですよ! WikipediaとかGoogleで検索しているうちに感情移入しすぎてしまってリングがまともに見れなくなったんです! じゃあそういう現実から逃れるための疑似現実をどうするかって言ったら……、そりゃあプロレスゲームをやるしかないでしょ。かつて1997年に最強と謳われた高田延彦が400戦無敗というヒクソンに完敗したとき、プロレスファンはその現実を受け入れられず何人かは精神が崩壊したんです。だからバーチャルの中で現実の苦痛を忘れ、記憶を書き換えるためにプロレスゲームをするんです。一体何人のプロレスファンが長州力のラリアットでヒクソンを葬り去ってきたか。私はそうして現実を逃れるために『AEW: Fight Forever』を遊ぶんです。
スパくん:今回試遊できる『AEW: Fight Forever』ってダニエルズ選手や竹下選手が使えるわけじゃねえだろ! CMパンク使ってたじゃねえか! 「現実を書き換えるために」とか全然ウソだろ!
レススパくん:CMパンクはカッコいいですからね。
スパくん:もういいよ! お前帰れよ! (全力でレススパくんの顔に黒魔法の隕石が降り注ぐ勢いのようなパンチを打ち込む)
レススパくん:(しかしスパくんの拳はレススパくんの体をすり抜けていく)
スパくん:!? いったい何が起きてるんだスパ?
レススパくん:私はあなたです。プロレスゲームとはプレイヤー自身が現実のリングに耐えられなくなったときに触れる、己の内面との対話……私はあなたが新型コロナウイルスでゲームイベントの開催が伸びてしまい、ほとんどがオンライン開催されるというここ3年近い現実のつらさを感じていることによって生まれました。
スパくん:そうだったのかスパ……たしかにリアルイベントから遠ざかり、人との交流が少なくなった現実のなかで知らないストレスが溜まっていたのかもしれないスパ……。
レススパくん:今日はなんだか気分が良いです。最高の気分です。
スパくん:そう、友達を見つけられたから。
レススパくん:知らなかったよ。こんな近くにいたんだ。自分の頭の中さ。
スパくん:自分はとても醜いけど、問題ない。みんなだってそうだから。僕は鏡を破壊した。
レススパくん:日曜の朝が毎日続いたっていい。ちっとも怖くない。
スパくん:おぼろげにロウソクに火をつけた。僕たちは神を見つけたんだ。
スパくん&レススパくん:Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah,Yeah
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試合結果 〇竹下幸之介(ジャンピングニー)×クリストファー・ダニエルズ
「Wrestling*Spark」は本日をもって閉鎖いたします。独特のコンセプトでありがなら、運営期間は約10分と長きに渡り、数々の記事やインタビューを掲載できたことは大変に喜ばしいことでした。 “原始的で、旧来のかたちで人間というインパクトをプロレスによってみせていく”をテーマとして始まった本メディアが、読者の皆様に伝わったことを信じながら、終了させていただきます。今までありがとうございました。