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MIXIと言えば……最初に思い浮かぶものは、30代以上なら日本初の招待制SNSの「mixi」、30代以下の読者にとっては携帯ゲーム『モンスターストライク』(モンスト)ではないでしょうか。日常的にゲームに触れない層にとっても、同社の名は「携帯向けゲームの会社」という印象が今や強い企業です。
そのMIXIがSteamにてPC向け新タイトル『Asym Altered Axis』のストアページを公開し、2022年10月19日~10月24日の期間でアルファテストを予定しています。すでに『モンスト』という超強力なスマホ向けタイトルを持ちながら、なぜいまPCゲーム市場に参入なのか?という驚きと同時に、同社がどんなPCゲームを開発しているのか、その社名を知っている方なら好奇心をそそられるはずです。
本記事では9月上旬に行われたメディア向け先行体験プレイの様子をお伝えします。なお、掲載しているイメージはすべて開発中のものです。
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『Asym Altered Axis』(以下、Asym)は「ストラテジー(STR)」と「アクション(ACT)」にプレイヤーが分かれ、1人vs最大5人パーティで争う非対称型のステルスアクションゲームです。ゲームの目的はステージ上に2つ存在する財宝「NEXUS」を巡る攻防戦であり、潜入するACTプレイヤー達は制限時間内に「NEXUS」を奪い“ポータルからの生還”を、STR側は“ACT側の脱出を阻止する”ことが主な目標となります。
「STR」と「ACT」で大きく異なる遊び方、ゲーム前後半でガラリと雰囲気を変える2つのバトルフェーズ、そして完全なる敗北を生み出しにくい“ギスギスオンライン”を防ぐ報酬システムなどが特徴です。
『Asym』はどんなタイプのプレイヤーでも楽しめる、遊びの幅の広さが魅力
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侵入側のACTプレイヤーは三人称視点で、基本操作はWASD移動。ステージは全体的に暗く見通しがききませんが、しゃがみ移動をしていないプレイヤーの動きには、かすかな光跡が残ります。特にジャンプ、ダッシュ、セル(ゲーム内通貨)の獲得といったアクションでは強い光を放ち、敵サイドからキャラクターの位置を特定されやすくなります。
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対するSTRプレイヤーは後述する“神の視点”で上空からフィールド全体をチェック。サーチライトでACTプレイヤーをあぶり出し、光跡を頼りに追跡・攻撃を仕掛けていきます。しかし、今どの方向を見ているかはACT側からも判別できるため「この向きならダッシュしても光跡が視界に入らないはず」といった瞬時の判断を求められる場面も。
慎重なステルスプレイはまどろっこしい……もっとスピーディーかつ積極的な動きがしたい!というならば、ピストルからロケランまで用意された豊富な武器を駆使して、敵対NPCを排除するのも有効な選択肢。力技で「NEXUS」に最短ルートで近づくことも可能です。
派手な立ち回りでSTR側の注意をひきつけ、その間に他のACTプレイヤーが遮蔽物や草むらで気配を消し「NEXUS」に接近する……そんな連携プレイも『Asym』の遊び方のひとつ。流行の対人型オンラインゲームで「エイムが苦手で役に立てない」「立ち回りが分からず、足を引っ張ってしまう」という悩みを抱えているユーザーでも、本作なら気後れせずに「勝利に貢献している実感」を得られます。
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侵入直後は全体的に暗いステージですが、警戒レベルが上がると少しずつ明るさが増し、STR側からの発見も容易に。警戒レベルは「サーチライトに身を晒す」ことで上昇し、最終的に「NEXUS」を入手すると自動的に最大値にアップ。まさにクライマックスという展開で暗闇が消滅し、ここから“脱出フェーズ”が始まります。
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「NEXUS」や脱出ポータルの位置は画面上部のコンパスに表示されます。脱出フェーズは先述の通りステージ全体が明るくなるほか、ACTプレイヤーの位置がミニマップに表示されるため、STR側からは一目瞭然。あとはもう残っている罠やNPCユニット、そしてSTRプレイヤーの攻撃を避けつつ、ポータルからの脱出を目指して走り抜けるしかありません。
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「見ろ。人が●●のようだ」と言わずにいられぬ「STR」側の“神の目線”プレイ
従来のステルスアクション作品の多くは、用意されたマップを攻略していくスタイルでしたが、『Asym』はSTRプレイヤーがオリジナルで“作り上げる”無限のステージに挑戦可能という、ユニークな特徴を持っています。
ステージ設計では、さまざまなトラップや、設置することで自動的にNPCユニットを配置する建物などを配置できます。ACTプレイヤーにとっては身を隠せる遮蔽物、できれば置きたくないのがSTR側の本音ですが、建物にはコスト値があり、消費コスト下限が1000~1500となっています。マップの高低差も考慮しつつ、「NEXUS」を防衛しやすかったり、あえて誘導・迎撃しやすいルートを考えるのが醍醐味と言えるでしょう。
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またNPCユニットをあらかじめ配置するだけでなく、想定外の方角から突破されてしまった時、あるいはポータルから逃げられそうな時には、リアルタイムにその場にユニットを召喚し妨害も可能。呼び出すユニット数に上限があるため、最後まで温存しておきポータル前に配置し「ACT」側の生還を阻むなど、使いどころに勝負師のカンとセンスが求められます。今回試遊したバージョンで召喚できたユニットは近接タイプ1種のみですが、今後のアップデートでは、遠距離攻撃や空を飛ぶドローンタイプなどバリエーション拡大を考えているそうです。
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実際のステージでは上空からACTプレイヤーの発する光跡を探し、サーチライトであぶりだし、直接攻撃で吹っ飛ばしてダウンさせるなど、まさに神様気分なプレイを楽しめます。右往左往と逃げ惑うキャラクターを追い詰める時には、心の中に「ほらほらそっちじゃないよ、フフフッ逃げても無駄だから」と嗜虐的なセリフが自然と浮かぶ……のは筆者だけかもしれませんが。
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大事なのは「勝敗」だけではない。努力した分だけ、どちらのプレイヤーも報酬をもらえる優しい世界
『Asym』で評価したいのは、完全なる勝利・敗北が無く「ACT/STR」どちらのプレイヤーにも頑張ったなりのメリットが用意されている点です。例えばSTR側が「NEXUS」を奪われてしまっても、試合中にACTプレイヤーのKill数を稼いでいれば、それに応じた報酬を獲得。反対にACT側は誰か一人が「NEXUS」を奪取していれば、残りの4人は脱出することで「NEXUS」分の報酬が分配されます。
当然、ACT側は少人数プレイのほうが最終的な報酬はおいしいけれど、10月19日実施のアルファテスト時点では「参加人数による難易度スケーリング」は設定されていないとのこと。5人パーティであれば様々なアプローチで「NEXUS」の奪取を図れるため、極めて有利なのは間違いありませんが、ソロまたは少人数で大きなリターンを狙っていくのも選択肢のひとつかもしれません。
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ただし「自分が犠牲になってでも仲間を生還させた」などのアシストに対して、現時点では特にメリットが用意されていないのが少し残念。開発チームとしても“検討中”ということですが、「自分さえよければ……」という傲慢プレイは“ギスギスオンライン”を招く原因にもなりやすいため、やはり救済に繋がるシステムの追加を期待したいところです。
『Asym Altered Axis』アルファテストは10月19日12時~10月24日15時59分まで実施され、対応言語は英語のみ。北米サーバーでの実施となり、日本からアクセスする場合はゲームプレイに遅延などが発生する可能性があります。
『Asym』でストラテジー市場とアクション市場をつなげていきたい
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ここまで『Asym Altered Axis』とはそもそもどんなゲームなのか?という部分を駆け足で説明してきましたが、本作の立ち上げに至った理由や狙いについて、プロデューサーを務めるMIXI・デジタルエンターテインメント事業本部の早川泰彦氏にお話を伺ってきました。
――MIXIとして「Steamで配信するPC向けゲーム」を開発することになった経緯についてお聞かせください。「なぜMIXIが!?」と気にされているユーザーは多いかと思われます。
早川泰彦氏(以下、早川)Steam配信のPCゲーム開発チームを立ち上げた理由ですが、弊社には「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む」という企業理念がありながら、ゲーム開発においてはモバイルかつ国内向けに偏りすぎていました。市場が固定化しがちな国内向けではなく、小さなインディデベロッパーの独自の遊び心もきちんと評価されるPCゲーム、Steamという場に独自性の高いタイトルをぶつけていきたいというところにあります。将来的にはクロスプラットフォームで、モバイル等も含めて視野に入れていければと。
そのため『モンスト』とは全く別の新規開発のための部署を立ち上げました。メンバーにある程度自由な開発環境を持たせるため、10名弱の小規模チームとなっていますが、その半数以上が国内向けコンシューマタイトル、あるいはPCゲームの開発経験者で構成されています。MIXI社内にありながらモバイルゲー出身者の比率が少ない、珍しい部署と言えますね。
――『Asym』でアピールしたいポイントは特にどこにありますか。
早川他の非対称対戦ゲームを遊んだとき、ソロプレイヤー側の陣営でおそろしい孤独感を覚えたんです。しかし『Asym』では次々とNPCユニットを召喚したり、上空からACTプレイヤーを手で踏みつぶす、吹っ飛ばせることで、孤独感よりむしろ全知全能の神になった気分が味わえます。
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早川また非対称型対戦ゲームでは“狩る”側に立つと、どうしても高い操作技術やマップの習熟度が求められることになり、ビギナーには敷居が高くなりすぎます。『Asym』は社内テストでも、普段アクションゲームが苦手な人ですら「自分でもSTR側なら楽しく遊べる」と好評でした。自分のゲームスタイルと操作テクのレベルに合わせて、どんな遊び方も受け入れられるのが『Asym』だと言えます。
――カジュアルプレイヤーが対戦ゲームに尻込みする理由に、暴言やハラスメントがあります。対策は何かお考えでしょうか?
早川これはあくまで第1回アルファテスト時の話となりますが、ACT側にいわゆる野良プレイヤーとのマッチングは導入せず、Steamのフレンドとしか一緒に遊べません。フレンドがいない場合でもソロで侵入し、1vs1のプレイに挑めますし、本作の公式Discordで一緒に遊べるプレイヤーを募ることも可能です。
――今後の予定として、ゲーム内VCやフリーチャットは実装されるのでしょうか。または、ラジオチャットのようなテンプレート会話文も選択肢にありそうですが。
早川マップにピンを打つ、定型文チャットなどの方が使いやすいとは思いますが、『Asym』はプレイヤー同士の連携があると有利、かつ取れる戦略の幅がとても広いゲームです。最終的にはゲーム内VCあるいはDiscordのような外部ツールが優勢になるとイメージしています。
――国内企業のMIXIが開発しているのに、英語版のみでアルファテストを開始する理由についてお聞かせください。
早川MIXIがゲーム分野において海外で大きな成功を収められていないためです。PCゲーム、特にSteamのコアユーザー層は英語圏の方であり、相手は北米市場です。そこで北米ユーザーからのフィードバックをもらいつつ、トライ&エラーを重ねながら今後の開発に活かせればと考えています。ただ、我々はかなり小規模なチームであるため、開発リソースの関係で最初から複数の言語対応は難しいです。そこで10月19日からの最初のテストでは英語のみとしました。対応言語の拡大は同時にサポートの負担も大きくなるため、かなり慎重に進めていくことになるでしょう。
――なるほど。
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早川また、Steamはアイデア1本勝負なユニークなインディー作品でも、その着眼点をユーザーが的確に評価してくれるマーケットでもあります。小規模開発ながらもユーザーの目に留まり、アップデートを重ねることで大ヒットする作品も生まれていますよね。『Asym』も、まずは独自性という部分を大切に育てていきたいと考えています。「早期アクセス」というカテゴリに興味を持ってくださるインディーゲームファンをターゲットにしていることも、英語版でスタートする理由のひとつです。日本語対応は当然考えていますし、よりゲーム環境が整ったタイミング、来年ぐらいにはご提供できる予定です。
――『Asym』のターゲット層はどのあたりでしょうか。
早川どういったユーザーに『Asym』を認知してほしいかという“ファーストターゲット”でお話しますと、Steamのインディーゲームで「こんな面白そうなタイトルを掘り出した!」と新しい体験を常に探しているような方になります。『Asym』は「これまでのゲーム体験で直感的に理解できる部分」と「“この組み合わせは初めてだな”と感じられる部分」を兼ね備えています。戦略性の高いゲームが好きな方、アクションもので銃をガンガン撃つのが好きな方……どちらも得意な方がいると思いますが、『Asym』によって、いままで交わることの少なかったプレイヤー同士が一緒に遊べることでしょう。そういったところから、『Asym』でストラテジー市場とアクション市場をつなげていきたい、という目標を掲げています。
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――非対称対戦型ゲームというと、最近では成功例として真っ先に『Dead by Daylight』が浮かびます。しかし過去には鳴り物入りで登場しながら、結果として残念な終わり方を迎えた『EVOLVE』も思い出されます。後者は一方的な試合展開になりやすいなど、バランス調整の点でユーザーからの不満も多く、急速なプレイ人口減少に歯止めがかかりませんでした。『Asym』は対戦ゲームの命ともいえる“バランス調整”で、特にどのような点で配慮されていますか?
早川『Asym』は完全なる勝ち・負けだけでなく、その中間部分を用意してあります。「STR」でも「ACT」側でも、「おとり役として動いたからCELLを多く取れなかったが、最後にポータルから脱出できた」「NEXUSは奪われたけどKillをたくさん取れた」など、目標をどこに置くか次第で結果にも幅をもたせられるのが、配慮した部分と言えます。バランス面でもうひとつ言うと、ソロの「STR」側が多少強いほうがヒリヒリ感があり、『Asym』の面白さを伸ばしてくれる可能性が高いと考えています。
――ゲームルールの設定次第ではランクマッチの追加やeスポーツ展開もありえそうですが、いかがでしょう。
早川長期的な展望でいえばランク制の導入も考えていますし、競技性にもつながっていくと思います。ただ『Asym』は戦略の幅と同時に、参加できるプレイヤーの幅の広さも魅力です。「ガチ勢しか楽しめないゲーム」にはならないようにしたいですね。
――今回の先行体験プレイのお話をいただいた際にSteamのストアページを拝見しましたが、失礼ながら「このゲームでは、つまるところ何ができるのだろうか?」と感じてしまいました(※8月下旬時点)。こうして実際にプレイしてみると当然ながら印象が大きく変わり、予想以上に遊びの幅が広い作品だと思えます。だからこそ、Steamのストアページがあまりにもお粗末な内容ではもったいない……と感じてしまいます。
早川『Asym』はMIXIとしても初チャレンジの要素が多いタイトルゆえ、トライ&エラーを繰り返しながら育てていきたいと考えています。あまり開示できる情報が少ない中、あえて6月にSteamストアページを公開したのですが……その時点では、初期段階の素材しか用意できなかったのです。9月上旬にストアページをアップデートしたので、スクリーンショットもゲーム内容がより伝わるものになっていますし、10月のテスト実施に向けて動画なども順次改善していきます。
――並行して開発スタッフの募集も続いてるようですね。
早川幸いなことに“面白い人材”が私達のチームに来てくれています。外から見たときに、MIXIはどうしても『モンスト』などスマホ向けコンテンツに強い会社と感じられるため「あのMIXIがPCで、こんなゲームを開発してるんだ」という驚きから、優秀なスタッフが集まってくれました。
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――『Asym』がビジネス的成功をおさめれば、また新しいチームを立ち上げPC向け新規タイトルの開発や、『Asym』チームの拡大などが行われるのでしょうか。
早川先のことはまだ分かりませんが、開発途中の段階でも手ごたえのあるタイトルなのは確かです。今後、MIXI社内でPCゲーム開発の規模を広げていければ面白いことになりそうだなと考えています。
――本格的なPCゲームのそれも海外市場をターゲットに、第1回目のアルファテストも英語版のみだったりと、MIXIにとっては大きな挑戦となりそうです。最後に、その意気込みとユーザーに向けたメッセージをお願いします。
早川本作の開発チームは非常に士気が高く、このタイトルに自信を持っています。出発点は「こんなゲームをやってみたい」というところで、『Asym』のメインターゲットはある意味「自分たち」と言えます。もちろんバランス調整など日々悩みは尽きませんが、ユーザーを満足させられるクオリティでお届けできると思います。
――本日はありがとうございました。
『Asym Altered Axis』は2022年10月19日~10月24日の期間でアルファテストを予定しています。