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アニメやゲーム、映画などエンタメ系のデザイナー、アーティストが自分の作品を展示できるWebポートフォリオサービス「ArtStation」で、画像生成AI使用への反対を表明する投稿が、非表示あるいは削除され始めたことが確認されています。
「Artstation」は海外のイラスト投稿サイトで誰でもアカウントを作成可能。最大の特徴は世界規模で有名な映画やゲームに関わった著名アーティストたちが登録をしており、実際に使われた作品を閲覧できるほか、企業からの求人情報掲載、プロが使うデジタルブラシ素材の販売などもしている点です。
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同サイトのユーザー間では、SNSユーザーの間で人気が高まっている画像生成AIについて「人間が生み出したアートを“つなぎ合わせる”ことによってのみ作品を作成できる」と指摘。また、クリエイターへの支払いを回避する近道として画像生成AIを使用する、企業倫理への懸念につながるなど、議論が起こっていました。
「Artstation」で実際に画像生成AIによる作品投稿が増えるにつれ、親会社のEpic Gamesは「ユーザーは自分で作成し、自分の想像力で作成した作品のみを投稿する必要がある」と強調。投稿した作品のAI研究への使用許可を出すか否か、ユーザー自身が選択できるタグ付システムや、権利侵害を申し立てるシステムを今後実装すると約束。しかし、12月に入って以降、多くのユーザーは画像生成AIとその業界を非難し、反対の声を表明するデザインの投稿を始めましたが、現在それらは非表示・削除の対象となっています。
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削除の理由がサイトポリシーのどの部分に違反しているのかは不明ですが、海外メディア「Game Developer」の問い合わせに対し、Epic CEOのティム・スウィーニー氏は自身の見解として「デフォルトで画像生成AIを締め出すことはありません。著作権法のフェアユースのルールに該当するような使用を禁止してしまうことになる」「Epicにはイノベーションを阻害するような会社になって欲しくないから」と回答。さらに「EpicはAIを本質的に悪いとは思っていない。画像生成AIの使用を阻止する選択は、企業としてのEpicやArtStationではなく、個々のアーティストにある」とも述べています。
類似サービスを提供する各社のスタンスを見てみると、写真素材の大手「Getty Images」はAI生成画像のアップロードと販売を禁止、「Kickstarter」は著作権に明らかに違反するもの以外はケースバイケースで検討する必要があると述べるにとどめています。一方で写真・イラスト素材を提供する「Shutterstock」はAI研究に作品が使用されたクリエイターに払い戻す「Contributor Fund」を始めるなど、その対応は大きく異なり基準となるラインもまだ定まっていないのが現状です。
Game*Sparkでもたびたび画像生成AIの話題を扱ってきましたが、一般ユーザーへの認知度が高まったのは最近のこと。2023年も画像生成AIをめぐる議論はまだまだ、続くのではないでしょうか。