年の瀬の風物詩、大掃除。みなさんはもう済ませましたか?
筆者は今年の大掃除で、プラスチックケースに入れて無造作に積み上げられた一昔前のPCゲームのCDを大量に発見しました。その数、実に80タイトル。驚いたことに、その中にはシリーズ化されて現在も続く有名タイトルの一作目がいくつも含まれていたのです。うず高く積まれたCDの山を前にして、筆者の脳裏に一つの考えがひらめきました。
もしかしたら、この山の中に思わぬお宝が眠っているかも……?
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古いゲームの中にはプレミアがついて高額で取引されているものもあるようです。それなら、一見無価値なCDの山の中にも貴重な一品が隠れているかもしれません。そう期待した筆者は、一昔前のPCゲームが現在の中古市場でどれだけ価値があるのか実際に調べてみることにしました。
その時はまったく気づいていなかったのです。このあと起きる悲劇に……。
思わぬ誤算
価格調査を始めてすぐに気づきました。中古品として取引されている商品の多くは外箱やマニュアルが揃った保存状態の良いもので、CDだけの場合は価格が大きく下がるのです。
筆者が掘り起こしたゲームのほとんどはCDだけをプラスチックケースに入れて乱雑に保管していました。まさに価値の低いジャンク品以外の何物でもありません。ゲームに付属のCDケースやマニュアルが残っているものもありましたが、一昔前のPCゲームの象徴とも言える「無駄に大きな外箱」は以前の大掃除であらかた捨ててしまっていました。
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さらに誤算は続きます。当時ハードコアゲーマーを自認していた筆者は大半のゲームを英語版か「日本語マニュアルつき英語版」で購入していました。ところが、国内では英語版より「完全日本語版」の方が高値で取引されているのです。英語版は需要がないのか取引自体が少なく、実勢価格がわからないことも少なくありませんでした。
海外なら英語版の需要があるのではないかと考え、参考のため大手オークションサイトeBayも調査しました。しかし、中古品の取引自体は盛んなものの、実勢価格はそれほど高くありません。一方、コレクター向けに出品されている未開封の新品や限定版の中には数万円以上の高額で取引されているものもありました。
現在も続く有名シリーズの一作目なら価値が上がっているに違いないと一縷の望みを託しましたが、それも見当違いでした。シリーズ化されるほどの作品はたいてい大ヒットしていて、市場に出回っている本数も多いのです。繰り返し廉価版が販売されることも多く、限定版であるか、よほど保存状態が良くなければ高値はつかないようでした。
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なおも調査を続けましたが、期待していた「お宝」はまったく見つかりません。筆者の目論見は見事に外れたのです。
結果の一部をお見せしましょう(英語版美品の実勢価格。価格は十の位を四捨五入)。
『Baldur's Gate』 約900円
『Diablo II』 約800円
『Operation Flashpoint』 約600円
『Civilization II』 約300円
残念ながら、美品ですらお宝と呼ぶには程遠い価格でした。ましてや、CDだけのジャンク品は二束三文です。
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今回の教訓をまとめるとこうなります。
粋がらずに英語版ではなく日本語版を買っておけばよかった。
英語版を買うなら限定版を購入して開封せずに保存しておけばよかった。
せめて外箱は捨てずに保管しておけばよかった。
しかし、筆者はまだあきらめていませんでした……。
懐かしの名作
お宝発見の目論見は外れましたが、発掘された昔の名作ゲームを眺めていると当時が懐かしく思い出されます。中古市場ではジャンク品扱いでも、これらのゲームで遊んだ思い出は筆者にとってなによりの宝物。ここからは調査結果とともに当時の思い出を振り返ります。
『Battlefield 1942』
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開発元:DICE
実勢価格:約1,100円
第二次世界大戦を舞台にしたFPSです。当時、64人同時にプレイできるFPSは画期的で、自由に乗り物を操縦できるシステムと相まってお祭り騒ぎのような面白さを生み出しました。発売当初から多くのModが発表されていたのも印象的です。
『Call of Duty』
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開発元:Infinity Ward
実勢価格:不明
こちらも第二次世界大戦を舞台にしたFPSです。当時は『Battlefield 1942』とは逆にシングルプレイが中心のリアル志向FPSとして知られていました。同じくリアル志向の『Medal of Honor』と比較されることも多かった作品です。
『Diablo』
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開発元:Blizzard North
実勢価格:約300円
複数参加型オンラインRPG(MORPG)の先駆けとなった作品です。当時はインターネットが普及しはじめて間もない頃で、オンラインマルチプレイをするには同じLAN上にいるか、貧弱な電話回線を経由してサーバーに接続する必要がありました。
『Warcraft III』
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開発元:Blizzard Entertainment
実勢価格:約2,000円
『Diablo』と同じBlizzard EntertainmentのファンタジーRTSです。日本でRTSと言えば『Age of Empires』が人気でしたが、海外では『Starcraft』や『Warcraft』が主流でした。同じ世界観のMMORPG『World of Warcraft』も世界的人気を誇ります。
『Close Combat』
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開発元:Atomic Games
実勢価格:不明
第二次世界大戦を舞台にした戦術RTSです。プレイヤーは個々の兵士に指示を出して戦場を突破していきますが、兵士は機銃掃射を受ければ怯えて動けなくなり、ライフルはすぐに弾づまりを起こすなど、リアルな描写が特徴的でした。
『Shogun: Total War』
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開発元:Creative Assembly
実勢価格:約2,200円
日本の戦国時代を舞台にしたストラテジーです。マップ上で戦闘が発生するとRTSに移行し、実際に兵を指揮して戦うシステムは画期的なものでした。日本を取り上げた当時の海外ゲームらしく、忍者や切腹といった要素も登場します。
『Europa Universalis』
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開発元:Paradox Development Studio
実勢価格:不明
大航海時代からフランス革命までの全世界を舞台にしたストラテジーです。歴史上の国家や人物を事細かに再現し、その中でプレイヤーが架空の歴史を築き上げていく手法は『Hearts of Iron』など同社の各シリーズに受け継がれました。
残り物には……
ひと通り調査を終えた筆者は、CDの山の一番下にまだ確認していないゲームがあることに気づきました。日本製の歴史シミュレーションゲームです。いつ買ったのかすら忘れていた作品ですが、価格を調べて驚きました。
『大航海時代III Costa del Sol』
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開発元:光栄
実勢価格:約6,300円
なんと、当時2,000円未満で販売されていた廉価版ですらプレミアがついているではありませんか。シリーズの中でも高い人気を誇り、家庭用ゲーム機に移植されなかったこともあってか、中古市場では高値で取引されているようです。
あわてて外箱を探しましたが、どこを探しても見つかりません。後悔先に立たず。どうやら、売ることなど考えずに自分でプレイしなさいとの天のお告げのようです。結局、一番最後に見つけた日本製タイトルが一番のお宝になりました。
今回、最後の最後までお宝に気づかなかったことで、改めて積みゲーの怖さを思い知りました。ついさっきまで部屋の隅に積み上げられていた大量のゲームは文字通りの「積みゲー」です。その中には、買ってから一度もプレイしていないゲームも混ざっていました。
年末年始のセールでゲームを大量に購入することも多いこの時期。「買ったゲームは忘れずにプレイしよう」と固く誓いつつ年が暮れていくのでした……。