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突然ですが、エンディング後のスタッフロールは最後まで観るタイプですか?主題歌と音楽メドレーを聴きながらラストシーンの余韻に浸る時間、このときの満足感がゲームや映画における醍醐味ですね。その後の静寂で2周目アナウンスのチェックをするあの瞬間が好き……分かります?
そういうことで筆者はエンドロールは絶対にスキップしないのですが……さすがにAAA級の作品になると、あまりに長すぎるのでじっと見ているわけにはいきません。凝った演出や劇伴メドレーがあるならともかく、音楽ループだけで30分は長いです。「最も長いエンドロールを持つMMOビデオゲーム」ギネス記録を持っている『FF14』は1時間38分、スタッフ掲載数は32,335人とこれまた規格外。名前を載せることが作品に携わった人への感謝、というのは大事ではありますが、こうなると余韻を楽しむのも限界がありますね。
とはいえ、30分や1時間の長さはそれだけ多くの人が開発に参加している証ですから、無碍にスキップするのもちょっと申し訳ない。そこで、一度は隅々まで目を通してカウントしてみようと思い立ちました。
使用するタイトルは『サイバーパンク2077』。総製作費が12億ポーランドズウォティ(約341億7,700万円)で、当然それに見合うだけの人員が関わっています。カウントは重複チェックをせず、名前が出た回数をそのまま計上します。そのため、合計で出た数字は実際の人員数よりもかなり多くなることをご了承ください。
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クレジットの最初の項目は「Set in the Universe Created by Mike Pondsmith」です。原作TRPGをベースに、本作におけるナイトシティを構築したディレクタークラスの人々が32名並んでいます。ゲームディレクターのアダム・バドウスキー氏を筆頭に、ジョニー・シルバーハンド役のキアヌ・リーブス氏、原作のマイク・ポンスミス氏もここに入ります。
以下プロデューサーなど実開発に関わったメンバーが続き、全48部門1,012の名前が挙がりました。このうち最も人数が多いのは、キャラクターの顔のモデルとなる「Facial Appearances」の110名でした。Special Appearanceの小島監督はもちろんCDPRの開発者も入っていて、社内でもモデル集めが行われていたようです。次点はやはりテスターの多い「QA」の105名。オープンワールドはできることと行ける場所が多く、デバッグ作業もそれだけ大量になってきます。
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スタッフの中で是非注目して欲しいのがデザイン部門です。デザイナーの名前を検索すると個人のサイトを持っていることがあり、Ben Andrews氏のページでは高解像度のコンセプトアートが掲載されています。
そんな中、オーディオディレクターに「Atsushi Suganuma」という日本人名を発見。スクウェア・エニックスで『FF13』『FF15』『FF7R』などでサウンドデザインをしていた菅沼篤氏でした。しっかり見ていくとこんな発見もあります。
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続いてはマーケティングなど開発以外の「Back Office」です。全23部門、計385。開発部門に比べれば少なくなります。日本で情報発信をしている本間覚氏、西尾勇輝氏、エルダー爽氏は「Business Developmemt」の項目に載っています。最多は「Marketing」62名と、販売する各国の担当者が入る「Global Communication」57名。AAAで全世界同時発売となると、宣伝の方にも力が入りますね。情報セキュリティ部門もあり、データ漏洩などのリスクにも備えています。
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ローカライズは全16言語、吹き替え言語が全11言語。吹き替えの場合はそれぞれにローカライズ担当の会社が記載され、さらにCDPRのスーパーバイザー、キャストを合わせて60人近くに上ります。
英語版にはハイチ・クレオール語の監修者もクレジットされていました。サブロウ・アラサカ役は全世界共通で日本語の音声になるため、全ての言語において津嘉山正種氏がキャストに入っています。その重複込みで計算すると、合計で722。
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続いて外注セクション。会社名だけで個人名を載せていないところもあり、実人数はカウントより多くなります。Stadia向け移植も合わせたテスターのアウトソーシングがあるため、それだけで300近くの数字に。レースゲームなどで車のモデリングをするVIRTUAL MECHANIXの名前もあります。外注先として挙がった企業は39社、掲載名は計808でした。
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その他、デジタル販売、パッケージ流通が34社538、NVIDIA、AMD、ポルシェ、エッジランナーズコラボなどの「Other Partners」が103、「Songs」が494(重複がかなりある)、引用元が30。「Special Thanks」が276、10年の製作期間中に生まれた「Cyberpunk Babies」が99、外部商標が13、最後にCD PROJEKT REDのコピーライト。
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以上を全て合計すると…計3974となりました。重複分を差し引いても、製作、宣伝を合わせて3000人以上が1タイトルに携わっていました。AAAタイトルのディレクター、プロデューサーは世界に散らばるそれだけの人員の仕事を預かる立場ですから、その責任の大きさはとても想像できません。
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円高でゲームの値段が上がってしまうのは確かに大変ですが、私たちが支払うお金こそが製作の仕事を支える給料となります。そしてゲームを思い切り楽しんだら、感謝の気持ちと共に感想をSNSなどに書いてみましょう。その言葉が届いたら、きっと次の作品に繋がるエネルギーとなるでしょう。
次ページでは計数の内訳を掲載。長いです。