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「この素晴らしい世界に祝福を!」(以下「このすば」)は、元々は「小説家になろう」で連載されていたWeb小説であり、角川スニーカー文庫より2013年から商業版が展開されているライトノベルです。アニメ・映画・ゲームと多数のマルチメディア展開をしており、PS4/ニンテンドースイッチ向けの本作『この素晴らしい世界に祝福を! ~呪いの遺物と惑いし冒険者たち~』もそのうちの1作です。
また、「このすば」のDRPGとしては『希望の迷宮と集いし冒険者たち』、および同作の改善版である『Plus』に続いてシリーズ3作目となります。
本記事ではそんな同作のプレイレポをお届けしていきます。
まずは「このすば」の概要から
「このすば」の概要を知らない方のためにご説明しますと、同作は基本的には異世界転生もののコメディ・ライトノベルです。
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些細なことで死んでしまった主人公・サトウカズマ(以下カズマ)。彼は天界の女神アクアの導きで、何か1つを持って魔王に支配された異世界に転移することになるのですが、アクアの横暴な態度に耐えかねたカズマが異世界に持ち込むものに「女神アクア」を指定したのがすべての始まり。こうしてカズマは、異世界で様々な冒険に出向くことに。
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カズマの頼れる(?)仲間は主に3人。アークプリーストとして高い能力を持ちながらポンコツな行動でトラブルを起こしまくる駄女神・アクア。
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高い魔法能力を持つ紅魔族の才女ながら、その才能のすべてを術者の全魔力を消費して放つ「爆裂魔法」につぎ込んでしまったアークウィザード・めぐみん。
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貴族の子女であり敵の攻撃から仲間を守る優秀なクルセイダーですが、真正のマゾヒストで自らが痛めつけられるところを想像して興奮し、進んで敵の攻撃やトラップを受けたがる困った女騎士・ダクネス。
このとんでもなく偏ったパーティによる破天荒な冒険を描くのが「このすば」であり、本作『呪いの遺物と惑いし冒険者たち』は彼らの活躍をオリジナルストーリーで描くDRPGです。
ストーリーはオリジナルですが、主要ヒロイン3人のDRPGのキャラクターとしての特徴付けは原作再現度がかなり高く、例えばアクアは自分のHPが半分を切るとわがままを言ってサボりだしますし、めぐみんは多種多様な魔法スキルに目もくれず、本当にMPを全消費して放つ「爆裂魔法」とそのサポートスキルだけしか覚えないので一般的なRPGの魔法使いとしては一切使い物にならない、ダクネスは「挑発」や「かばう」など、自らが殴られることになるタンク系のスキルは充実しているものの、攻撃を受けることに特化しすぎて自身の攻撃は敵に全く当たらない……と、三者三様のポンコツヒロイン具合が見事にDRPG上で再現されてしまっています。DRPGとしてはとてつもなく偏った編成ですが、キャラゲーとしての面白さとしては正解だと思います。
とはいえ、「能力的にはクセのない」サブキャラクターたちもカズマ達の冒険に加わってくれます。めぐみんの親友であり、こちらは普通の魔法使いとして安心して運用ができるゆんゆん、頼れる女盗賊のクリス、アクア様に心酔しているけれども、肝心のアクアからはちっとも存在を覚えてもらえない剣士ミツルギなどですね。サブクエストであれば彼らとカズマだけで普通な冒険を楽しむことだってできます。
ですが、メインストーリーの進行はカズマ+ポンコツヒロイン3人+サブキャラクター1人という5人パーティ構成で挑むことになります。
いきなりクエスト大失敗。そしてLv1へ――
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今回の冒険の始まりは、とある貴族からの古代遺産調査。クエストを受けた一行は、その破格の報酬に胸を躍らせながら調査に向かいましたが――。
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アクアのうかつな行動がもとで遺跡内で怪しげな遺物を起動してしまい、遺跡は大破という大惨事に。
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さらに遺物に仕掛けられていたレベルドレインの罠で一同は全員Lv1に戻ってしまい、覚えたスキルも忘れてしまう……という散々な目に遭ってしまいました。
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「爆裂魔法」がアイデンティティのめぐみんも習得スキルの欄にその文字がなく、見事に爆裂魔法を忘れています。
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一行は遺跡の大破の責任を取る形で、怪しげな遺物の復旧のためのパーツを集めに行くことに。
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遺物のパーツは特殊な素材で出来ており、ダンジョン内で集める必要がある……と聞かされた一行は、レベル上げを兼ねつつまずは手ごろな地下水道から探索を始めよう、と心機一転、冒険に向かいます。
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地下水道までは廃墟への旧道->近所の遺跡というダンジョンを経由していきます。この2つのダンジョンは敵も弱く、序盤のレベル上げも容易。またアクアとめぐみんは最低限の通常攻撃能力は備えているため、物理アタッカーとしての運用も可能です。ダクネスは先述した通り「バインド」などの魔法で敵の動きを止めてやらないと攻撃がめったに当たらず、物理アタッカーとしては一切期待できません。彼女の攻撃力自体は高いのにもったいない。
近所の遺跡にある地下水道の入り口まで行けば冒険者ギルドでクエストを受けることもできるので、まずはしばらくこの辺りでクエストをこなしつつ経験を積むことになるでしょう。
右も左もトードだらけ。恐怖の地下水道!
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地下迷宮では大量のトードがお出迎えしてくれます。いきなり手荒い祝福を受けるアクア様。
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出てくる敵もトードだらけ。
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あまりのトードの多さにマジックアイテムの助けが必要だ……と判断した一行は、一旦アクセルの街に戻り、トード対策のアイテムを買って、再度地下水道の奥深くへ潜ります。
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地下水道の最深部にはトードの親玉が待ち受けていました。
レベルドレインを受けた一行には太刀打ちできない強敵に見えたものの、ここまでの戦いである程度の力を取り戻していた一行は、何とかキングトードを撃破することができました。
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地下水道の奥で見つけた、遺物の修復に必要なパイプを遺物の専門家に渡すと、次の修理に必要なアイテムのありかを教えてくれます。
こうしてダンジョン探索->遺物の修復に必要なアイテムの発見->新規ダンジョンの解放……という流れで、このゲームは進んでいきます。
本作の新要素「転職」「アイテム合成」。ご利用は計画的に
中盤に入った頃合いで、今作の追加要素として、主人公カズマのみ「転職」が可能になります。
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それまでのカズマは原作通り「冒険者」という最底辺の職業でしたが、転職が可能になると「戦士」「ウィザード」などの基本職に転職でき、さらに基本職をLv20まで上げると「クルセイダー」「アークウィザード」など、基本職に対応した上級職にも転職できます。
選んだ職業によって能力値が変動し、また覚えられるスキルも職業によって全く変わってくるので、パーティの穴を埋めるような職業に就くか、あるいは好きな職業でこだわり通すかは悩みどころ。
基本的に覚えたスキルは他の職業に引き継げないのですが、「冒険者」だけはいままで他の職業で習得したスキルをすべて使用できます。
但し「冒険者」は基礎能力が低いため、一芸特化した職業にはスキルの威力が敵わず、かといって他職のスキルを一通り習得した万能職にしようとすると、肝心のカズマのレベル差が他のメンバーと開きがちになってしまいます。
本作ではキャラクターの行動順が開示された戦闘システムが採用されていますが、低レベルキャラクターには行動順がほとんど回ってこないため、器用万能を目指すとカズマさんがお荷物になりがちです。それでも器用万能を目指すのか、一芸特化を目指すのか……の方向性は事前にある程度考えておいた方がよいでしょう。
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また、シナリオ進行で「紅魔の里」に行けるようになるとアイテム合成も可能に。
これは武具と素材をめぐみんの父・ひょいざぶろーに渡し、しばらく戦闘をして戻ってくると使用した素材に応じて武具が強化されるというシステムです。
組み合わせた武具と素材によっては全く新しいアイテムに変化することもあります。武具の強化は2段階まで可能なので、お気に入りの武具はしっかり強化したいところです。
終盤はかなり歯ごたえのあるDRPGに
本作は中盤あたりまでは難易度控えめなのですが、終盤に入ってくると難易度が激変します。
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一見そんなに強くなさそうな美少女系の敵も、こちらを一撃で半壊させる全体魔法を放ってくるので油断は禁物です。
最終盤のダンジョンはもはやボスラッシュといった感じで、生半可なパーティ編成だと即返り討ちに遭います。対抗するためには地道なレベル上げと武具の強化が不可欠でしょう。
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そこで筆者が個人的に終盤のパーティメンバーとしておススメするのはウィズさん。
前作では「もう全部あいつ1人でいいんじゃないかな」というほどの万能の強さを誇っていましたが、本作では彼女もまたレベルドレインを受けたという設定で基本性能自体がかなり下方修正されています。それでもアークウィザードとしてはHP・MPともに高く、彼女が習得できる「カースド・クリスタルプリズン」は終盤のボスのほとんどに大ダメージを与えられるため、主力ダメージディーラーとして活躍します。
「武具の強化後の強さが不明で合成しにくい」「特殊合成レシピもほとんどゲーム中で開示されない」「拠点となるアクセルの街でなく紅魔の里に行かなければならないのが地味に面倒」といった合成システムの不便さ、前作からのダンジョンの流用、そして終盤のやるかやられるかが顕著な大味気味のゲームバランスに問題を感じないわけではありません。
ですが、本作には「このすば」らしいコメディ要素が随所に散らばめられていて、こうした個性的なメンバーの織り成す冒険をDRPGとして楽しむには十分に良い作品であると思います。謎の遺物をめぐる陰謀とその驚愕の正体を、是非ともあなたの目で確かめてみてください。
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